Jupyter Notebook入門:Mac環境での導入からPythonコード実行まで
Jupyter Notebook
は、ブラウザ上でインタラクティブにPythonコードを実行したり、結果を可視化したり、ドキュメントを交えながらコード開発を進めることができるツールです。データサイエンスや機械学習、データ分析の現場では事実上の標準ツールとなっており、その手軽さや再現性の高さから初心者から上級者まで幅広く利用されています。
本記事では、Mac環境においてJupyter Notebookを導入するところから、実際にPythonコードを記述・実行するまでの流れを分かりやすく解説します。これを読み終える頃には、あなたはMac上でPythonコードをJupyter Notebookで実行できるようになっているはずです。
目次
- Jupyter Notebookとは何か
- Jupyter Notebookを使うメリット
- 事前準備(Python環境の確認)
3.1 Pythonのバージョン確認
3.2 Homebrewのインストール(必要な場合)
3.3 Pythonパッケージマネージャpipの確認 - Jupyter Notebookのインストール
4.1 pipでのインストール
4.2 AnacondaやMinicondaを利用した環境構築(参考) - Jupyter Notebookの起動と基本操作
5.1 Jupyter Notebookの起動
5.2 Webブラウザ上でのインターフェース説明
5.3 新規ノートブックの作成方法 - Pythonコードを書いてみよう
6.1 セルの実行方法
6.2 print文で簡単な出力
6.3 数値計算や変数定義
6.4 グラフ描画の例(matplotlib) - Markdownセルでのドキュメント記述
7.1 Markdownセルの使い方
7.2 見出し、リスト、リンクや画像の挿入 - ノートブックファイルの保存と共有
8.1 notebookファイル(.ipynb)の保存
8.2 GitHubやGoogle Colabでの共有(参考) - Jupyter NotebookからJupyterLabへの拡張
- まとめ
1. Jupyter Notebookとは何か
Jupyter Notebookは、ブラウザ上でPythonなどのプログラミング言語を実行しながら、その結果やコードを同じドキュメント内にまとめられるツールです。
「Notebook(ノート)」形式と呼ばれるドキュメントには、コードセルとMarkdownセルが混在し、コードセルでPythonを実行し、Markdownセルでテキスト説明を加えることができます。これにより、分析手順や結果をわかりやすく整理し、再現性や共有性に優れたドキュメントを構築できます。
2. Jupyter Notebookを使うメリット
メリット | 説明 |
---|---|
インタラクティブ性 | コードを書いて即実行、結果を即確認できる |
ビジュアル化 | matplotlibやseabornなどのライブラリでデータを簡単にグラフ化可能 |
ドキュメント化 | Markdownを使ってデータ分析プロセスを解説し、ノートブック一つでレポートとしても機能 |
再現性・共有性 | 同じノートブックを他人が再実行することで、同じ結果を得られる |
3. 事前準備(Python環境の確認)
Jupyter Notebookを使うためにはPython環境が整っている必要があります。MacにはデフォルトでPython2系が入っている場合がありますが、最新のPython3系環境を整えることをおすすめします。
3.1 Pythonのバージョン確認
ターミナルを開き、下記コマンドを実行してPythonのバージョンを確認します。
python3 --version
ここでPython 3.x.x
と表示されればOKです。インストールされていない場合は、Homebrewなどを使ってPython3を導入しましょう。
3.2 Homebrewのインストール(必要な場合)
HomebrewはMacでパッケージ管理を容易にするツールです。Pythonや他ツールのインストールが簡単になります。もしHomebrewが入っていなければ、以下をターミナルで実行します。
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
インストールが完了したら、下記コマンドでHomebrewが正しく使えるか確認します。
brew --version
3.3 Pythonパッケージマネージャpipの確認
Pythonパッケージのインストールにはpip
を使用します。pip
コマンドが有効か確認します。
pip3 --version
もしpip3
が見つからなければ、以下のように実行してセットアップします。
python3 -m ensurepip --upgrade
4. Jupyter Notebookのインストール
4.1 pipでのインストール
以下のコマンドでJupyter Notebookをインストールします。
pip3 install jupyter
インストールが完了したら、以下のコマンドで動作確認しましょう。
jupyter notebook --version
バージョンが表示されればインストールは完了です。
4.2 AnacondaやMinicondaを利用した環境構築(参考)
もしデータサイエンスや機械学習のライブラリを一度に導入したい場合はAnacondaやMinicondaを利用すると便利です。
Anacondaをインストールすれば、Jupyter Notebookも同梱されているため、環境構築がさらに簡単になります。本記事ではシンプルにpip
によるインストールに絞ります。
5. Jupyter Notebookの起動と基本操作
5.1 Jupyter Notebookの起動
ターミナル上で作業用ディレクトリへ移動し、以下のコマンドを実行します。
cd /path/to/your/project
jupyter notebook
コマンドを実行すると、自動的にWebブラウザが立ち上がり、http://localhost:8888/tree
のようなURLでJupyter Notebookのホーム画面が表示されます。(ブラウザが自動で開かない場合は、表示されるURLを手動でブラウザに入力してください。)
5.2 Webブラウザ上でのインターフェース説明
ホーム画面では、現在のディレクトリ構造が一覧表示されます。ここから以下の操作ができます。
- 新規ノートブックの作成
- 既存ノートブック(.ipynbファイル)の編集・再実行
- フォルダ移動やファイル操作
5.3 新規ノートブックの作成方法
右上にある「New」ボタンをクリックし、「Python 3」を選択すると新規ノートブックが作成されます。新しいタブで空のNotebookが開き、そこにコードセルが一つ最初から用意されています。
6. Pythonコードを書いてみよう
ここでは実際に簡単なPythonコードをノートブック上で実行してみます。
6.1 セルの実行方法
ノートブック画面には「セル」と呼ばれる区画があり、ここにコードを入力します。セル内にコードを書いたら、Shift + Enter
キーを押すか、上部ツールバーの「Run」ボタンを押すことでセルを実行できます。
6.2 print文で簡単な出力
まずはprint
関数で文字列を出力してみましょう。ノートブックのコードセルに以下を入力して実行します。
print("Hello, Jupyter!")
実行後、下にHello, Jupyter!
と表示されれば成功です。
6.3 数値計算や変数定義
次に、簡単な数値計算や変数定義を行ってみましょう。
a = 10
b = 20
result = a + b
result
最後の行にresult
とだけ記述すると、その変数の中身がセル実行結果として表示されます。この場合は30
と表示されます。
6.4 グラフ描画の例(matplotlib)
Jupyter Notebook上では、グラフ描画ライブラリmatplotlib
を使うことで、計算結果を可視化できます。以下は簡単な折れ線グラフの例です。
まず、matplotlibをインストールしていない場合はターミナルで以下を実行します。
pip3 install matplotlib
その後、ノートブック内で以下を実行します。
import matplotlib.pyplot as plt
x = [1, 2, 3, 4, 5]
y = [1, 4, 9, 16, 25]
plt.plot(x, y)
plt.title("Simple Plot")
plt.xlabel("X")
plt.ylabel("Y")
plt.show()
実行すると、ノートブック上にグラフがインライン表示されます。
7. Markdownセルでのドキュメント記述
Jupyter Notebookではコードセル以外にMarkdownセルも使えます。Markdownを用いて説明文、見出し、リスト、画像、数式(LaTeX)などを記述し、ノートブックをドキュメントとして整えられます。
7.1 Markdownセルの使い方
新しいセルを挿入し、上部ツールバーの「Cell Type」を「Markdown」に変更します。そこにMarkdown記法でテキストを書き、Shift+Enter
で実行すると、整形されたテキストが表示されます。
7.2 見出し、リスト、リンクや画像の挿入
以下はMarkdown記法の例です。
# 見出し1
## 見出し2
### 見出し3
- 箇条書き1
- 箇条書き2
[リンクテキスト](http://example.com)
![画像の説明](path/to/image.png)
Markdownセルを活用することで、ノートブックが「実行可能なレポート」となります。
8. ノートブックファイルの保存と共有
8.1 notebookファイル(.ipynb)の保存
Jupyter Notebookは、作成したノートブックを.ipynb
形式で保存します。上部ツールバーのFile > Save and Checkpoint
または Command + S
(Macの場合)で保存できます。
ノートブックは、同じディレクトリに.ipynb
ファイルとして残ります。このファイルを共有すれば、他のユーザーが同じ環境で再実行することが可能です。
8.2 GitHubやGoogle Colabでの共有(参考)
.ipynb
ファイルはGitHub上でプレビューできるため、コードと結果を他者と共有しやすくなります。また、Google Colabにノートブックをアップロードすると、環境構築なしでブラウザ上で実行することが可能です。
9. Jupyter NotebookからJupyterLabへの拡張
Jupyter Notebookの後継ともいえる新世代のインターフェースがJupyterLabです。JupyterLabは、タブ管理やファイルブラウズが強化され、より統合的な開発環境を提供します。
興味があれば以下でインストール可能です。
pip3 install jupyterlab
インストール後は、以下で起動できます。
jupyter lab
10. まとめ
本記事では、Mac環境でのJupyter Notebookの導入から、実際にPythonコードを実行し、Markdownによるドキュメント作成、グラフの可視化までを一通り解説しました。Jupyter Notebookは、データサイエンスや学習用途にとどまらず、プログラミング学習、アルゴリズム検証、試験的なコード開発など様々なシーンで役立ちます。
ぜひ本記事を参考に、Jupyter Notebookでインタラクティブな開発環境を構築し、快適なPythonプログラミングを始めてみてください。
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