[登壇! Gov-JAWS#1]ガバクラのAWS長期継続割引 ~次の4/1に慌てないために~
1. はじめに
みなさん、こんにちは。ひよこインフラエンジニアです。普段はAWSを中心に、既存システムの保守運用や新規システムの設計・構築・テストなどのお仕事をしています。この度、2025/4/24(木)に行われたGov-JAWSで登壇をしてきましたので、資料を振り返りながら補足説明をしていきます。
Gov-JAWSとは
Gov-JAWSは「公共分野のAWS利用に興味・関心を持つエンジニア+行政に関わる関連組織の方のためのJAWS-UG」であり、発足の経緯や活動方針は下記となっています。[1]
「近年、政府のクラウド利用方針が示され、ガバメントクラウドをはじめとした公共分野でのAWS利用が急速に進んでいます。 Gov-JAWSはこの動向に対応し、公共分野のクラウド利用に興味・関心を持つエンジニア、行政に関わる関連組織の方々とAWSの知見/ノウハウをオープンかつポジティブに共有する勉強会を開催していきます。」
私は4/24(木)に行われた第1回にて、ガバメントクラウドにおいて、AWSの長期継続割引をどのように考えていけばよいのかというテーマでお話させていただきました。「ガバクラのAWS長期継続割引 ~次の4/1に慌てないために~」というタイトルで、10分のお時間を頂戴しました。この場をかりて、主催者の皆様、参加者の皆様に御礼申し上げます。
発表内容
資料全体はこちら[2]に掲載しております。
2. 長期継続割引を検討する
ガバメントクラウドにおけるAWSの長期継続割引では、他のシステムで検討する場合よりも注意すべき点が多いと感じています。以下では、実際に検討を進める上でのポイントを3つに大別して説明していきます。
① 長期継続割引への理解を深める
- ガバメントクラウドを利用する地方公共団体様にとっては、リザーブドインスタンスやSavings Plansを本格的に検討する初の機会
→ 長期継続割引にはどのような種類・違いがあるのかを把握し、担当するシステムにとって最適な選択肢を検討する必要があります。
- インパクト
→ 長期継続割引を購入することでどの程度の費用削減効果があるのかを算出し、ご説明することも欠かせません。値の算出には、各種料金表[3][4]やAWS Pricing Calculator[5]を利用することができます。また、すでに一定の期間AWS上でシステムを動かしている場合は、Cost Explorerに購入すべきRIやSavings Plansを表示できる機能があるため、マネジメントコンソール上から推奨を確認することも可能です。
※少し余談になりますが、推奨される長期継続割引を確認しよう・長期継続割引を購入しようとなったタイミングで権限不足エラーが表示されないよう、作業者が利用するIAMロールの権限を確認しておくのをおすすめします。
- AWS上の制約があること
→ こちらはガバメントクラウドに限らないお話ではありますが、長期継続割引の各種類について、制約を把握しておかなければなりません。特に、利用しているOSがWindows ServerやRed Hat Enterprise Linux等の場合は、RIにもかかわらず同インスタンスファミリー内であってもインスタンスサイズの変更ができないため、注意が必要[6]です。
② 割引券と予約券はそれぞれ必要である
-
長期継続割引と、キャパシティの確保を同時並行で考えなければならない
→ 発表の中でも触れましたが、長期継続割引は1時間ごとに消費される割引券であり、利用者が希望する時間帯にAWSリソースを使用できることを保証するものではありません。リソース不足によるインスタンスの起動失敗を防ぐには、別途キャパシティ予約(キャパシティ予約/オンデマンドキャパシティ予約)と呼ばれるリソースの予約券を確保しなければなりません。 -
キャパシティ予約の条件
→キャパシティ予約は「即時使用」と「将来の日付のキャパシティ予約」の2種類がありますが、いずれもリクエストにあたっての条件があります。
- 時間的な余裕を持ったリクエストを
→リクエストは期間に余裕を持つことも大切です。
③ ガバメントクラウド上の制約
- 地方自治法違反(単年度会計)を避けるための制約
→ 地方自治法違反(単年度会計)を避けるため、長期継続割引の中に「AWSでは一般的には利用可能だがガバメントクラウド上では禁止されている購入オプション」があります。具体的には、コミット期間は「1年」のみ、支払いオプションは「前払いなし」のみが認められています。さらに、マーケットプレイスの利用が禁止されています。加えて、長期継続割引の購入作業は4/1 9:00~9:59(JST)実施、または予約購入が推奨されています。
※4/1 9:00~9:59(JST)は4/1 0:00~0:59(UTC)です。長期継続割引1時間単位で使用される割引券を365日(コミット期間1年)分購入することになります。そのため、4/1 9:00~9:59(JST)を超過して購入作業を実施してしまうと、今年度分+翌年度分(超過した時間分)の割引利用料も同時に支払うことになってしまい、単年度会計に違反する形となります。
- 同じアカウントを利用する団体・事業者との調整・合意
→ 2. ① 「長期継続割引への理解を深める」のスライドにあるように、長期継続割引はアカウント単位で適用されます。そのため、共同利用方式で同一アカウントに他地方公共団体・他事業者が所管するシステムのリソースがある場合、(あなたが購入した長期継続割引において指定した条件と合致していれば)そのリソースにも割引後の料金が適用されることがあります。ご自身が担当するシステムの利用部門・管理部門・ASP事業者に対して調整・合意を得ればよいのか、運用管理補助者や他ASP事業者、他の地方公共団体を含めた合意が必要なのか。ステークホルダーの範囲についても留意しておくべき事項といえるでしょう。
3. おわりに
さて、本記事ではGov-JAWSの登壇内容について振り返りました。ガバメントクラウドでは、長期継続割引そのものに対する理解に加えて、キャパシティ確保の仕組みを同時に考慮することや、AWSの仕様上/ガバメントクラウド上の制約を把握しておくことが大切です。検討・購入の時期が年度末~年度初めとなり、検討する回数自体も限られてくるとは思いますが、次回の4/1に慌てないために、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
改めまして、この場を借りて主催者の皆様、参加者の皆様に感謝を申し上げます。
最後に、本記事をお読みくださったあなた、ありがとうございました。
それでは、またどこかの勉強会やどこかの記事でお会いしましょう。
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