ChatGPTにExcelマクロを頼む前にやっておくべき準備ガイド【安全・精度・再現性を高める】
ChatGPTにExcelマクロを頼む前にやっておくべき準備ガイド【安全・精度・再現性を高める】
AIに「マクロ書いて」と頼めば一瞬でコードは出てきます。
しかしそのまま業務で動かすと、動かない・壊す・情報漏えいの三重リスクを招くことも。
本記事では、ChatGPTなどのAIにExcelマクロを依頼する前に必ず準備しておくべき情報と、安全・再現性を両立させる実務チェックリストを紹介します。
1. なぜ「AIマクロ生成」が急増しているのか
- 要件を伝えるだけでVBAコードが生成される
- 社内教育・ナレッジ不要で自動化が始められる
- 一方で「動かない」「危険な命令が混ざっている」「他PCで動作しない」などの課題も発生
ChatGPTやCopilotが生成するコードは**“文法的には正しいが、環境依存で壊れる”**ことが多い。
そのため、事前準備の精度=AIの出力品質です。
2. マクロを頼む前に整理すべき4つの情報
✅ ① 自動化の目的を具体化する
- 何を・どこまで自動化したいかを定義する
例:- 「毎週の売上集計を自動化したい」
- 「複数ブックの特定列をまとめたい」
曖昧な要望は曖昧なコードを生みます。AIには“人間の曖昧さ”が通じません。
✅ ② データ構造を正確に把握する
- シート名、列名、セル範囲、入力・出力の位置を整理する
- 「空白行」「結合セル」「数式セル」がある場合は明記する
📋 例:
シート名「売上管理」のA〜C列にデータがあり、D列に「売上合計」を追加したい。
✅ ③ 実行環境を明示する
- OS(Windows / Mac)
- Officeバージョン(2016 / 2019 / 365など)
- マクロ設定(有効/無効)
特にWindowsとMacではVBAの挙動が異なるため、AIに伝えることで無駄な修正が減ります。
✅ ④ セキュリティ・保存要件を整理する
- ファイルの保存場所(ローカル/共有ドライブ/社内サーバ)
- 外部接続(APIやWebリクエスト)が必要か
- 機密情報を含むか
ChatGPTはクラウド上で処理されるため、社内秘データを直接貼るのは厳禁です。
3. ChatGPTに投げる効果的な依頼文サンプル
このシート「売上管理」のA〜C列を対象に、
「売上合計」を計算して末尾の行に追加するマクロを書いてください。
Office365、Windows10環境で動作させます。
💡 ポイント
- 環境・シート名・範囲を具体的に
- 「実行ボタン付き」「エラーハンドリングあり」など希望条件を追記すると精度UP
4. 生成コードの安全チェックリスト
以下の観点で最低限の目視レビューを行いましょう。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 🧱 不要な外部呼び出し |
Shell, CreateObject, FileSystemObject, Kill, SaveAs など危険命令を確認 |
| 📍 範囲指定の明確さ |
ActiveSheet や ActiveCell の多用を避け、Worksheets("売上管理") のように明示 |
| 🧯 エラー処理 |
On Error Resume Next 乱用を避け、Err.Numberでログを取る |
| 💬 コメント | 生成コードに説明があるか(可読性と保守性の指標) |
5. 実行前に必ずやるべき安全チェック
- テストデータで検証:本番ファイルをコピーして試す
- バックアップを作成:上書き保存前に別名保存
- バージョン管理:GitHub / Gist / OneDrive などで変更履歴を残す
-
静的解析ツールを活用:
- Rubberduck VBA で構文・命名規約・未使用変数を検出
- 「信頼できる場所」設定でマクロ実行範囲を限定
6. 次のステップ:AI×VBAを安全に育てる
AIマクロ生成は「人+AI」の協働が前提。
そのため、**“AIに要件を正確に伝える力”と“コードをレビューする目”**の両方が必要です。
次に試してみよう:
- ChatGPTが出したコードをRubberduckで解析してみる
-
With構文・Range指定を理解してAI出力をレビューできるようにする - 小さなマクロを複数組み合わせ、再利用性の高い仕組みに発展させる
まとめ
AIによるマクロ自動生成は、業務効率化の最短ルートです。
しかし、**「動くコード」と「安全に動くコード」は別物。
本記事のチェックリストをもとに準備・検証を行えば、
ChatGPTを“危険な自動化ツール”から“信頼できる開発パートナー”**へ変えることができます。
📚 参考リンク
📝 執筆者所感:
AIを使う前に「AIを信じすぎない準備」が最大の安全策。
ExcelマクロをAIに任せるのは、もはや“禁止事項”ではなく“教育の一部”になりつつあります。
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