エンジニアが「カップルの認知療法」を読んだ
はじめに
通常の心理学のクライアントは1名であるが、この本では2名の関係の深いカップルという間柄の中で発生した問題を取り扱っている。
実際の会社でも上司と部下やメンバーなどでそのような関係に近い形で仕事を行う場合もあるため、参考になるかと思い読ませていただきました。
「カップルの認知療法」
注釈
あくまでも、この文章はこの本を読んだ感想であり、個人的な意見です。
詳しい内容を知りたい方は上記のリンクから購入していただくか、図書館などで内容を確認することをおすすめします。
全体の感想
これはカップルだけではなく色々な関係性に言える内容であったと思う。
特に認知の歪み10項目やスキーマなどの考え方を応用すれば、実際の会社内でも十分に活用できるものと感じた。
認知行動療法
人は目に写っている現実を脳内で再構築して認識している。
そのため、人ごとに色々な捉え方がされて認識されているのである。
この本のタイトルになっている認知療法とはこの認知を変える事により、物事を改善する方法である。
単純な認知療法のな場合は下記のような手順により実施される。
1. 自動思考の特定
例えばうつ病の人がいるとして、一人になると非常に嫌なことを考えてしまうとしする。
1つ目の方法としては、その人が一人になるような環境を作らない事である。
認知療法の方法であれば、まず具体的に一人になった場合にどのような思考を辿るのかを特定する。
問題は事象ではなく、自動的に行われる思考の方であるため、まずこの自動思考を明確にするのである。
2. 自動思考の再構築
自動思考が特定できたら、その思考パターン以外の考え方を本人に考えさせる。
例えば「Aさんは約束の時間に来なかった(事実)ので私のことが嫌いかもしれない(思考)」という自動思考の場合、「Aさんは約束の時間に来なかった(事実)何か緊急の用事が発生したのかもしれない(思考)」のようにポジティブな考え方を行わせる。
そして、自分の考え方以外に可能性が存在すること、またそういった事実は特定されていないことを明確に話す。
そうすることで、同じ思考に陥った場合にも新しい考え方を行う事ができる可能性が生まれる
3. 繰り返し
実際に、1度では改善は見られないかもしれないし、そもそもその思考が問題ではない場合もあるが、少しずつこういった考え方を患者に伝えていく。
そうすることで、少しずつだが改善するものと思われる。
カップルの課題
基本的には上記のような治療をカップルに対して行う形となる。
カップルの場合は下記のような流れの中で実施される。
- 質問票に両者記入してもらう
- 片方づつ面談を行う。
- 治療以前の問題がないかを確認する
- それぞれが問題だと思っている部分を明確にする
- この治療の実施方法を具体的に説明する
- 自動思考の改善方法についての学習実施。
- 双方をあわせた形で面談を行う
- コミュニケーション方法についての学習実施。
- お互いの自動思考(認知のゆがみ)に関する改善実施。
- 次回の面談までのホームワークの提出(次回実施時はホームワークを確認する)
認知のゆがみ
認知療法で有名な認知の歪みという思考の種類である。
人間関係上の問題はほとんどこれらが原因である感じがしています。(感想)
- 恣意的推論:具体的な根拠がない結論を出すこと。
例:30分遅刻したから浮気している - 選択的抽出:情報を文脈から切り離して取り出し強調すること。
例:挨拶がないから怒っている - 過度の一般化:1つ、2つの出来事の結論を、似ていない場合も適応すること。
例:女性は必ず私の誘いを断る - 拡大視と縮小視:自体や状況を誇張、または軽視して捉える。
例:小切手の収支が計算されていないのに、経済的に追い詰められていると怒る - 自己関係づけ:結論を出す根拠が乏しい場合に自分と関係ない出来事を自分に関係づけること。
例:夫が妻が1度アイロンを掛けた服を再度アイロンがけしているときに、「私に不満をいだいている」と思い込む - 二分的思考:経験が成功化失敗化に二分される。
例:壁紙を貼った夫に妻が継ぎ目について意見したのを聞いて、自分は全く何もできないと思い込む - レッテル貼りと不適切なレッテル貼り:過去に起こった間違ったことで自分を定義する。
例:過去に食事の準備で失敗したことで「自分は無価値である」と考える - トンネル視:自分飲みたいものだけしか見ない
例:自分の恋人は自分のやりたいことしかしないと思い込み責める - 偏った説明:隠された動機によって行動していると仮定し判断する
例:彼は私の嫌がることを知っているのに、わざとそうする - 読心術:他人の考えを知っていると思い込む
例:彼は私のことを嫌っていると思い込む
最後に
個人的にはこのような治療は多くの助けになり得ると思っています。
ただ、日本では関係性や自己成長の目的でメンタルヘルスを活用するような仕組みも考え方もまだ整っていないように感じます。
このような逃げ道があることがあることを知っておくだけでも、少しは心が軽くなるのではないでしょうか。
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