物流データ分析のリアル:タイムスタンプを巡る3つの“ヤバい”に立ち向かった話

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はじめに

こんにちは、株式会社Hacobuでデータアナリストをしている高橋です。

先日、「ビジネスを支えるヤバいデータ利活用 LT会」にて、「物流データの利活用〜タイムスタンプを巡る3つの"ヤバい"〜」というタイトルで登壇しました。この記事では、当日の発表内容をブログ向けに再構成し、物流現場の実際の課題とその解決策についてご紹介します。


背景:物流データは"全産業のインフラ"

物流は全産業に関わるインフラ的存在で、その効率性低下は全体の生産性に直結します。物流領域の市場規模は約50兆円という巨大マーケットであり、宅配よりもはるかに大きな規模を持っています。

しかし、この領域では"関係者が多すぎる"ため、データの利活用が難しいという構造的な課題があります。

Hacobuではこの課題解決のため、物流DXツール「MOVO」シリーズを通じて現場情報のデジタル化を推進しています。


本題:タイムスタンプを巡る3つの"ヤバい"

今回のLTでは、MOVO Berth(バース予約受付システム)のデータ活用における「タイムスタンプ」をテーマに、現場で直面した"ヤバい"課題とその対応策を3つ紹介しました。


ヤバい①:前後する大量のタイムスタンプ

倉庫のオペレーションでは、記録すべき時刻が多数存在します。

例えば、予約希望時刻、呼出時刻、作業開始・終了の希望/実績時刻、入退場時刻などです。
これらのタイムスタンプが横一直線に並ぶのであれば、計算は簡単です。

しかし、実際には「予定より早く来た」「遅れてきた」といったケースが頻発し、実績と予約が前後することが多数発生します。
その結果、実績を元にした「待ち時間」などの計算が非常に複雑になります。

これに対し、ケース別にロジックを設計・実装することで、この複雑な待ち時間計算の課題を克服しました。


ヤバい②:欠損多発→補完作業

現場では「時刻の記録漏れ」や「そもそも記録しない項目」が頻繁に発生します。

それでも「滞在時間」や「作業時間」といった指標を求めるニーズは常にあります。

そこで他の時刻からの推測ロジックを設計し、補完することで、必要な指標を算出する工夫を重ねました。

この補完ロジックは現場とシステムの橋渡しをする重要な役割を担っています。


ヤバい③:複雑な追加要望の嵐

データ分析が進み可視化が実現すると、さらに**「こうしてほしい」要望**が続々と出てきます。

例:

  • 昼休み時間を分析対象から除外したい
  • 「作業終了時刻」ではなく「荷下ろし完了時刻」を基準にしたい
  • 文字列で記録された時刻をパースして使いたい

などなど…。

これらの実務ベースの要望にどうロジックで応えるかが、データ活用の本当の腕の見せ所だと感じています。

例えば、「昼休みを除外して滞在時間を出してほしい」という要望に対しては、次のような対応をしました:

  • 顧客ごとに異なる昼休み時間を定義できる仕組みを整備
  • 滞在時間が昼休みと完全に重なる場合と部分的に重なる場合を区別
  • 各ケースに応じた昼休み時間除外ロジックの実装

「昼休みを除外する」というシンプルな要望も、実際には「どこまでを昼休みとみなすか」や「昼をまたぐ作業の例外処理」など、現場の実態に寄り添った細やかな設計が必要になります。


おわりに:現場の複雑さを"理解し、翻訳する"ことの価値

現場の複雑さは「正しい情報が取得できればいい」という単純な話ではありません。
"どうすれば現実を正しく数字に変換できるか"を考えることが、データエンジニアの腕の見せ所です。

MOVO Berthでは、こうした課題を一つずつ解決し、現場から信頼される分析基盤とダッシュボードを構築しています。
また実際に、「拠点横断アナリティクス」というダッシュボードサービスを提供し、より高度な分析機能を顧客に提供しています。

これからもデータの力で物流業界に革新と新たな価値を提供していきます!

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