🐕

アウトプットについて、あらためて質より量を優先することにした

に公開

アウトプットについて、あらためて質より量を優先することにした

Blogの時代の終わり

ここ数年で、個人ブログを取り巻く環境は大きく変化しました。AIの台頭により、私たちの情報収集の方法が根本的に変わってしまったのです。

かつては、何か困ったことがあれば検索エンジンで能動的に検索し、個人の技術ブログや記事を直接訪れて読んでいました。しかし今では、AIに質問すればその場で回答が得られる時代になりました。ユーザーはわざわざブログを訪れる必要がなくなり、Web上に記事を書いてもAIが読み取り、AIが代わりにユーザーに返答するという構図が生まれています。

この変化により、ブログ記事に感謝や同意のコメントがついたり、読者とのコミュニケーションが発生することはほとんどなくなりました。コメント欄を開けば、そこにあるのは基本的にスパムばかり。好きな投稿者の記事を継続的に読む時代から、知りたいことがある時に都度AIに聞く時代へと移り変わり、結果として、知りたいという要求に直接回答できる記事しか読まれなくなってしまいました。

経済的な側面でも状況は厳しくなっています。ブログに貼られた広告から得られる収益は減少し、コンテンツを提供するサーバー費用をまかなうことさえ難しくなってきています。さらに、AIに勝手に無償で利用されたくないとrobots.txtで制限をかければ、今度はGoogle検索にもひっかかりづらくなるというジレンマに陥ります。

自分が困った経験や楽しかった経験を共有すれば、自分に近い境遇の誰かの役に立つかもしれない。そんな希望を持ってブログを書いていた時代がありました。しかし今、そうした思いは「誰にも届かないだろう」という諦めに近い感覚に変わりつつあります。

正直に言えば、Blogの時代は終わったと感じています。

それでもアウトプットをやめてはいけない

しかし、だからといってアウトプットをやめるべきではないと私は考えています。

誰かに見てもらえる、誰かの役に立つという時代は終わったかもしれません。それでも、アウトプットには未来の自分を助けるという、揺るぎない価値があります。誰も見なくてもいい。間違っている情報を世に出してしまうかもしれない。それでもいいのです。半年後の自分が「あの時の自分、ありがとう!」と言ってくれる、最高のナレッジベースを作るためにアウトプットするのです。

他者からの評価を気にするのは一旦やめましょう。「応援されたい」「すごいと言われたい」「会社や転職で評価されたい」。そうした承認欲求が、かえってアウトプットの手を止めている可能性が高いのです。

AI時代に価値を持つアウトプットとは

では、何を、どのようにアウトプットすれば良いのでしょうか。AIが一般的な回答を生成してくれる今、価値を持つのはあなた自身の体験から得られた一次情報です。

  • AIでは解決できないニッチなエラー: 特定のバージョンや環境でしか発生しないエラーとその解決策。
  • 泥臭い失敗談: 綺麗な成功事例の裏にある、数々の試行錯誤の記録。
  • 意思決定のプロセス: なぜその技術を採用したのか(あるいは、しなかったのか)という背景。

これらは、AIが生成する「正解」の情報とは異なり、同じ壁にぶつかった開発者にとって何よりの助けとなります。

「質より量」を実践するための第一歩

「量を出す」と決めても、最初の一歩が一番重いものです。そこで、完璧を目指さずにとにかく始めるための具体的なアクションをいくつか紹介します。

  • Zennのスクラップ機能を使う: 記事にするまでもない断片的なメモや、調査中のログを気軽に投稿する。
  • エラーメッセージを記録する: エラーで30分以上詰まったら、そのエラー文と解決策のキーワードだけでも記録に残す。
  • 1行でも書く: 「今日は〇〇を学んだ」という一行のメモから始めてみる。
  • テンプレートを作る: よく書く記事の種類(例:書評、ツール紹介)のテンプレートを用意し、穴埋め形式で書けるようにする。

大切なのは、ハードルを極限まで下げることです。

「量」が「質」に変わる瞬間

量をこなしていると、ある瞬間にそれが質に変わる体験をします。

  • 書くことへの抵抗がなくなる: アウトプットが習慣化し、思考を文章にすることが苦にならなくなります。
  • 思考が整理される: 断片的に書いていたメモが繋がり、自分の中で体系的な知識に昇華されます。
  • 過去の自分に助けられる: 数ヶ月前に書いた自分の記事が、未来の自分の問題を解決してくれます。

挑戦と失敗を繰り返さなければ成長できない。これは当たり前のことなのに、いつの間にか忘れていました。自分の能力の低さを受け入れて、とにかく量を出す。そこから始めましょう。

完璧な記事である必要はありません。あなたの試行錯誤の記録そのものに、価値があるのです。

まずは一行のメモから、未来の自分と、どこかにいるかもしれない同じ悩みを持つ仲間のために、アウトプットを再開してみませんか。

Discussion