チームの生産性を「下げない」ためのコミュニケーション・態度
GVA TECH株式会社でエンジニアをしているYorintonといいます。
今回は、自分が立ち上げから担当しているプロダクトの開発チームで明文化している「チームの生産性を下げないためのコミュニケーション・態度」についてご紹介します。
開発生産性に関しては、AIや自動化などで「上げる」ことについては色々語られており色んな会社が取り組んでいると思います。
一方で、チームメンバー間のコミュニケーションや態度などによって気付かぬ間に生産性が下がりそれが当たり前になってしまっている、ということもあるのではないでしょうか。
今回は不必要に生産性を「下げない」ためにどのような考え方をしているか、について紹介しようと思います。
なお、こちらが私が所属しているチームのプロダクトです。
この記事の目的
- OLGAの法務データ基盤の開発チームのメンバーは生産性を下げないためにコミュニケーション・態度について共通の認識を持って仕事をしている、ということを知ってもらいたい
- チームメンバー1人1人のコミュニケーションや態度によって、チーム全体の生産性が大きく変わってくる可能性があることを知ってもらいたい
- 同僚との関係性で悩まずに事業やプロダクトに集中したいエンジニアに興味を持ってもらいたい
前提
今回紹介する「チームの生産性を下げないためのコミュニケーション・態度」は、OLGAの法務データ基盤のエンジニアが自分1人だった時に、これから一緒に働くチームメンバーを探していくにあたり作成したものです。
同僚に対してリスペクトのあるコミュニケーション・態度をとることの重要性を、より深く理解して共通認識を得るために、その意図・方針・具体的な対策について明文化しています。
前提として、考え方は人それぞれで、何が正しくて何が間違っている、というものではないと思っています。
あくまで、自分が所属しているチームではこれから紹介することを大切にして仕事をしている、という考え方の紹介になります。
なぜコミュニケーションと態度なのか
自分が開発チーム立ち上げの最初の段階でコミュニケーションや態度に着目したのは、自分の過去の経験から仕事中に人から言われた言葉や態度によって自分の生産性が大きく下げられている、と感じることが多かったためです。
チームをゼロから作るこのタイミングで、コミュニケーションや態度に関する最低限のマナーのようなものを定義しておくことで、本当に集中すべき事業・プロダクト・顧客に集中できる環境を作りたい、という想いがありました。
また、暴言を吐く人がいたときに暴言を吐かれた人やそれを目撃しただけの人も含めて生産性が30〜60%程度下がる、という実験結果もあるようです。
暴言とまではいかずとも人を不快にさせるような言動・態度は、生産性を下げる効果が少なからずあるのではないかと思います。
そういった言動によって本来集中すべきことに集中できない状況が発生してしまうと、特にプロダクトの立ち上げ初期は致命的なスピードダウンに繋がりかねないと考え、初期の段階でコミュニケーションや態度に関して最低限の共通認識を持ってチーム作りをしたいと思っていました。
なお、二人目以降のエンジニアは、これから紹介するチームとして大切にしたい価値観を共有できる方を採用してきました。
そのため、今のチームは事業・プロダクト・顧客課題など集中すべきことに集中できる環境になっていると思います。
コミュニケーション・態度の方針
個別の具体策を挙げる前に、少し高い抽象度で方針を定義しました。
その方が具体的なシチュエーションに寄らず1人1人が考えて行動しやすいと考えたためです。
方針として定義したのは、以下の3つです。
- 人を不快にさせるような態度・口調を取らない
- 負の感情や不機嫌な態度を外に出さず自分の機嫌は自分でコントロールする
- 感情的な対立ではなく、論理的な対話で解決を目指す
特に2つ目は人によっては気づかずに態度に出してしまっている人もいるかもしれません。
その不機嫌に晒される周りの人は、萎縮したりモヤモヤして自分の仕事に集中できなかったりと弊害は小さくないと思います。
その割に指摘することに対する精神的な負荷が大きいため、なんとなく許されているような職場も多いかもしれません。
具体例
上記の原則に則り、もう少し具体的な行動・発言の指針と具体例を示しています。
1. ネガティブ・否定的・人を不快にさせる言葉を使わない
私たちのチームでは、人を不必要に不快にさせるような言葉を使わないよう、特に意識しています。
人によっては感情的な発言をしたり、マウントを取って優越感に浸ったりすることがあるかもしれませんが、そういった言動は周囲を萎縮させたりモヤモヤさせて、生産性を大きく低下させてしまいます。
その生産性の低下は表には出づらく、改善もされづらい傾向にあると思います。
そのため、例えば以下のような言動は避けるように、チーム内で共通認識を持つようにしています。
(以下はチーム内のドキュメントに記載した事例の一部になります)
避けたい言動 | 避ける理由 | 推奨される伝え方/より良い関わりのために |
---|---|---|
能力や行動、人格を侮辱する抽象的な言葉 | 言われた側は、発生した事象以上に自分に対して否定的な感情になってしまい萎縮するため | 発生した事象に対して具体的にどこがどうよくなかったのか、敬意のある言葉で伝える |
嫌味な言い方・口調 | 同上 | 同上 |
感情的になっているのが分かる言葉・口調 | 周りが萎縮して本来するべき相談や報告を避けるようになり、より大きな問題に発展するため | 感情的な言葉を使うのではなく、理性的に丁寧に問題解決を図る |
決めつけ、理由のない否定 | 理由もなく否定されると、その後も意見を出すたびに完全否定されるんじゃないか、という恐怖が発生し、有益な意見も発言しづらくなるため | ・理由も一緒に丁寧に説明する ・決めつけるのではなく問いかける |
ストローマン論法 (議論をする中で相手の主張を歪めて引用し、本来の趣旨とは異なる主張に捻じ曲げて反論する論法) |
本来の論点からズレて議論が変な方向にいく傾向があるため | 相手の言っていること、背景などをちゃんと聞いて理解した上で、それに対して意見を伝える |
2. フィードバックする時は具体的に、礼儀正しく、丁寧に
フィードバックの目的は、自分が優越感に浸ることでもストレスを発散することでもなく、相手の成長を促しチームのクオリティを上げることだと思います。
私たちのチームでは、人に対してフィードバックする際は、先述したような言葉を避け、具体的に丁寧に伝えることを大切にしています。
その方が、相手に意図が正しく伝わり、フィードバックの目的が達成されやすくなると考えているからです。
例えば、以下のようなフィードバックが良いと考えています。
- XXを行ったことでXXという事象が発生してしまったので、次回からXXのようにしていただけますでしょうか?
- XXをするとXXというデメリットがあると思うのですが、こちらは何か対策などありますでしょうか?
- XXではなくXXにすると、XXというメリットがあるのでこっちの方がいいかなと思うのですがいかがでしょうか?
3. 自分の意見に固執しない
議論の目的は、自分の意見を通すことではなく事業やチームにとってより良い結論を得て、その後の実行や成果に繋げることにあります。
また、自分の意見に固執する = 感情的になっている、という捉え方もできます。
感情的になると周りが見えづらくなり、論理的な考え方ができなくなりますし、それにより議論の質が下がってしまいます。
その他、以下のようなデメリットが考えられます。
- ビジネス、プロダクト、システム、技術、メンバー、業務フローなど様々な点を考慮する必要がある中で、我の強い1人の観点に寄った近視眼的な結論になりやすい
- 自分の意見の正しさを証明することや自分の拘りを実現することに執着してしまうと、周りの時間を奪うことになり、周りから面倒な人と思われてしまいまともな議論ができなくなる
- 結果的に事業上のデメリットが大きい結論になってしまう可能性がある
例えば、具体的には以下のようなことがあると事業スピードやメンバーの発言意欲などを大きく下げることに繋がりかねません。
- コードの設計・実装に対して、自分の意見を絶対に曲げない
- ビジネス上急ぎたい案件でも、完璧なコードを目指すことに拘る
- みんながA案と言っている中で、強い根拠もなくB案を主張し続ける
- 意思決定者が意思決定した内容に対していつまでも不満を言う
- 自分の意見が通らないと不機嫌になる
そのため議論の際は以下のような点を心がけています。
- 議論の目的を『自分が議論に勝つこと』にせず、『事業的に最も有効な結論を導くこと』にフォーカスする
- 自分の意見も疑いながら議論する
- 自分の意見の正しさを強調するために、関係ない(関係性の薄い)論点や情報を持ち出さない
- 技術面だけでなく、ビジネス面・組織面なども考慮する
- 意見が対立する場合、相手がどういう背景で反対意見を主張しているのかを改めて確認する
- 相手の発言を遮らない
- 相手の発言を最後まで聞くことで、相手の主張を理解することができ、合理的な判断ができる可能性が高まる
4. 人からの意見やフィードバックを素直に受け取る・感謝する
フィードバックする側の配慮も大切ですが、私たちのチームでは、フィードバックを受ける側の受け取り方も同様に大切だと考えています。
敬意を持ってフィードバックしたり反対意見を伝えたとしても、受け取る側が自分への攻撃と捉えてしまうとそこで感情的になって議論が進まなくなってしまうためです。
例えば以下のような点を心がけるようにしています。
- チームメンバーから意見やフィードバックをもらったら「ありがとうございます」など感謝の気持ちを伝える
- 人からの反対意見を自分への攻撃と捉えない
- フィードバックや反対意見に対して納得がいかなくても、まずはその背景や相手の意図を汲み取る、理解するところから始める
まとめ
今回は、技術というよりコミュニケーション・態度に関して、自分が所属しているチームで大事にしていることを紹介させて頂きました。
これまで紹介してきた内容は、私個人だけが考えていることではなく、チーム内で共有して共通認識として持っている内容になります。
先述した通り、これを当たり前と捉える人もいれば、全然違う考え方の人もいると思います。
どちらが正しい、間違っている、というものではないと思っていますが、私が所属しているチームではこれが事業に集中できる環境作りに貢献しているなと感じています。
1人1人がこの方針をめちゃくちゃ意識している、というよりは、元々この価値観に共感してくれているため、みんなそんなに意識しなくても普通にできている、という感覚の方がしっくりくる気がします。
開発生産性というと技術面がフォーカスされがちですが、こういったコミュニケーションや態度によって暗黙的に生産性が下がっているということが無いか、一度見直してみても良いかもしれません。
また、この記事を書いていて思ったのですが、全体的に相手を理解するというのがキーワードなのかも、と思いました。
こう言うと相手はどう感じるかな?相手からの反対意見の真意はなんだろう?といった相手を理解しようとする姿勢を全員が持つことで、お互いに気持ちの良いコミュニケーションを行うことができ、本来集中すべき『事業を成長させる』という点に集中できるんじゃないか、と思いました。
最後までお読み頂きありがとうございました!
今後も読んでくれる方に貢献できるような記事を書いていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
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