【技術書】「Snowflake CortexではじめるLLM入門」の概要と執筆の経緯
前置き
こんにちは。データエンジニアの山口歩夢です!
この度、技術書典18に向けて、「Snowflake CortexではじめるLLM入門」を執筆しました。
Snowflake Cortexとは、Snowflakeが提供する生成AI・大規模言語モデル(LLM)関連機能の総称で、SQLだけで簡単にAIを活用できるフルマネージドなAIサービスです。ベクトル検索やRAG(検索拡張生成)、非構造化データの処理など、多彩な機能が備わっています。
前作『Streamlit入門 Pythonで学ぶデータ可視化&アプリ開発ガイド』では、日本語での情報が少ない中、Streamlitを活用したアプリケーション開発のノウハウを日本の開発者に届けたいという思いで執筆しました。その執筆過程で、Snowflake CortexとStreamlitを組み合わせることで、LLMアプリケーションを手軽に構築できることに気づき、Snowflake Cortexについて学び始めました。
そして、自分自身が学ぶだけではなく、他の開発者のキャッチアップに役立てたいという思い、そしてSnowflake CortexやStreamlitの魅力をより多くの方に伝えたいという願いから本書を執筆することにしました。
謝辞
本書の執筆にあたり、中野雄介さんにはSnowflakeおよびSnowflake Cortexに関するご助言とご協力をいただきました。また、本橋峰明さん(X: @mmotohas)には、中野さんのご紹介とご支援を賜りました。お二方に心より感謝申し上げます。
コンテンツの内容
『Snowflake CortexではじめるLLM入門』は、LLMの基礎から、SnowflakeやStreamlit、Snowflake Cortexの主要機能、さらにCortex Searchを活用したRAG×LLMチャットボットの開発まで、実践的なノウハウを体系的に解説しています。読者が実際にアプリケーションを構築できるよう、スキルを段階的に習得できる構成にしました。
本書の対象読者は、LLMを活用した業務アプリケーションやデータ基盤の構築に関心のある方、非構造化データの処理やRAG技術によるチャットボット開発を学びたい方です。PythonやSQL、Snowflakeの基礎知識があればスムーズに読み進められますが、初心者でも学びやすいよう、LLMやSnowflakeの基本概念についても丁寧に解説しています。
第1章 LLMの基礎知識
大規模言語モデル(LLM: Large Language Models)の基本概念から、その仕組み、学習プロセス、さらには実践的な活用技術までを体系的に解説しました。
まず、LLMの概要やLLMと従来のAIとの違い、実際にどのような業務やサービスで活用されているかについて具体例を交えて紹介しています。続いて、LLMがテキストを生成する際のプロセスや、トークン化・Transformerアーキテクチャなどの中核技術についても分かりやすく説明しています。
さらに、事前学習・ファインチューニング・ヒューマンフィードバックといった学習プロセスの流れや、プロンプトエンジニアリング、ベクトルデータベース、RAG(Retrieval-Augmented Generation)、チャンキングなど、実際の業務やアプリケーション開発において重要となる技術や手法についても詳細に解説しています。
LLMの基礎を体系的に理解できる構成となっており、これからAIやLLMを業務に取り入れたい方、または実践的なアプリケーション開発を目指す方にとって、役立つ知識と実践的なノウハウを身につけていただける内容となっています。
第2章 Snowflakeの基礎知識
クラウド型データウェアハウスとして広く利用されているSnowflakeの基本的な機能や特徴、そして近年強化されたAI・機械学習機能について体系的に解説しました。
まず、Snowflakeが提供するデータ基盤構築やデータ分析に役立つ多彩な機能(データ取込み、パイプライン構築、セキュリティ、データ共有など)について紹介し、データの収集から管理・分析までを一貫して行えるプラットフォームであることを説明しています。
さらに、SnowflakeのAI機能である「Snowflake Cortex」や、機械学習プラットフォーム「Snowflake ML」についても概要を解説し、特に本書の中心となるSnowflake Cortexの各種機能(LLM関数、Copilot、Document AI、Cortex Search、Cortex Analystなど)についても触れています。
また、Pythonベースでインタラクティブなデータアプリケーションを簡単に開発できる「Streamlit in Snowflake」との統合によるメリットや、実際にどのようなアプリケーションが開発できるのかについても具体例を挙げて説明しています。
Snowflakeの全体像とAI・LLM活用の最新動向、そしてStreamlitとの連携によるアプリケーション開発の可能性について、基礎から応用まで体系的に理解できる内容となっています。これからSnowflakeやAI機能を活用したデータ基盤・アプリケーション開発を検討されている方にとって、実践的な知識を身につけていただける内容となっております。
第3章 Snowflake Cortexの機能群
Snowflakeが提供するAI・LLM機能「Snowflake Cortex」の全体像と、各機能の特徴や活用方法について体系的に解説しました。
まず、SQLやPythonから手軽に大規模言語モデル(LLM)を活用できる「Snowflake Cortex LLM関数」や、自然言語での問い合わせやデータ要約、カテゴリ分類、感情分析、翻訳など多様なタスクを実行できる各種関数について具体例とともに紹介しています。また、有害なコンテンツを自動でフィルタリングする「Cortex Guard」など、実運用を見据えた安全性の機能についても解説しています。
続いて、Snowflake上のデータに対して高精度なハイブリッド検索を実現する「Cortex Search」や、自然言語から自動でSQLを生成できる「Cortex Analyst」、PDFなどの非構造化データから情報を抽出する「Document AI」、独自データでLLMを最適化できる「Cortex Fine-tuning」など、Snowflake Cortexが持つ先進的なAI機能を幅広く取り上げています。
「Cortex Analyst」に関しては、セマンティックモデルや検証済みクエリリポジトリ(VQR)など、自然言語クエリの精度や信頼性を高めるための仕組みや、Streamlitと連携したアプリケーション開発の実践例も紹介しています。
Snowflake Cortexの各機能の役割や活用シーン、設定・運用上のポイントを体系的に理解できる構成となっており、これからAI・LLMを活用したデータ分析や業務アプリケーション開発を目指す方にとって、実践的な知識とノウハウを身につけるための最適な内容となっています。
第4章 Cortex Searchを使ったRAGxLLMチャットボットの開発
SnowflakeのAI機能であるCortex Searchを活用し、RAG(Retrieval-Augmented Generation)とLLM(大規模言語モデル)を組み合わせたチャットボットの構築方法について、実践的な手順を体系的に解説しました。
まず、RAGの基本概念や、Cortex Searchを用いた高精度な検索の仕組みについて説明し、検索対象となるメタデータの準備や、Cortex Searchサービスの作成方法を具体的なSQL例とともに紹介しています。また、長文データへの対応としてチャンキング(テキスト分割)の手法や、その実装例についても触れています。
続いて、Streamlit in Snowflakeを利用したチャットボットアプリケーションの開発手順を、コード例を交えながら詳細に解説しています。Snowflake Python APIsを用いたCortex Searchへのクエリ実行、プロンプトエンジニアリング、会話履歴の管理、ユーザーインターフェースの構築など、実際の業務で役立つノウハウにも触れています。
Snowflake Cortex SearchとStreamlitを組み合わせることで、データアナリストやエンジニアの業務効率を大幅に向上させるRAG×LLMチャットボットを、手軽かつ安全に構築できることを理解できる内容となっています。
まとめ
以上が本書の概要になります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
StreamlitやSnowflakeの楽しさや便利さが、少しでも伝わっていれば嬉しいです。
この本が、みなさんのキャッチアップやアイデアのきっかけになれば何よりです。
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