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“たった2週間”がチームを変えた──HacobuのQAプロセス改善に挑んだ、3人のストーリー

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この記事は Hacobu Advent Calendar 2025 の 8日目の記事です。

株式会社HacobuでMOVO Berthのエンジニアリングマネージャーを担当しているuchidaです。

今回は、QAプロセス改善についてとあるプロダクトチームで取り組んだ実話をストーリー調でお伝えします。


2025年某日、Hacobuのプロダクトチーム Berth に小さな転機が訪れました。

それは「QAプロセス改善のための集中期間をつくる」という決断。

誰かが言い出したわけではなく、突然舞い降りてきた“プロジェクト参加の打診”に、メンバーの1人はこう思ったといいます。

「青天の霹靂でしたね」

でも、この“突然のはじまり”が、チームの関係と働き方に思いがけない変化をもたらしていくことになります。

この記事では、そんな 2週間のQAプロセス改善プロジェクト の裏側を、参加メンバーへのインタビューや集中期間の時に残した作業ログをもとに「ストーリー」としてお届けします。

「こんなチームで働いてみたいかも」

そんなふうに思ってもらえたら嬉しいです。

■ なぜ“集中期間”が必要だったのか

― やりたい改善と顧客価値提供の間で揺れていた

背景にあったのは、Berthチームが抱えていた “良いQAプロセスをつくりたいのに、日々の開発で手一杯” というジレンマ。

「改善をやりたいけど、顧客への価値提供も止められない」──そんな状態が続き、明確な成果を出すことが難しくなっていました。

そこで決まったのが、

✔ 2週間、QA改善に全振りする“集中対応期間”をつくる

小さなチームが思い切って時間を確保し、普段の業務を一旦ストップして改善活動に専念する。

この決断が、後の成果を生む大きな転換点になりました。

■ 3人のリアルな“感情”が動いた2週間

作業ログやインタビューから、メンバーの心の動きがとてもよく見えてきます。

● 最初の3日間:とにかく迷う

集中期間の序盤は、とにかく 方向性の迷いと試行錯誤 の連続。

  • 毎日「今日やること」が変わる
  • 何から手をつけるべきか、チームで議論が止まらない
  • プロセス改善と効率化タスクの“粒度”に悩む

とにかく毎日が会話だらけだったという証言もありました。

「会話しかしてなかったですよね」

これらの議論を通して「鵜の目鷹の目作戦」で進めよう、という結論になりました。

開発プロセス全体の改善を検討する長期的な視点を意識した「鷹の目」と、より即効性のありそうな改善を目指す「鵜の目」というわけです。

● 鷹の目作戦:既存の開発プロセス全体を問い直す

集中期間の序盤は“鷹の目作戦”と呼んでいたアプローチを取りました。

バックエンドやフロントエンドではすでにAI活用が当たり前になりつつある──その状況を踏まえると、そもそも 開発プロセス全体をアップデートすべきではないか、という大胆なテーマに踏み込んだのです。

「もし、まったく新しい開発プロセスが軌道に乗ったら?」

「そのとき、QAはどんな価値を発揮しているだろう?」

そんな未来の姿を真剣に描きながらの議論は、普段の業務の延長では得られない、深い気づきを与えてくれました。

このタイミングでは具体的なツールを作ったわけではありません。

ただ、AIが急速に普及し、開発の当たり前が更新されつつあるいま、QAがAIとどう向き合うのかを“プロセスから見直す”時間は必要不可欠だったと感じています。

結果的に、この数日間の“上空からの視点”が、後半で具体的な施策に集中するための土台になりました。

このときの感情を後々振り返ってみると、メンバーの不安もありました。

  • 「このまま成果が出なかったらどうしよう」
  • 「大きな改善に手を付けるのが怖い」
  • 「方向性が定まらずモヤモヤする」

でも、この“混沌”が後の集中状態につながっていきます。

■鵜の目作戦: 3日目に訪れた転機

― “長期施策を踏まえた上で、速効性のある改善に集中しよう”

”鷹の目作戦”での議論を踏まえて、3日目以降は”鵜の目作戦”によりフォーカスしていくことになります。

✔ 長期的なリファインメント改善ではなく、今すぐ効果の出る改善にフォーカスする

これにより、メンバーの心理も大きく変わりました。

  • 不安が「やり切れるかも」という手応えに変化
  • 後半は時間に余裕が生まれ、プラスアルファの改善も実施
  • 少人数だからこその意思決定の速さを実感

ここから一気にギアが入り、2つのツール開発に向けて走り出していきます。

■ 作られたのは2つのツール──数値で効果が見える成果に

集中期間の成果物として完成したのは、以下の2つ。

開発者リファインメント支援ツール

QAのテスト設計書生成ツール

特に後者は テスト設計そのものの時間を大幅に短縮しました。

従来は 1件あたり約8時間かかっていたテスト設計が、ツールを使うことで およそ3時間程度まで圧縮できています。

実際に使ったQAメンバーからは、次のような声が上がっています。

「テスト設計の6〜7割が事前に生成されるので、作業がかなり楽になりました。

空いた時間でほかの案件にも手が回るようになったのが嬉しかったです」

一方で、開発者リファインメントのツールは効果が限定的だと判明し、よりインパクトの大きいQAツールの精度改善に重点が移るなど、冷静な判断も見られました。

■ この取り組みが“チーム”に与えたもの

このプロジェクトの一番の成果は、実はツールそのものではなかったのかもしれません。

インタビューでは、メンバー全員が共通してこう語っています。

「少数チームで、職種も違うメンバーが集まったのに、とにかく動きやすかった」

理由は3つ。

✔ 他の作業を一切やらないと決めたこと

✔ 毎日の濃密なコミュニケーション

✔ お互いの領域理解が深まったこと

2週間で“チームとしての解像度”がぐっと上がり、信頼関係も強くなったと振り返っています。

あるメンバーは、方向性を定めていったリーダーを評して、こんな表現も。

「高畑勲監督みたいでした」

意思決定の丁寧さと、作品づくりのような姿勢が、チームの安心感につながっていった様子が伝わってきます。

■ HacobuのQAは、もっと面白くなる

この取り組みは、単なる“2週間の改善活動”では終わりませんでした。

  • つくったツールは今もQA業務で活用
  • 改善の考え方は開発プロセス全体に展開予定
  • SDD(Spec Driven Development)など、より広い改善施策につながる計画も

そして何より、メンバー全員が「やってよかった」と口をそろえています。

■ 最後に:もし今、あなたがQAで悩んでいるなら

QAはしばしば「後工程の守護者」だと思われますが、HacobuのQAは少し違います。

  • プロセスそのものを変えてしまう
  • 課題があれば職能を超えて議論する
  • 自動化も生成AIも積極的に使っていく
  • 小さなチームでも、大きな改善に挑戦する

そんなスタイルを大事にしています。

もしあなたが、

  • 改善が好き
  • 手を動かすだけでなく、仕組みをつくりたい
  • 職能を超えて議論できるチームで働きたい

と思っているなら、HacobuのQAはきっと楽しい場所になるはずです。

よかったら、カジュアルにお話しましょう。

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