🎯

OKRを「設定したっきり」の飾り物にしない!チームの意思決定の中心に変えた「自信度」計測のルール

に公開

この記事は「Hacobell Developers Advent Calendar」ー 17日目の記事です。

はじめに

多くのエンジニア組織で導入されているOKR(Objectives and Key Results)。みなさんのチームでは、OKRが日々の開発に溶け込んでいますか?それとも期初の目標設定で終わってしまい、期末まであまり意識されない状態になっていませんか?

私のチームでもかつては設定したっきりになりがちでした。

そのせいもあってか、私自身、PBI(Product Backlog Item)の優先度を測りかねたり、いまひとつモチベーションが上がりきらず、ただ淡々とタスクをこなすだけ、という時期がありました。何のためにこれをやっているのか?という手触り感が薄かったのです。

しかし、「自信度」を計測し始めたことで、状況が変わりました。OKRが単なる飾りから、チームの意思決定の中心へと変化したのです。

本記事では、OKRを最大限活用するために我々が取り入れた自信度の計測とその運用ルールについて紹介します。

OKRを設定したっきりにしないために

OKRが形骸化する最大の要因は、日々のタスク消化(Output)と、目標とする成果(Outcome)の接続が切れてしまうことにあります。

OKRを単なるスローガンではなく、チームの成長エンジンとして最大限活用するためには、以下のサイクルが不可欠です。

  1. KR(Key Results)を常に追いかけ続けること
  2. 現状と目標の間に生まれるギャップを直視すること
  3. そのギャップを埋めるためのアクションを打ち続けること

しかし、単に進捗率(%)を見ているだけでは、このギャップの深刻さに気づけないことがあります。タスクは順調に消化しているが、肝心の数値目標は未達になりそう、という状況は往々にして起こるからです。

そこで我々のチームでは、進捗率ではなく達成できる自信があるか?という主観的な見込みを定点観測することにしました。

隔週で自信度を測る

運用は非常にシンプルです。隔週の振り返り(レトロスペクティブ)の場で、チーム全員で以下の問いに向き合います。

「今のまま進んだとして、期末にこのKR(の評点 3[1] )を達成できる見込みはどれくらいあるか?」

これを 10段階(1〜10) で評価し、その数値を記録します。

  • 10: 絶対に達成できる(確実)
  • 1: 奇跡が起きない限り無理(絶望的)

ここで重要なのは、完了したタスクの量ではなく、あくまで未来の達成確率を予測することです。

自信度を記録した例
自信度を記録した例

自信度5〜6が最も健全である

10段階評価と聞くと、10を目指すべき、あるいは常に8以上をキープすべき、と思われがちです。しかし、OKRというフレームワークにおいて、その考え方は危険です。

我々のチームでは、自信度のスコアを以下のように定義し、アクションの指針にしています。

1. スコア5〜6:健全な状態

これがOKRにおけるスイートスポットです。達成できるか五分五分という状態は、適切なストレッチゴール(野心的な目標)に向かって挑戦できている証拠です。チームは適度な緊張感を持ち、工夫を凝らす必要があります。このスコアであれば、そのまま走り続けます。

2. スコア1〜4:ギャップあり(要アクション)

自信度が低いということは、現状のアプローチでは目標に届かないというギャップが顕在化しています。ここで重要なのは、担当者を責めることではありません。なぜ低いと思うのか?を掘り下げ、Next Actionを決定します。

早期に低いスコアが出ることで、手遅れになる前に軌道修正が可能になります。

3. スコア8〜10:目標設定のミス(Easy Win)

期中でもないのに自信度が極端に高い場合、それは目標設定が低すぎた可能性が高いと言えます。

確実に達成できる目標だけを追っていては、事業の成長は望めません。この場合、より高い目標(ストレッチゴール)への再設定を検討するか、余力を他の優先度の高いタスクへ回す判断を行います。

導入してわかった3つの効果

自信度を計測し始めてから、チームには明確な変化が生まれました。

① 日々の意思決定がしやすくなった

かつてPBIの優先度で迷っていたのが嘘のように、自信度が下がったから、この割り込みタスクは断ろう、といった判断基準が明確になりました。根性論ではなく、スコアをベースにやる・やらないの意思決定ができるようになったのは大きな変化です。

② チーム全員の目線が揃う

同じKRに対して、Aさんは8(余裕)、Bさんは3(ヤバい)と回答することがあります。
この認識のズレこそが重要です。「なぜ3だと思ったの?」と聞くと、「実は仕様変更がありそうで…」といった隠れたリスクが共有されます。数値化することで、チームの認識(目線)を強制的に揃えるきっかけが生まれます。

③ モチベーションの維持

遠い未来の期末評価だけを見ていると中だるみしますが、隔週で自信度というスコアが変動することで、ゲームのように攻略する感覚が生まれます。Next Actionを実行したことで、自信度が4から6に回復した!という小さな成功体験が、以前感じていた淡々とこなす作業感を払拭し、モチベーション維持につながっています。

おわりに

OKRは、設定して終わりにするにはあまりにも惜しいフレームワークです。

もしあなたのチームでOKRが形骸化しているなら、次の振り返りでたった一つ、この目標、達成できる自信は何点?とメンバーに問いかけてみてください。その数字が、現状と理想のギャップを埋めるための議論を始める、最初の一歩になるはずです。

参考文献

  • 『OKR(オーケーアール)シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』クリスティーナ・ウォドキー(著),二木 夢子(訳),及川卓也 解説

https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/18/P55640/

脚注
  1. OKRの評価では一般的に1〜5の評点をつけ、評点3は挑戦的だが達成可能な目標の基準値とされています。我々のチームでは、この評点3を達成目標として設定しています。 ↩︎

GitHubで編集を提案
Hacobell Developers Blog

Discussion