RedmineとAIによるプロジェクトの健全性チェック
この記事は
Redmine AI Helperプラグインに「プロジェクト健全性レポート」作成機能を追加したので紹介します。
Redmine AI Helperプラグインについては、以下の記事を参照してください。
プロジェクト健全性レポートとは
AIを使ってプロジェクトの健全性をチェックする機能です。プロジェクトの概要ページから表示できます。
健全性レポート生成
生成したレポートはMarkdownおよびPDFでエクスポートできます。
コードの生成やテストについてのAIアシストは目を見張るスピードで進化を続けていますが、プロジェクト管理に関してはまだまだ発展途上だと思っています。
Redmineのデータベースのチケット情報にはプロジェクト分析に利用可能なデータがたくさん眠っていそうなのでAIを使って何かできないかと思い、作ってみました。
分析の内容
分析の内容は正直手探り状態で、まだこれが正解なのか自分でもわかりません。が、いろいろ試した結果、まあできたかなと思う内容になったのでリリースしました。
健全性レポートではLLMを使って以下の6つの観点からプロジェクトを分析します:
- チケット統計: 総チケット数、オープン/クローズ比率、優先度・トラッカー・ステータス別分布
- タイミング分析: 解決時間、期限超過チケット
- 作業負荷分析: 見積り精度、リソース利用率
- 品質分析: バグ比率、再開されたチケット
- 進捗分析: 完了率、進捗分布
- チーム分析: メンバーの作業負荷分布、割り当てパターン
これらの分析をもとに10点満点で点数をつけ、アドバイスを提供します。
点数とアドバイス
- ロードマップにオープン中のバージョンがあればバージョン毎に分析をします。
- オープン中のバージョンが無い場合には直近1週間と直近1ヶ月のチケットを分析します。
チケット統計分析
以下の指標を計算:
- 総チケット数: プロジェクトの活動規模
- オープン/クローズ比率: 進捗の健全性指標
- 優先度別分布: リスク管理の状況
- トラッカー別分布: 作業種別のバランス
- ステータス別分布: 作業フローの状況
タイミング・品質分析
時間軸での分析により、以下を評価:
タイミング指標
- 平均解決時間
- 期限超過チケットの割合
- 納期遵守率
品質指標
- バグチケットの比率
- 再開されたチケットの傾向
チーム・作業負荷分析
チーム運営の健全性を以下で評価:
- メンバー別作業分布: 負荷の偏りチェック
- 見積り精度: 計画と実績の乖離度
- リソース利用率: チーム効率の測定
- 割り当てパターン: タスク配分の適切性
インストラクション
設定画面で指示を与えることによってある程度レポートをカスタマイズできます。
上記のような指示をすることにより、以下のようにレポートの内容をカスタマイズできます。
健全性レポートのカスタマイズ
今後の改善点
レポートの保存
今の健全性レポートはその場で表示するのみでDBに保存することができません。今後はDBに保存することにより
- 過去のレポートを参照できる
- 過去のある時点のレポートと今のレポートを比較して、プロジェクトの健全性の変化をレポートできる
ようにしたいと考えています。
メトリックスの追加
健全性レポートのメトリックスはまだまだ手探り状態です。Redmineのチケット情報だけでなく、リポジトリへのコミット情報や、wikiの更新情報なども使えないかと考えています。
健全性レポート生成例
最後に、実際にRedmine AI Helperプラグインで生成した健全性レポートをMarkdown形式でエクスポートしたものをそのまま貼り付けます。
ちなみに分析に使用したプロジェクトは昔使っていて今は放置されている私のRedmineのCode Reviewプロジェクトです。実際のプロジェクトは以下で参照できます。(AI Helperプラグインはすみませんが、一部のメンバー以外使用できません)
プロジェクト健全性レポート: Code Review (プロジェクトID: 6)
バージョン 0.8.0 健全性レポート
健全性点数: 8.5/10
理由: 全4件のチケットがすべて解決済みで進捗100%と高い完成度を示しています。バグ(Defect)と機能(Feature)のバランスも適切で、担当メンバーの負荷も均等に管理されています。ただし、見積もりや時間記録が未登録である点が改善余地です。
バージョン概要
- バージョン名: 0.8.0
- 範囲・タイムライン: 開始・終了日データなし(期間未設定)
- ステータス: オープン中、全チケット解決済み(状態は「解決」)
進捗追跡
- 総チケット数: 4件
- 完了チケット数: 4件(100%完了)
- マイルストーン達成状況: すべての課題が完了し、進捗は100%
リソース配分
- アクティブメンバー数: 1名(Haru Iida)
- 割り当てチケット数: 3件(未割り当て1件)
- ワークロードバランス: メンバー間の偏りなし(割り当て3件で均等)
品質重点
- バグ(Defect): 3件(75%)
- 機能(Feature): 1件(25%)
- 再オープンチケット: 0件
- 品質指標は良好で、バグは解決済みかつ再発なし
タイムライン分析
- 解決時間: すべて0日(すでに解決済みのためデータなし)
- 期限超過チケット: 0件
- リリースリスク: 期限管理がされていないためリスク評価は困難
バージョン推奨事項
- 見積もり時間や実績時間の記録を開始し、工数管理を強化する
- 期限設定を導入し、リリーススケジュールの明確化を図る
- 未割り当てチケットの担当者アサインを推進し、責任の明確化を行う
バージョン いつかやる(Unplanned) 健全性レポート
健全性点数: 3.0/10
理由: 23件中22件が未着手または新規状態で、進捗率はわずか4.35%に留まっています。解決時間は平均約25日と長期化傾向があり、リソースが1名に集中しているため対応遅延のリスクが高いです。
バージョン概要
- バージョン名: いつかやる(Unplanned)
- 範囲・タイムライン: 開始・終了日データなし(期間未設定)
- ステータス: オープン中、ほとんどが新規または担当状態
進捗追跡
- 総チケット数: 23件
- 完了チケット数: 1件(4.35%完了)
- 新規チケット: 16件、担当中チケット: 6件、終了チケット: 1件
リソース配分
- アクティブメンバー数: 1名(Haru Iida)
- 割り当てチケット数: 22件(未割り当て1件)
- ワークロードバランス: メンバー間の偏りなし(全て1名に集中)
品質重点
- バグ(Defect): 9件(39.13%)
- 機能(Feature): 12件(52.17%)
- その他(Question、Proposal): 2件(8.7%)
- 再オープンチケット: 1件(4.35%)
タイムライン分析
- 平均解決時間: 約25.46日(中央値も同値)
- 期限超過チケット: 0件(期限設定なし)
- リリースリスク: 進捗遅延とリソース不足によるリスク大
バージョン推奨事項
- チケットの優先度見直しと緊急度の高い課題への集中を推奨
- チームメンバーの増員やタスク分散による負荷軽減を検討
- 期限設定の導入と進捗管理強化で遅延リスクを低減
- 再オープンの原因分析と品質改善策の実施
総合チケット統計比較表
項目 | 0.8.0 | いつかやる(Unplanned) |
---|---|---|
総チケット数 | 4 | 23 |
オープンチケット数 | 4 | 22 |
クローズチケット数 | 0 | 1 |
優先度「通常」 | 4 | 23 |
トラッカー別(Defect) | 3 (75%) | 9 (39.13%) |
トラッカー別(Feature) | 1 (25%) | 12 (52.17%) |
再オープンチケット数 | 0 | 1 |
平均解決時間(日) | 0 | 25.46 |
期限超過チケット数 | 0 | 0 |
完了率 | 100% | 4.35% |
担当メンバー数 | 1 | 1 |
割り当てチケット数 | 3 | 22 |
未割り当てチケット数 | 1 | 1 |
総括
- バージョン0.8.0は高い完了率と品質を維持しており、リリース成功に近い状態です。今後は工数管理と期限設定を強化してさらなる安定運用を目指してください。
- 「いつかやる(Unplanned)」バージョンは多くの未着手チケットが滞留しており、進捗が著しく遅れています。リソースの分散と優先順位付け、期限管理の導入が急務です。
- 両バージョンとも、Redmineのチケット管理機能を活用し、見積もり・時間記録・期限設定の運用改善を図ることが推奨されます。
必要に応じて、各バージョンの詳細は
- バージョン0.8.0: /projects/codereview/versions/273
- バージョンいつかやる(Unplanned): /projects/codereview/versions/25
で確認可能です。
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