DORA 2023 度版 State of DevOps Report
Google Cloud Japan Advent Calendar 2023 1 日目です!
昨年の 2022 年度版 に続き、今年度版のレポートまとめをお届けします。
DORA
DORA は DevOps を軸に、2014 年から
- 組織やチームを成功に導く能力やプラクティスを研究
- 能力やプラクティスから組織のパフォーマンスを予測
といった調査研究をする Google Cloud のチームです。
State of DevOps Report
過去 9 年間、延べ 36,000 人に協力いただき調査を実施してきました。実践から期待できる成果と、その成果に大きく寄与する要因を分析しています。
本記事でまとめをお届けする 2023 年度版の全文は こちら からダウンロードできます!
2023 年度サマリー
5 行でまとめるとこんな結果です。
- 開発速度と製品安定性は両立できます
- ユーザーにフォーカスすると全般的にパフォーマンスが改善します
- 文化が健全であることも、組織のパフォーマンスを改善します
- 質の高いドキュメントは DevOps の成果を後押しします
- クラウドは使うだけではダメ、柔軟性を活かしましょう
今回は 90 ページ以上の大作です。以下 1, 2, 4, 6, 7 章を抜粋してご紹介しますが、ぜひお時間あれば実際のレポートをご覧ください!
第 1 章: 今年のクラスタ分析
4 つのキー指標
今年も開発速度・スループットの指標である「デプロイ頻度」と「変更のリードタイム」、そして安定性の指標である「変更による失敗率」と「サービス復旧にかかる時間」が 4 つのキー指標として調査の軸になっています。
2024 年は 4 つのクラスタに
今年は高・中・低に加え、エリートが復活して 4 クラスタに分類されています。
昨年同様、
- 高いパフォーマンスに分類されたチームは、速度も安定性も高い
- 低いパフォーマンスに分類されたチームは、速度も安定性も低い となっており
- 開発速度と安定性は両立できると言えそうです
第 2 章: ユーザーフォーカス
レポートによると "ユーザーを中心とするアプローチ" は組織のパフォーマンスに最も強く影響する要因の 1 つだったようです。
ユーザー中心のアプローチ
どれくらい効果があるかというと・・
- 技術・プロセス・組織文化、すべての能力を改善、組織のパフォーマンスは 40% 向上
- 従業員の仕事に対する満足度が 20% 改善
- ユーザーの満足度が向上し、収益の増加にも繋がる
ということで効果抜群です。
ユーザー中心主義の仕組み化
レポートでは、これを仕組み化することを提案しています。
- ユーザーを中心にしたサービス レベル指標の定義・目標設定・観測
- ユーザーに価値を提供したチームに報酬を与える環境づくり
- バリュー ストリームにおける作業の可視化といった DevOps プラクティスの実践
- プラットフォーム エンジニアリング チームの活用
第 4 章: ドキュメント
品質のよいドキュメントの効果
ドキュメントの質がよいと技術的な能力がより強く働き、組織のパフォーマンスが向上するようです。また個人の燃え尽きを防ぎ、仕事の満足度も向上します。
効果があるのはなぜなのか?
レポートでは以下が理由ではないかと述べられています。
- ナレッジシェアが促進されるため
- チームが何をどう実現するかが、開発の過程で明確になるため
一方、一部の人は燃え尽き症候群・満足度の低下を引き起こす結果となっています。
- あまりに高品質な文章が要求される
- ドキュメントの重要性が理解されず、作業が過小評価される
これは・・ちょっとわかりますよね。
第 6 章: クラウド
シンプルなクラウド活用
クラウドを使うだけでは必ずしもパフォーマンスは向上せず、むしろ単純にクラウドを使うだけ場合、以下の通りパフォーマンスが悪化する領域が確認されたようです。
クラウドらしい活用
しかしここでクラウドらしく、たとえば仮想マシンではなくサーバーレスで運用省力化を図るなど、インフラをクラウドらしく柔軟に選べるよう、ワークロードをリファクタリングして最新化すれば・・
ちゃんと全体的にパフォーマンスが向上していますね!リファクタリングをいつ誰がいくらでやるのかという別の問題はありそうですが、単にクラウドを利用するだけでは期待した効果が得られない場合、この状況に陥っているものと思われます。
クラウドが従業員に与える影響
柔軟性といったこととは関係なく、一方で従業員の健康には大きな利益をもたらすようです。仕事の満足度と生産性の両方が大幅に向上し、燃え尽き症候群に対しては中立またはプラスの影響が見られます。エンジニアからすると楽しい、キャリア形成になるといったポジティブな要素が強いというのが理由と考えられています。
第 7 章: 文化
そしてなにより大事とされているのがやはり、企業文化です。原題は "None of this works without investing in culture" となっており、なかなかに強いメッセージです。
組織とチームの成果に対する寄与
相互に強い信頼関係があり、積極的に情報が共有される “生成的な文化”は、なんと組織のパフォーマンスを 30% 向上させるようです!
文化は個人も助けます
組織文化が健全であれば、燃え尽き症候群が減り、仕事への満足度と生産性が高まります。
さいごに
今年のレポートはいかがでしたでしょうか?個人的には文化やユーザー中心主義がいかに重要であるかを再認識するいい機会となりました。
Google Cloud では実は、みなさんの組織のパフォーマンスを計測・改善するためのいくつかのお手伝いをしています。オンラインでは
- DORA のクイックチェック
- 組織を変革していくための道筋
- 計測し、改善する候補となる 27 の DevOps の能力
といったツールや資料が公開されています!ご参考になさってください :)
去年と同じ締めの言葉です恐縮ながら、みなさまよい 2023 年末を迎えられますように。
明日は AppMod に関する記事です。お楽しみに〜
Discussion
「こちら」のリンクをクリックしたのですが、遷移したページが2023年度版ではなく、2022年度版になっています。
こちら正しい挙動でしょうか?
もし2023年度版の資料にアクセスする方法があれば、ご教示いただきたいです。
言語設定を英語にすると、2023年度版のページに遷移しました。
おそらく日本語版がまだ出てないようですね。