エンジニアが個人情報保護士に合格したので、その感想と効率的な勉強方法を公開する
個人情報保護士とは
個人情報保護士とは、企業や公的機関が扱う個人情報の適切な取り扱いや、それに関する法律への理解を深めることを目的とした資格です。
『個人情報保護士認定試験』という名称ですが、半分は情報セキュリティの分野から出題されるため、エンジニアでもトライしやすい資格となっています。
出題内容
試験の出題範囲や概要については公式サイトの以下をご参照くださるとわかりますが、記事中でもざっくりご紹介します。
課題1
個人情報保護法、マイナンバー法に基づく出題がメイン。
法律の内容を問うものから、法律をもとに会社で行うべき施策に関するものまであります。
以下、公式による参考問題のリンクを貼っておきます。
課題2
情報セキュリティに関する出題がメイン。
企業で行うべき情報セキュリティの施策や、その効果などが問われます。
こちらはIPAの資格などでも頻出の内容が出るので、エンジニアにとっては比較的身近に感じます。
難易度としてはITパスポートレベルです。
こちらも公式サイトに参考問題があるのでリンクを貼っておきます。
合格基準
先程も書きましたが、合格基準は両課題ともに70%以上です。
情報系の資格試験だと60%合格が多い印象があるので、ちょっとボーダーは高めかもしれません。
過去回の平均合格率は37%前後。
応用情報などと比べると少し高いですが、
ITパスポートや情報セキュリティマネジメントなどよりは低くなっています。
また、平均受験年齢が37歳なので、実務で法律や情報セキュリティを担当している人が多く受けていると推察されます。
そのため、実務未経験で受験すると少し難しいかも知れません。
私はエンジニアなので情報セキュリティに関してはある程度の知識はありました。
(ただし、フロントエンドエンジニアなので情報セキュリティの専門家ではないです。)
公式サイトには勉強時間の目安が20時間前後と書いていますが、当てにならないかなと思います。
20時間前後で合格できるのは業務で法律を扱っているか、よほど賢い人だと思います。
私は余裕を持って合格したかったので、40時間ほどの勉強時間を確保しました。
ちなみにIPAの情報セキュリティマネジメント試験という試験は、必要な勉強時間が200時間と言われていますが、エンジニアであればノー勉(0時間)でも合格できる人がかなりいると思います。
(合格率も50〜60%と、かなりゆるい)
なので、必要な勉強時間は参考にならないと考えてください。
筆者の受験結果
私は2023年3月に行われた第70回 個人情報保護士認定試験を受験しました。
合格点の公開はないので解答速報をもとに自己採点した結果ですが、
課題1 84%(42/50問)
課題2 82%(41/50問)
でした。(合格基準は両課題ともに70%以上)
勉強時間は前述の通り、40時間くらいだと思います。
効率的な勉強方法
ここで紹介する勉強方法は、個人情報保護士認定試験に限らず様々な資格試験の勉強に役立つと思います。
まず過去問を解く
最初にいきなり過去問を解きます。
まったく太刀打ちできなくても問題ありません。
いきなり過去問を解く目的は3つ。
1. どんな問題が出題されるか把握する
2. 現在の得点率を把握する
3. 苦手分野を把握する
とくにエンジニアは課題2の情報セキュリティ分野に関して既存の知識で合格点に達するかもしれません。
また、法律関係も常識で解ける部分も少しあります。
なので、一旦通しで解いてみて、自分が重点的に学習すべき単元を把握するのが効果的です。
間違っても個人情報保護法やマイナンバー法の条文を1から読むことは避けてください。
- 個人情報
- 仮名加工情報
- 匿名加工情報
- 個人関連情報
- 特定個人情報
- 要配慮個人情報
などなど......。
似たような名称のオンパレードで、上から条文を読むだけでは内容が頭に入ってこないと思います。
(ただ、問題を解きながら条文を参照するのはOK。私は紙に印刷して都度確認してました。)
公式過去問題集があるので、そちらを使うのがオススメです。
(マイナーな資格なのでそもそもそんなにテキストがありません。)
曖昧 + 不正解の箇所のテキストを読む
一通り過去問を解いたら、不正解だった箇所に加えて曖昧だった箇所のテキストを読みましょう。
過去問を先に解いて問題の形式を理解しているので、最初からテキストを読み進めるより頭に入りやすいです。
再度過去問を解く
再度過去問を解きます。
ノー勉で挑んだ最初よりもかなり点数が伸びているかと思います。
- 曖昧 + 不正解の箇所のテキストを読む
- 再度過去問を解く
以上を繰り返すわけですが、何度繰り返しても間違えてしまう問題や分野がありますよね。
そういう箇所だけはノートなどに自分なりにまとめても良いと思います。
全範囲をまとめようとすると絶対に試験までに間に合わない上に非効率ですが、
何度も間違う箇所に関してだけは体系的に理解する必要があったりするので効果的です。
(ノートまとめる時間がもったいない!と思う方は単語帳で暗記して乗り切る方法もあります。)
受験に際しての注意点
問題文を精読する
これに尽きます。
個人情報保護士の問題は自動車学校の筆記試験に似ていてクセが強いです。
日本語の揚げ足を取ったような問題が結構あり、問題文の隅々まで気を抜かずに読み進めていく必要があります。
(さら〜っと流して読むと間違える可能性が高くなります。)
過去問であったのが、 『〜とみなす』 とされるべきところを 『〜と推定される』 と表記した引っ掛け問題です。
これは法律系の予備校である伊藤塾が解説を書いていますが、2つの言葉の意味には違いがあります。
私はこれを同じものだと思っていて、誤答しました。
(誤答したのが本番じゃなく過去問で良かった……。)
ただ、伊藤塾の記事のように深く理解する必要はなく、
「『みなす』と『推定する』は違う意味なんだな。間違って選ばないようにしよう。」
くらいの認識でOKです。
また 、『正しいものを選びなさい』『誤っているものを選びなさい』という出題が混ざっている ので、そこも落とし穴の1つです。
(問題文を読んで理解できていても、誤っているものを選ぶべき問題で正しいものを選んだりしてしまいます。)
このように、問題文の選ばせ方がコロコロ変わったり、本当に細かい日本語のニュアンスや断定の仕方の違いなどで誤答してしまうので問題文は丁寧すぎるくらいに精読しましょう。
私は特段読むのが速いわけではありませんが、問題文を丁寧に精読しても模擬試験や試験本番では2周くらい見直す時間はありました。
時間との勝負になるような試験ではないので時間をかけても大丈夫です。
(ただ、本番までに自分で模擬問題を時間を計って解いて、ペースは掴んでおいてください。)
法律の改正に気をつける
個人情報保護法は日本では3年ごとに改正されます。
個人情報を取り巻く環境(IT技術や経済情勢など)が変化するので、それに対応するためです。
ですので、
- 最新のテキストを読む
- 改正された内容を重点的に押さえる
などの対策が必要です。
間違っても改正前の古いテキストを購入して、改正前の知識をインプットしないでください。
資格を取って良かったこと
間違いなく業務に活きていることです。
もちろん弁護士資格を持つ人や、法務部のように法律を日常的に扱っている人たちほどの専門性はありません。
ただ、契約や個人情報の同意などについて学べたり、情報セキュリティについておさらいできたりします。
そのため、業務を行っていて個人に関する情報を扱っている時に 「これ、一回法務部に確認したほうが良さそうだな」 とか、そういった気づきを得ることができます。
個人情報保護士の資格を取る前ではその気づきすら得られなかったと思います。
また、IT業界の個人情報保護法やプライバシーなどに関するニュースに興味を持つようになりました。
最近、巷で噂のChatGPTに関しても、「個人情報収集の観点はどうなってるんだろう」とか「個人に関する誤った情報を正しく見せたら、規制する法律出てくるだろうな」とか、技術以外の観点で見ることができる面白さが生まれます。
少し前のニュースではありますが、Google Analyticsを設置しているサイトはその旨をサイト上に明記するよう定められるなど、実際にIT業界で働いていて 個人情報の収集・管理の厳しさが増していること はみなさんも実感していると思います。
ぜひその分野への理解の足がかりとして、個人情報保護士の受験を考えてみてはいかがでしょうか。
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