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要件定義の「作業」から解放され、「考える」ことに集中 - RD- Assistant が実現する新しい協働のかたち

2025/02/17に公開

こんにちは!hamatzです。
今回は、要件定義の効率化をサポートするCLIツール 「RD-Assistant」 を公開しましたので、その魅力をご紹介したいと思います。


要件定義の本質を取り戻す

「要件定義」というと、どんなイメージをお持ちでしょうか?

  • フォーマットの整理
  • 長いドキュメント作成
  • 関係者の調整や会議のための資料作り

しかし、本来の要件定義は「何を実現し、どんな価値を生み出すかを考える」プロセスではないでしょうか。

  • プロジェクトの目的や価値を明確にする
  • ユーザーやステークホルダーのニーズを深く理解する
  • 実現可能な解決策を構想し、優先度を判断する

こうした「思考」にこそ、本来は時間をかけたいもの。しかし、現場では大量のドキュメント整理に追われ、本質的な検討に割く時間が足りない――そんなジレンマを抱えている方も多いのではないでしょうか。


AIが「作業」を、人間が「判断」を

そこで登場するのが、今回ご紹介する 「RD-Assistant」 です。
このツールは、以下のようなやり取りを通じて、要件定義の「作業」を大幅に軽減してくれます。

1. ビジョンを固める

You: vision

コマンドを実行すると、AIが「プロジェクトの主目的は?」「ユーザー層は?」といった質問を投げかけて、ビジョンを整理。人間はプロジェクトの背景や価値を考えながら回答を入力すると、AIがその情報を基に要件定義のベースをまとめてくれます。

2. 思いついた要件を投げかける

You: データをスマートフォンローカルにだけ保存するような形で、友だちに対するメモ情報をもてるようにしたいです。ただし、これらのデータはOSの機能を使って機種変更時に移行が可能な前提です

すると、AIが必要な情報を引き出すための追加質問や、潜在的なリスクを検出して提案を行います。

🤖 システム:
--------------------------------------------------
友だちに対するメモ情報をスマートフォンのローカルに保存し、OSの機能を利用して機種変更時に移行可能にするというアイデアは、データのプライバシーを高める効果がありますね。このアプローチは、ユーザー体験の向上にもつながると考えられます。ただし、OSによってはデータ移行機能に制約がある場合もあるため、具体的なOSの選定とその移行機能の確認が必要です。
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📋 抽出された要件:
--------------------------------------------------
種類: functional
内容: 友だちに対するメモ情報をスマートフォンのローカルに保存する機能
確信度: 90.0%
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⚠️ 検出されたリスク:
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深刻度: medium
内容: OS依存のデータ移行機能により、異なるOS間での互換性がない可能性
対策案: 主要なOS間でのデータ移行テストを実施し、互換性の確認を行う
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たとえば、「OSの移行機能に依存するリスク」や「互換性がない場合の対策」など、こちらが言い忘れていたポイントを見落とさずに指摘してくれるのです。

3. 要件の整理や再構成

会話が進んで要件がたまってきたら、「整理」コマンドひとつでAIが複数の要件を集約・統合し、わかりやすくリスト化。

You: 整理

🔄 要件の再整理を開始します...

📋 再整理の結果:
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変更点:
- merge: プロフィール情報の登録と更新機能を統合し、UI/UX関連の要求を統一。
- merge: キャッシング関連の要件を統合し、モバイルアプリでの最適化を一元化。
- merge: 友だちメモ情報のローカル保存とデータ移行要件を統合。

再整理された要件:

1. ユーザーがプロフィール情報(アバター画像、名前、公開鍵、description)を登録および更新できる機能を提供し、UI/UXを直感的で使いやすいデザインにする。
   種類: functional
   理由: ユーザーが明確にプロフィール情報の登録と更新を必要としているため。対象ユーザーが大学生から30代の社会人であり、使いやすさが重要であるため。

2. ユーザー間の友だち承認依頼や受諾通知をJSON形式で保存し、自分のプロフィール情報を含める。
   種類: functional
   理由: ユーザーが相手側で自分を判別する必要があるため、友だち承認依頼と受諾通知にプロフィール情報を含めることが求められている。

3. 日本の個人情報保護法およびEUのGDPRに準拠するための機能を実装し、ユーザーの個人情報を適切に処理する。
   種類: functional
   理由: 法的な問題を回避し、ユーザーの信頼を獲得するために必要な機能。
<中略>
10. 新しいSNSサービスのビジネス価値を明示し、ROI評価基準を設定する。
   種類: business
   理由: プロジェクトの成功基準を明確にし、投資家や関係者に対する信頼性を高めるため。

11. 友だちに対するメモ情報をスマートフォンローカルに保存し、機種変更時のデータ移行を可能にする。
   種類: business
   理由: ユーザーのプライバシー保護と利便性を向上させるため。

提案事項:
- データのセキュリティとプライバシー保護に関して、具体的な技術やプロトコルの選定を行い、詳細な実装計画を策定することを推奨します。
- モバイルアプリのキャッシュ管理の具体的な戦略をさらに検討し、ユーザー体験の向上を図るためのロードマップを作成することをお勧めします。

これらの変更を適用しますか? (y/N):

重要度や技術的な観点を整理したうえで、変更の可否を確認してくれるため、勝手にファイルを書き換えられることもなく安心です。

4. 品質チェック・レビュー

すべての要件が書けたと思っても、まだ抜けや曖昧な表現があるかもしれません。そんなときは、「品質」コマンドで要件をスコアリングし、測定可能性や具体性の欠けている部分を洗い出してくれます。

You: 品質

📊 要件の品質チェックを実行します...

[1/11] 要件を分析中: ユーザーがプロフィール情報(アバター画像、名前、公開鍵、description)を登録および更新でき...

<中略>

[11/11] 要件を分析中: 友だちに対するメモ情報をスマートフォンローカルに保存し、機種変更時のデータ移行を可能にする。...

📈 品質チェック サマリー
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総要件数: 11
平均品質スコア: 0.60
最高スコア: 0.67
最低スコア: 0.51

品質スコア分布:
優れている (0.8-1.0): 0(0.0%) 
良好 (0.6-0.8): 7(63.6%) ▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓
改善の余地あり (0.4-0.6): 4(36.4%) ▓▓▓▓▓▓▓
要改善 (0.0-0.4): 0(0.0%) 

📋 各要件の詳細分析:
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⚠️ 優先的に改善が必要な要件:
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要件: ブロックチェーンのトランザクションを最適化し、スケーラビリティを向上させるために新しいプロトコルやアルゴリズムを検討する。
種類: technical

総合スコア: 🔴 0.51

基本要素:
🔴 具体性: 0.33
🔴 測定可能性: 0.00
🟢 明確さ: 1.00

実現性:
🟡 実現可能性: 0.60
🟢 完全性: 0.90

プロジェクト適合性:
🟢 関連性: 0.90
🔴 ビジョン整合性: 0.30
🔴 用語一貫性: 0.00

🔍 検出された問題:
- 数値による具体的な基準が含まれていません
- 測定可能な指標が含まれていません、数値目標が設定されていません
- 追加のメタデータが設定されていません、優先度が設定されていません
- 技術的な詳細や制約が明確でありません

💡 改善提案:
- 具体的な数値目標や条件を追加することを検討してください
- 測定可能な成功基準を含めることを検討してください
- 用語の使用を統一することを検討してください
- プロジェクトの目標との関連性をより明確にすることを検討してください
- ブロックチェーンのトランザクション最適化: スケーラビリティを向上させるために、Layer 2 ソリューションやシャーディング技術を導入し、トランザクションの負荷を分散することを検討する。
  理由: Layer 2 ソリューションやシャーディング技術により、トランザクションの処理速度を向上させ、ネットワーク全体の効率を高めることが可能となるため。
  効果: トランザクション処理の高速化により、ユーザーエクスペリエンスが向上し、ユーザーの定着率が高まる。スケーラビリティの改善により、月間アクティブユーザー10000人以上の達成が容易になる。
- SymbolブロックチェーンとIPFSの統合: ブロックチェーンとIPFSの連携部分を標準化し、APIを設計することで開発効率を高める。API設計にはRESTfulやGraphQLの採用を検討する。
  理由: APIの標準化により、開発者が容易にシステムにアクセスできるようになり、機能拡張やメンテナンスが容易になるため。
  効果: 開発効率の向上により、新機能の追加やバグ修正が迅速に行えるようになり、サービスの信頼性が向上する。
- OSのセキュアな鍵管理機構の利用: セキュリティ向上のため、ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)の利用を検討し、鍵管理の厳格化を図る。
  理由: HSMを利用することで、鍵管理の安全性を強化し、データ漏洩リスクを低減できるため。
  効果: ユーザーのプライバシー保護が強化され、信頼性が向上することで、サービスの継続利用を促進する。
- サーバレスアーキテクチャの採用: クラウドプロバイダーの提供するオートスケーリング機能を活用し、ピーク時のリソース利用を自動で調整する仕組みを構築する。
  理由: オートスケーリングによって、負荷の変動に対して柔軟に対応でき、運用コストを最適化できるため。
  効果: 運用コストの削減とシステムの可用性向上により、持続可能なサービス運営が可能となり、ユーザー数の増加に対応しやすくなる。
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<以下略>
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さらに、「review」コマンドを使えば「技術アーキテクト視点」「セキュリティ専門家視点」など、複数の“専門家の視点”による提案を自動で得られます。

You: レビュー

🔍 要件定義書のレビューを開始します...

📄 要件定義書を生成中...
✅ 要件定義書の生成が完了しました

🔍 レビューを実行中...

📊 レビュー処理の詳細:
- 要件数: 15
- 制約数: 17
- リスク数: 13

📊 推定トークン数: 2809

🔍 文書を一括で処理します...

👤 技術アーキテクトとしてレビューを実行中...
✅ 技術アーキテクトのレビューが完了

👤 セキュリティ専門家としてレビューを実行中...
✅ セキュリティ専門家のレビューが完了

👤 ユーザー体験デザイナーとしてレビューを実行中...
✅ ユーザー体験デザイナーのレビューが完了

👤 ビジネスアナリストとしてレビューを実行中...
✅ ビジネスアナリストのレビューが完了

👤 プロジェクトマネージャーとしてレビューを実行中...
✅ プロジェクトマネージャーのレビューが完了

💭 専門家間の討論を生成中...
✅ 討論の生成が完了

💡 改善提案を生成中...
✅ 改善提案の生成が完了
✅ レビューが完了しました

<中略>

✨ 改善提案:
------------------------------

提案 1:
優先度: high
領域: 技術
内容: SymbolブロックチェーンとIPFSの統合について、技術的なプロトタイプを作成し、段階的な技術検証を実施する。
理由: 技術的な挑戦を克服するためには、十分な設計とテストが必要なため。

提案 2:
優先度: high
領域: セキュリティ
内容: プロフィール情報(公開鍵、名前、アバター画像、descriptionなど)の暗号化と、アクセス制御の詳細な設計を行う。
理由: ユーザーの個人情報を保護するために、高度なセキュリティ対策が必要なため。

<中略>

提案 9:
優先度: medium
領域: プロジェクト管理
内容: プロジェクトのスケジュールに重要なマイルストーンとリリース計画を明確にし、技術検証やセキュリティ対策の項目を組み込む。
理由: プロジェクトの進行をスムーズにし、重要な対策を確実に実施するため。

提案 10:
優先度: low
領域: ユーザー体験
内容: 初回アプリ起動時の待機時間とその影響について、ユーザー体験に関する具体的なリスク評価を行う。
理由: 待機時間はユーザー体験に影響を与えるが、他の優先事項に比べて影響度が低いため。
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変更を適用する前に、以下の点について確認してください:
1. 提案された改善点は妥当ですか?
2. 技術的な実現可能性は検討されていますか?
3. ビジネス目標との整合性は取れていますか?
 
これらの改善提案を適用しますか? (y/N):
----

有用な提案と思われるものがあったら、1つ1つ判断しながら反映していくことができます。

5. 優先順位付け

最後に、「優先順位」コマンドを使うと、プロジェクトのゴールとの関連度やリスクなどをAIが総合的に分析し、「Must / Should / Could / Won’t」のようなカテゴリに振り分けるヒントを示してくれます。

You: 優先順位

📊 要件の優先順位付けを行います。
各要件について、プロジェクトの目標達成における重要度を確認していきます。

📝 要件の分析中: Symbolブロックチェーンの利用

分析結果:
重要度: この機能は目標達成に直接影響しない
影響: Symbolブロックチェーンの利用がない場合、データの信頼性やセキュリティが若干低下する可能性はありますが、記憶を補助することで友達とのコミュニケーションを円滑にするという目標には直接影響しない。
遅延リスク: Symbolブロックチェーンの実装を後回しにした場合、将来的にデータの信頼性やセキュリティの強化が必要となった際に追加のコストや時間がかかる可能性があります。

推奨優先度: 🟢 Could Have - あると良いが後回し可能
理由: プロジェクトの目標は友達とのコミュニケーションを円滑にすることであり、Symbolブロックチェーンの利用はその目標に直接寄与しないため、必須ではありません。ただし、セキュリティやデータの信頼性を強化したい場合には有用であるため、優先度は低めのcould_haveとしました。

優先度の選択:
🔴 Must Have - プロジェクトの成功に不可欠
🟡 Should Have - 重要だが必須ではない
🟢 Could Have - あると良いが後回し可能
⚪ Won't Have - 現時点では対象外

優先度を選択してください:
1. Must Have
2. Should Have
3. Could Have
4. Won't Have
5. この要件の優先度付けをスキップ

ただし、この“提案”はあくまでAIの視点。最終的な決定権は人間にあるので、「なぜその優先度なのか?」という本質的な判断に集中できるようになるのです。


人間とAIの新しい協働スタイル

このように、RD-Assistant が提供するのは単なる文書生成ツールではありません。
AIが「整理・分析・提案」を行い、人間は「意思決定・価値判断」に専念できる――そんな新しい協働のかたちを提案します。

  • AIの役割

    • 会話ベースでの情報整理
    • 不足要件の指摘やリスク検出
    • 多角的な視点(セキュリティ、ビジネス、法務など)の提供
    • ドキュメントの自動生成
  • 人間の役割

    • プロジェクトの背景や狙いを“深く考える”
    • 優先度やリスクの“最終決定”
    • ステークホルダーの想いを反映し、説得する
    • トレードオフを判断する

要件定義は「完璧な資料を作る」ことが目的ではなく、「より良いアイデアを具体化し、価値を生む」ためのプロセスです。RD-Assistantを使えば、形式的な作業に追われることなく、本質的な思考・コミュニケーションにリソースを集中できるようになるでしょう。


これからの働き方を変える一歩

AIとの協働は要件定義だけでなく、さまざまな領域で今後ますます広がっていくと予想されます。
RD-Assistantが目指すのは、「作業」はAIに任せ、「考える」ことは人間が行うという、新しい働き方のモデルケースです。

  • 「要件定義が苦手……」
  • 「プロジェクト開始前の情報整理にいつも時間がかかる……」
  • 「ステークホルダーがたくさんいて、意見の取りまとめが大変……」

こんな悩みをお持ちなら、ぜひ一度RD-Assistantを試してみてください!


使ってみたくなった方へ

インストールや使い方は以下のリポジトリで公開していますので、ぜひチェックしてみてください。

本質的な思考とコミュニケーションに集中するための新しいパートナーとして、RD-Assistantを是非活用していただければ幸いです。

あなたの“考える”時間を取り戻し、本当に価値あるアイデアを生み出すために――
RD-Assistantと共に、新しい要件定義の世界を体験してみてください。

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