【Cline 】ファイル作成・編集・Web開発自動化を試してみた
1. はじめに
最近、エージェント型AIが次々と登場してきました。
その中でも、VSCode上でローカルプロジェクトに直接アクセスし、ファイル作成・編集・コマンド実行まで自動化してくれる拡張機能「Cline」に注目が集まっています。
また、Clineは公式でClaude 3.7 Sonnetを推奨していますが、今回はgpt-3.5-turboでもどこまで使えるのか、自身で検証してみることにしました。
本記事では、
- 実際にClineとモデル(gpt-3.5-turbo,Claude 3.7 Sonnet)を組み合わせて「簡単なWeb開発補助」がどこまでできたのか
- うまくいったポイント、つまずいたポイント
- そこから得られた知見
を整理して、技術記事としてまとめます。
ターゲット読者は、
- ClineやAgent技術に興味があり
- Reactを多少触ったことがあるエンジニア層
を想定しています。
2. Clineとは?
Clineは、
「自然言語だけでローカルプロジェクトを自動操作できる」
VSCode向けのエージェント型拡張機能です。
特徴を整理すると、次の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
提供元 | OpenAI公式ではなく、独立開発チーム |
主な機能 | ファイルの作成・編集、ディレクトリ探索、ターミナルコマンド実行 |
操作方法 | VSCode拡張としてインストールし、プロンプト経由で指示する |
サポートモデル | Claude 3.7 Sonnet(公式推奨)、GPT-3.5-Turbo、GPT-4なども選択可能 |
利用形態 | 無料(APIキー課金のみ)、オープンソースプロジェクト |
Clineは、単なるコード生成ツールとは異なり、
「プロジェクト全体のコンテキストを把握したうえで、作業を進める」
という設計思想を持っています。
これにより、
- ファイルをまたいだ編集
- コマンド実行による開発サポート
- プロジェクト全体を理解した上での提案
が可能になり、これまでのチャット型AIでは難しかった、より実践的な開発支援ができるようになっています。
🛠️ 今回試した環境構成
項目 | 内容 |
---|---|
マシン | M1 MacBook Pro(Apple Silicon) |
OS | macOS Sonoma |
Node.js | v18系 |
パッケージマネージャ | npm v9系 |
プロジェクト | Gatsby.jsベースの静的Webサイト(my-gatsby-site) |
使用AIモデル | OpenAI gpt-3.5-turbo(API経由) |
OpenAIアカウント状況 | Free Tier(支払い登録済だが昇格待ち、今回はFree Tier状態で作業) |
3. なぜ「my-gatsby-site」を選んだのか?
実はこのプロジェクトは、
1年以上前にGitLabでCI/CD(パイプライン設定やデプロイ検証)を学ぶために構築したものでした。
しかし、かなり時間が経過していたため、
今回このプロジェクトを久々に見たときには、**「これ何のプロジェクトだったっけ?」**と完全に記憶が薄れている状態でした。
逆にこの状況は、
「ある程度出来上がったプロジェクトを、Clineが解析して適切に開発作業を進められるか?」
という観点でテストするには絶好のシチュエーションだったため、
この my-gatsby-site をClineのターゲットに選びました。
4. 実施したこと一覧
4-1. プロジェクト解析と起動
- 既存のGatsby.jsプロジェクト(my-gatsby-site)を対象に、Clineに「このプロジェクトをローカルサーバーで起動して」と指示。
- package.jsonを読み込む.jpg
-
my-gatsby-siteから読み込む.jpg
-
必要なコマンド(npm run develop)を提案・実行。
-
localhost:8080で正常起動を確認。
4-2. ファイルの作成・編集タスク
- src/pages/about.js を新規作成し、「This is the about page」と表示させるページ作成を依頼。
- 📸 aboutページ成功表示.png
- 📸 contactページ作成成功
- 📸 Headerコンポーネント作成.jpg
(ここらへんになって、VSCodeのテーマがダークモードだと一部の赤文字が表示できないことに気づいてテーマ変更)
4-3. 共通レイアウトへの組み込み(Layout.js)
- Layoutコンポーネントを作成して、Headerコンポーネントを組み込み。
- aboutページとcontactページに共通レイアウト適用を依頼。
5. 実際に触って感じたこと・所感
ここでは、今回「Cline × gpt-3.5-turbo」「Claude 3.7 Sonnet」両方を実際に試してみて感じたリアルな所感をまとめます。
5-1. できたこと・期待通りだったこと
- ファイル作成・編集(新規作成+内容上書き)ができた
- Gatsby.jsプロジェクトの解析(
package.json
読み取り)ができた - プロジェクト全体を捜査して(
npm run develop
)もきちんと実行できた - 複数回タスク指示(Start New Task)をしても、前回状態を保持して動いてくれた
- gpt-3.5-turboでも基本的な補助開発作業は問題なくできた
- Claude 3.7 Sonnetではさらに提案力・修正力が高く、細かい配慮ややり直しもスムーズだった
5-2. 想定と違った・注意が必要と感じた点
- Auto-approveを無闇にオンにすると危険(という噂を聞いたので今回は利用してない)
- 曖昧な指示だと意図と違う方向に進みやすい
- セッションが肥大化するとCline側がハングするリスクあり
- 📸 ここにスクショ(
This_model_maximum_context_length.jpg
)
- 📸 ここにスクショ(
- 一度タスクを区切り、「Start New Task」でリフレッシュ運用すると安定する
- 特に大規模リファクタリングや複雑なファイル間依存が絡むと、gpt-3.5では苦しく、Claude 3.7が有利だった
5-3. モデル比較簡易まとめ(gpt-3.5-turbo vs Claude 3.7 Sonnet)
項目 | gpt-3.5-turbo | Claude 3.7 Sonnet |
---|---|---|
動作速度 | 速い(軽快) | 若干遅め |
タスク遂行精度 | 普通(意図ズレも) | 高い(指示の意図を汲む) |
エラー復旧力 | 自力リカバリ苦手 | 自己レビューしながら修正できる |
トークン処理上限 | 少なめ(肥大でエラー) | かなり大きい(長時間安定) |
料金 | 安い | 高い(gpt-4並み) |
📢 結論
gpt-3.5-turboは「軽めの個人開発補助」なら十分だが、
本格的なエージェント型開発を目指すならClaude 3.7 Sonnetが推奨される理由がよくわかりました。
5-4. 最後にMRまで作成した
今回の作業結果は、最終的にGitLabリポジトリにMR(Merge Request)としてまとめました!
📸 ここにスクショ(attempt_compirationまですすめる.jpg
)
このように、Clineを活用するだけで「プロジェクト理解・タスク実行・コード修正・MR提出」まで一気通貫できたのは、非常に大きな収穫でした!
6. まとめ(エージェント開発補助の可能性)
✅ 今回、Cline × gpt-3.5-turboを中心に検証し、
✅ 途中でClaude 3.7 Sonnetにも切り替えて比較検証できた結果、
結論として、
「どっちのモデルでも個人レベルの補助開発用途」には十分に実用可能!
と言える結果となりました。
また、タスクの粒度を小さく、指示を具体的にすれば、
gpt-3.5でもしっかり意図通りに作業を進められることも体感できました。
(ただし次から開発するときはClaude 3.7 Sonnetのほうを選択します)
🔥 まとめ
- 複雑なリファクタリングや、プロジェクトまたぎの修正タスクはClaude向き
- gpt-3.5でも「小さな改善」「単機能追加」レベルなら十分戦える
- 「エージェント型AI」を使いこなすには、人間側の指示スキルも問われる
- ちゃんとしたエージェントAIは初めてなので、まあまあ紆余曲折はあったものの、その部分は慣れるはず
7. 参考リンクまとめ
- Cline公式サイト
- Gatsby.js公式サイト
- OpenAI API公式ドキュメント
-
私のGitLabリポジトリ
※今回試したコードはこちら(Gatsbyプロジェクト+Cline操作対象)
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