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書籍紹介「AWS生成AIアプリ構築実践ガイド」

に公開

生成 AI の書籍を執筆しました。本書を読むと、AI エージェントなどを含む生成 AI アプリケーションの開発に必要な背景知識と AWS 上での実装、そして実用上のポイントといった実践的な内容を学ぶことができます。技術者だけでなく、生成 AI でビジネスを考える事業開発者、関連プロダクトの営業・マーケティング担当者にも役立つ内容となっています。

Amazon では既に予約が可能で、発売日の8月22日(金)に書店にも並ぶ予定です。

本書の構成

  • 第I部「生成 AI アプリの基本」では、基盤モデルの理解からプロンプトエンジニアリング、RAG、AI エージェントまで、生成 AI アプリ開発の核となる概念を体系的に解説しています。
  • 第II部「アプリ開発の実践」では、実際に RAG アプリと AI エージェントを AWS 上で構築する具体的な手順を、ハンズオン形式で学べます。
  • 第III部「実践を超えて」では、POC から本番環境への移行における課題解決と、ビジネス価値の高いアプリケーションのアイデア創出方法を扱っています。

こんな方におすすめ

  • エンジニア・ソリューションアーキテクト:AWS 上での生成 AI アプリ開発の実践的スキルを背景知識とともに習得したい方
  • 事業開発担当者:生成 AI ビジネスの技術的背景と可能性を理解したい方
  • 営業・マーケティング:顧客との技術的な会話に必要な知識を身につけたい方
  • プロダクトマネージャー:生成 AI プロダクトの企画・設計に役立つ洞察を得たい方

本書の特徴

理論と実践の絶妙なバランス

変化の激しい生成 AI 分野において「変わらない本質」に焦点を当て、技術の流れを理解しながら、AWS 上での実装も学べます。特に第5章「AI エージェント」では、LLM の性能向上からどのように最近の AI エージェントのトレンドに至ったのか、技術背景を理解しやすいよう適宜論文を引用しながら流れを説明しました。

POC から本番まで完全サポート

多くの取り組みが POC レベルから先に進む段階で苦労するなか、本書は本番環境導入における課題と解決策まで踏み込んで解説しています。機械学習・生成 AI 分野では技術的に達成可能な範囲の不確実性が高いため、「よい設計」「責任ある AI」などの観点から考慮点を整理し、アイディアの着想方法まで解説しました。

業界の最前線からの知見

AWS Solutions Architect や AWS Serverless Hero といった実務経験豊富な著者陣が、現場で培ったノウハウを惜しみなく共有しています。Amazon Bedrock Prototyping Camp を主催する尾原さんの貢献により、実用性の高いハンズオン内容を実現しました。
https://zenn.dev/ivry/articles/492e8e19de3906

執筆への想い

本書を書くきっかけとなったのは、共著者の吉田さん(AWS Serverless Hero、日本の生成 AI インフルエンサー)からの 2023年7月の連絡でした。「AWS の生成 AI に関する本を書きませんか」という提案に、二つ返事で「いいですね」と答えました。
とはいえ当初は「書籍よりもオンラインメディアの方が情報の鮮度の観点で適切では」と考えていました。実際、執筆を進めるなかで、AWS re:Invent での Amazon Bedrock アップデートや、執筆終盤での Amazon Bedrock AgentCore の発表など、様々な変化を経験しました。
しかし、それでも進歩の速い生成 AI 分野において一つ一つは着実な研究の積み重ねという実感がありました。大局的な技術の流れを理解するには研究の蓄積を理解・解釈することが有益だと考え、「変化の激しい世界で、それでも変わらないものを書籍にしたためる」ことを意図しました。
専門的になりすぎず、広くクラウド業界の実務に携わる方が生成 AI 分野への理解を深める入り口となるような粒度の説明を心掛けています。ぜひお手に取って頂けると幸いです。

発売前の評価

ひと足さきに内容に目を通していただいた業界関係者や同僚からの評価も高く、Amazon では発売前からベストセラーとなり、手応えを感じています。著者一同、自信を持っておすすめできる書籍として仕上がりました。生成 AI の技術的な深さと実用性、そして本番導入における現実的な課題解決を、バランスよく学べる一冊です。

本書に含め切れなかった内容

2023年に AWS LLM 開発支援プログラムを立ち上げ、日本国内の基盤モデル・大規模言語モデル構築を支援。 2024年に発表された Amazon Bedrock Marketplace を通じて、日本発の基盤モデルのクラウド公開を推進している。

著者プロフィールにも書いたとおり、2023年頃から日本の生成 AI 基盤モデル・大規模言語モデル開発を支援するプログラムなどを設計してきて、実際 Preferred Networks (PFN), Stockmark, Karakuri などスタートアップをはじめとした日本企業でのモデル開発と、それらの AWS 上での拡販なども僕個人としてはとても思い入れのある仕事です。本当はその辺ももっと書きたかったのですが、本書のターゲットが生成 AI アプリ開発者 (モデル利用者) ということで、あえて控えめな言及となっています。引き続き、経済産業省 GENIAC でも支援をしています。

また、OpenAI の open weight モデル gpt-oss や Anthropic Claude Opus 4.1 など、原稿提出後に出たアップデートは含められていません。これらは一貫して「基盤モデルの選択肢を広げる」という Amazon Bedrock の思想の延長線上にあるため、本書の内容としては本質的な意味合いに変わりありませんが、今後の生成 AI トレンドを予測する上では重要なアップデートかと思います。

なお、Well-Architected Generative AI Lens に明示的に言及できていなかった点は、筆者の調査不足となります。正誤表などは GitHub で公開されるので、本書をお読みになり気付いた点がある方は、ぜひフィードバックいただければと思います。


なお改めて、本書の執筆にあたっては、共著者の皆さん、日経BP 編集者の安東さん、そして事前のレビューに協力頂いた方々に心から感謝いたします。

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