PerplexityのAIブラウザ「Comet」無料化:検索×エージェントの標準UIを塗り替えるのか
PerplexityのAIブラウザ「Comet(コメット)」が2025年10月2日に無料で一般公開されました。ページ閲覧とAIアシスタントが同居する“エージェント的ブラウジング”は、検索→要約→比較→実行までを1つの画面で連続させます。本稿では一次情報を整理し、日本の産業・プロダクト観点でのインパクトと実装の勘所をまとめます。(Perplexity AI)
元記事
- Perplexity公式ブログ「The Internet is Better on Comet」(Perplexity AI)
参照リンク
- The Verge「Perplexity's Comet browser is now available to everyone for free」(The Verge)
- Business Insider「Perplexity makes its $200 AI browser free」(Business Insider)
- Perplexity公式ブログ「Introducing Comet(初出:2025年7月の限定提供)(Perplexity AI)
- StatCounter:日本のブラウザ市場シェア(2025年9月)(StatCounter Global Stats)
- StatCounter:日本の検索エンジン市場シェア(2025年9月)(StatCounter Global Stats)
1. 海外記事の要点
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無料化の正式アナウンス
Perplexityは10月2日(米国時間)にCometの無料一般公開を発表。7月のMax($200/月)限定ローンチ→Proやウェイトリストへの段階開放を経ての全面解放となった。無料版には利用レート上限あり。(Perplexity AI) -
“AIが同居するブラウザ”という設計
CometはブラウザのUI内にAIアシスタントを常駐させ、**ページ要約・比較・根拠提示・次アクション(例:旅行手配・買い物)**までを1つのワークフローに統合。従来の「検索→新規タブ→遷移→コピペ」往復を削減する。(The Verge) -
有料アドオン「Comet Plus」
キュレーション済みニュース等を提供する**$5/月**の追加パッケージ。**出版社への収益分配(例:80%)**をうたい、AI要約と報道機関の関係を再設計する試み。Pro/Maxには含まれる。(Business Insider)
“Today we are releasing the Comet browser to the world, for free.”(公式ブログ)(Perplexity AI)
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位置づけ
CometはChromeなどの“検索エンジン中心”モデルに対し、アシスタント中心のブラウジング体験で競争するという宣言。(The Verge)
2. 日本に引きつけた分析
(1) Chrome偏重の日本で起きること
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日本のブラウザ市場(2025年9月)はChrome 57.6%/Safari 23.7%/Edge 11.1%。検索も**Google 78.9%/Yahoo! 10.6%/Bing 8.7%と“Google中心”が強い。「AI常駐UI」**を前提にした別系統の体験が一般層に刺されば、Chrome一強の摩耗点になりうる。(StatCounter Global Stats)
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導線の短縮=CVRの再設計
Cometは要約と行動(比較・予約・購入)を同一画面で結ぶ。ニュース・EC・旅行・金融比較などで**“検索→作業”の往復コストが小さくなり、媒体・EC側には“Comet内で拾われる構造”**の最適化が新レイヤーとして出現。
(2) 収益分配と日本の制度接点
- Comet Plusの出版社収益分配は、日本で長らく議題化してきた要約・抜粋の価値配分に事業モデル上の仮説を持ち込む。実運用次第では、引用の範囲/対価/露出の組み合わせが定着する可能性。(Business Insider)
- 一方で、出典明示・要約精度・広告の識別は景表法や電通法周辺の解釈と接点を持ちうる(筆者による推論)。メディアは自社ルールの明文化(引用条件・要約可否・配信面の優先度)を急ぐべき。
(3) プレイヤー別インパクト
- メディア:AMP/Discover最適化に加え、**「Cometに拾われやすい構造化と要約性」**が新KPIに。Hタグ設計、箇条書き、Schema.org、出典リンクの明確化が効果仮説。
- SaaS/EC:AIアシスタントがフォーム入力補助や比較テーブル生成を担い、CVRと離脱率に直接影響。旅行・保険・採用のマルチステップは**“アシスタント経由の送客”**を前提に再設計を。
- ブラウザ/検索:EdgeやArcの“AI強化”と違い、CometはAIをUIの主役に据える。拡張機能・ブクマ移行の摩擦が低く、Windowsユーザーの一部にとっては試用の心理的コストが小さい。(The Verge)
(4) 定量データ(日本)
- ブラウザ市場シェア(2025年9月):Chrome 57.6%、Safari 23.7%、Edge 11.1%。(StatCounter Global Stats)
- 検索市場シェア(2025年9月):Google 78.9%、Yahoo! 10.6%、Bing 8.7%。(StatCounter Global Stats)
3. 用語メモ
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エージェント的ブラウザ(Agentic Browser)
ブラウザ内にAIアシスタントを常駐させ、閲覧文脈の理解→要約・比較・根拠提示→外部実行(予約/購入/連絡)までを半自律に補助する設計。Cometはこれを既存ブラウジングの主導権にまで引き上げた事例。(The Verge) -
Comet Plus
$5/月でキュレーションニュースを配信し、出版社に収益分配。Pro/Maxに含まれる(国や時期による仕様差は留意)。(Business Insider)
4. 著者の所感・示唆
所感
無料化はユーザー獲得だけでなく、「AIが常に隣にいる」という前提をブラウジングに埋め込む転換点です。検索はリンクへ誘導する行為から、タスクを委ねる行為へ。日本はChrome偏重だが、Chromium互換で乗り換え負担が小さいCometは、初期波として情報収集の重い職種(調査・広報・購買・旅行手配)から浸透する可能性が高い。(StatCounter Global Stats)
バイアス注記
- 公式ブログ:ベンダー寄り(成功事例の強調、制約条件は軽め)。(Perplexity AI)
- テックメディア:競争軸(対Chrome・対他AIブラウザ)を強調しがち。無料版のレート制限や地域差、Comet Plusの有料性は脚注扱いになりやすい。(The Verge)
具体的アクション
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“Comet最適化”のABテスト
記事テンプレを1本作り、見出し階層・箇条書き・要約用のキーフレーズを意識した構造化(Schema.org含む)を導入。Comet/Chrome/Edgeで読了率・クリック深度を比較する設計を。 -
アクション同梱型UI
比較・見積・予約のフォームに、コピー可能なプロンプト断片(例:「この条件で比較して」「この会社だけ除外して」)を添付。アシスタント経由の送客を前提にCVRを再設計。 -
権利者との早期合意
自社が媒体を持つ場合、要約・引用の条件と配信面での露出をセットで提案。**分配モデル(例:固定+歩合)**の実証を開始し、AI経由トラフィックのルールを先に作る。(Business Insider)
英語原文の短い引用
“Comet integrates assistance directly into the browsing experience… helping with shopping, trip booking, and productivity.”(The Verge)(The Verge)
“Free for everyone globally… with rate limits for free users.”(Business Insider)(Business Insider)
公開日時:2025-10-05(JST)
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