地域とともに歩む、東京の島々における行政DX
GovTech東京の杉井です。この記事はGovTech東京アドベントカレンダー9日目の記事です。
私はクラウド、アジャイル、防災などの担当をしつつ地域としては島しょ地域の皆様とお仕事をしています。
本記事では東京都デジタルサービス局およびGovTech東京が島しょ地域の皆様と協働しているデジタル関連事業をご紹介いたします。
記事の後半には島の見どころや写真を載せています。島しょ地域の魅力も感じていただければ幸いです。
東京都 島しょ地域
東京都には23区、多摩地域の市町村、そして島しょ地域があります。東京都に島があるということはご存じない方もいらっしゃるかもしれません。
東京都というと大都会というイメージが強いかもしれませんが、多摩中部の住宅地、西多摩の山間部や島しょ地域など様々な地域があるのが東京都です。
島しょ地域には9つの自治体、11の有人島があります。
大島町、利島村、新島村(新島/式根島)、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村(父島/母島)です。
島しょ地域の位置関係はこちらです。新宿から小笠原村はなんと約1,000km(船で24時間)の距離があります。同じ東京都ですが人口密度や環境など大きな違いがあり、地域の特性に沿った事業推進が必要です。
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/soumu/02_izusyotonituite
島しょ地域等デジタル技術活用支援事業
令和6年度版 東京都デジタルサービス局の事業概要から抜粋してご紹介します。
我々GovTech東京は東京都デジタルサービス局と一緒に区市町村の皆様のDX推進のお手伝いをしています(GovTech東京との協働による区市町村のDX推進)。その事業の1つが「島しょ地域等デジタル技術活用支援事業」です。
※この事業は島しょ地域だけではなく多摩4町村の皆様ともご一緒しています。
島しょ地域をはじめとした都内の町村(西多摩4町村、島しょ9町村)では、デジタル化を担当する人員・組織体制等が限られるなど、区部や市部とは異なる状況に置かれている。このため、令和4年度から令和5年度にかけて、都とGovTech東京のデジタル人材が各町村を個別に訪問するなどし、各自治体が直面する課題の具体的な把握に努めてきた。令和6年度は、職員一人ひとりが幅広い業務を抱え、デジタル化への対応が負担となっているといった町村の現状を踏まえ、日常業務等における業務改善策の検討から具体的な提案、解決に資するツールの導入まで、都とGovTech東京が一貫した支援を行い、デジタル化の効果を生み出すことで、町村の実情を踏まえたDXの推進を目指す。
この事業にGovTech東京として私と数名が関わっています。
昨年度(令和5年度)、事業の一環で各町村を何度か訪問させていただきました。
全国的におきている職員数の減少といわゆる「一人情シス」問題が島しょ地域では顕著です(島しょ地域では一人が複数業務を兼務されているのでより深刻です)。
また道路や公共施設、住宅地などのインフラ整備、こども子育てや高齢者福祉、そして防災などの行政課題もある中でDX推進にも取り組んでおられます。
職員の方々の負担を下げたい
そんな中でBPR(Business Process Re-engineering)のような業務改革を伴う大規模なDX施策は難しいと考え、本年度(令和6年度)は 「導入に負担がかからず」「職員の方々の業務負荷を下げる」 施策を各自治体ごとに個別に調査・検討・提案を行い、 各町村の方々の賛同が得られた施策の導入をお手伝いしています。
大切にしているのは各町村の方々の実情に沿った施策の推進
当たり前ですが各町村によって立地や人口、集落の数や距離、歴史的な背景などは異なり、行政課題の分野も違うものとなります。
「島しょ地域」と一括りにしてしまいがちです(実際に訪問するまではそのように考えてしまっていました)が、それぞれ課題の内容と優先度が違いますので各町村ごとに個別の施策を行うのは自然な形かなと思います。
もちろんBPRによる業務改善をすることは重要ですし、業務の共同化による効率化・コスト削減も重要です。こちらも並行して検討していくものと考えています。
私がメインで関わっているのは上記ですが、島しょ地域のデジタル関連事業としてはそのほかにも様々な取組があるので、簡単ですがご紹介します。
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都市のデジタルツインの実現
データ利活用の事業の1つです。点群データをデジタルツイン3Dビューア上で提供するとともに、オープンデータとして公開し民間企業の方々に活用していただく事業です。
デジタルツイン実現プロジェクト -
衛星通信活用事業
デジタルインフラの整備の一環として、西多摩の山間部や島しょ地域の不感地帯(携帯電波が届かないエリア)、島へ向かうの船舶に衛星通信を設置するなど、スマートフォンが使えないエリアに対して衛星通信を活用してより便利にしていく事業です。
衛星通信活用事業 / TOKYO Data Highway -
モバイル通信ネットワーク環境整備事業
こちらも同様に通信困難地域の通信環境を改善する事業です。
モバイル通信ネットワーク環境整備事業 / TOKYO Data Highway -
島しょのインターネット環境改善 / 伊豆諸島5村6島への海底ケーブルの整備 / 海底ケーブルの強靭化対策
海底光ファイバーケーブルを敷設する事業です。令和元年(2019年)にケーブルが切断する事故がありました(御蔵島と神津島、式根島、新島の4島で影響がありました)。インターネット回線が切断されると電話やATMなども利用できなくなり、緊急時に消防や警察に電話できなくなるなど人命にも関わります。そこでループ化による強靭化を実施しています。
島しょ地域の情報通信基盤整備及び保守、運用管理 / TOKYO Data Highway
さいごに
島しょ地域のデジタル施策のご紹介でした。
島しょ地域は、それぞれの魅力であふれる素晴らしい地域ですが、自治体運営という面では厳しさも垣間見てきました。
有効な施策は何なのか、どのようにすれば自治体職員の皆様の負担を少なくできるのかを常に考えています。
デジタルは手段の1つにすぎませんが、デジタルの力が少しでも改善に寄与できれば嬉しいなと思います。
DX推進の話とは直接関係ありませんが、ぜひ多くの方に島に興味を持っていただければと思いまして、おまけですが、魅力をご紹介します。
島しょ地域のご紹介
大島
「伊豆大島」とも呼ばれる大島。都心から一番近い島であり、伊豆諸島最大の島でもあります。三原山をはじめ雄大な自然が楽しめます。
個人的なお気に入りは、新鮮な白身魚を唐辛子醤油に漬け込んだ伊豆大島の名物「べっこう寿司」、圧倒的なスケールの地層模様が見れる「地層切断面」です。
利島
利島は大島の南側に位置する比較的小さな島です。竹芝桟橋から高速船で2時間半で行くことができます。
有名なのは椿です。固有種であるヤブツバキが自生しており、島のあちこちに椿が咲く素敵な風景が見られます。また椿油が特産品です。
利島の象徴である宮塚山も素敵です。
新島 / 式根島 (新島村)
新島村は伊豆諸島の中で唯一2島(新島 / 式根島)からなる自治体です。新島には空港もあり調布飛行場から40分ほどで行けます。または竹芝桟橋から高速船で3時間弱です。新島⇔式根島は連絡船で20分ほどで行けます。
新島・式根島といえばなんといっても海の綺麗さです。サーフィンやダイビングが楽しめます。
式根島の「泊海水浴場」は是非訪れてほしい場所です。
神津島
神津島は新島・式根島の南西に位置する島です。人口は1,700人ほど。神津島にも空港があり調布飛行場から45分で行くことができます。
神津島といえば「星空」です。
また花の百名山にも選出されてる「天上山」、ハイキングが楽しめる「秩父山」など山も魅力の1つです。
その他にもダイビングや飛び込み台が楽しめる「赤崎遊歩道」、神津島で作っているクラフトビールなどなど魅力満載の島です。ぜひ訪れてみてください。
2026年春に完成予定の「立方LEDルーム」も注目です。
三宅島
三宅島は人口2,200人、山手線の内側とほぼ同じ大きさの島です。2000年に雄山が噴火し全島避難を余儀なくされました。そこから帰還まで4年5か月もの時間を要しており、島のあちこちに噴火の爪痕が残っています。三宅村役場はまだ「臨時庁舎」という表記になったままです。
火山体験遊歩道や新鼻新山などは火山の圧倒的なパワーを感じることのできるスポットです。
御蔵島
御蔵島は三宅島の南に位置する人口320人の小さな島です。
船で竹芝桟橋から7時間半ほどかかります。または三宅島・八丈島からヘリコプターでも行くことができます。
三宅島までは調布から飛行機50分、三宅島から御蔵島までヘリコプターで10分程度なので飛行機だと行きやすいと思います。
御蔵島はイルカと泳げることで有名な島です。標高850mの御山があり豊な森も特徴です。
八丈島
八丈島は島しょ地域で唯一羽田からジェット機で行ける島です。
自動運転の実証実験をしていたり、町営温泉施設における顔認証システム「温泉で顔パス」の実証実験などデジタルの先進的な取り組みを積極的に行っています。
個人的なお気に入りは、八丈富士の裾野にある「ふれあい牧場」と美味しい「漬け丼」です。
青ヶ島
青ヶ島は「日本で一番人口が少ない自治体」「世界でも珍しい二重カルデラ」「日本一到達困難な島」などで有名な島です。
また幻の焼酎といわれる"青酎"こと「青ヶ島焼酎」、火山の地熱蒸気で造る「ひんぎゃの塩」など個性的な特産品も特徴です。
同僚は「日本一到達困難な島」の洗礼を受け、一泊二日のはずが船の欠航などが重なり一週間ほど滞在を余儀なくされました。訪れる際には余裕を持った日程と多めの荷物、長期滞在の覚悟を持って行ったほうがよいのかもしれません(笑)
ちなみに私は予定通り一泊二日で帰れました。天候とヘリコプターや船の就航は運頼みですね。
青ヶ島の日常を配信する方もいらっしゃいますのでご覧いただきつつ、いつかは訪れてほしいと思います。
小笠原諸島 父島 / 母島(小笠原村)
最後は小笠原諸島(父島 / 母島)です。
都心から1,000kmと遠く離れた温暖な島です。固有種の植物・動物が多く生息しており、2011年に世界自然遺産に登録されました。
飛行場がなくアクセスは24時間の船のみです。24時間と聞くとビックリしますが波に揺られてのんびり過ごすのは贅沢な時間といえるかもしれません。
魅力はなんといっても海です。ダイビングをする人にとっては憧れの海だそうです。
以下の写真にありますが、我々が帰る際のお見送りが感動的です。「いってらっしゃい」(また帰ってきてねという意味が込められてるそうです)の声とともに、船が総出で並走してくれます。
また行きたい(帰ってきたい)な強く思える瞬間でした。
おまけ:庁舎コレクション(庁コレ)
我々がコレクションしている区市町村の庁舎(役所)の写真です。
我々GovTech東京は一緒に働く仲間を募集しています。島しょ地域をはじめとした自治体のデジタル化に関わりたいと考えている方は是非ご連絡ください。
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