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「図解即戦力 Google Cloudのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書[改訂2版]」をより効果的に読むポイント

2024/10/28に公開

「図解即戦力 Google Cloud のしくみと技術がこれ 1 冊でしっかりわかる教科書」とは

Google Cloud の基礎知識が学べる「図解即戦力 Google Cloud のしくみと技術がこれ 1 冊でしっかりわかる教科書」が、2024 年 9 月 (電子書籍版は 8 月) に出版されました。

こちらの書籍は Google Cloud のパートナーエンジニアと Google Cloud のパートナーである grasys さんの共著となっており、実際に Google Cloud を現場で使用しているプロフェッショナルの視点で初学者・中級者向けに書かれています。そのため、本書は これから業務で Google Cloud を使用する上で必要な知識 がまとめられた、「Google Cloud の教科書」と言えるでしょう。

https://gihyo.jp/book/2024/978-4-297-14347-3

第 1 版との違い

今回出版された書籍は第 2 版です。第 1 版は 2021 年に出版されています。第 1 版との違いは主に次の 2 点です。ここ数年のサービスのアップデートを踏まえて再学習したい場合はお読みいただくことをお勧めします。

サービスの情報がアップデートされている

クラウドのメリットの 1 つに、各サービスがアップデートされ、より便利になっていくという点があります。クラウドを採用するシステムにおいては、アップデートをキャッチアップし、取り込んでいくことが重要です。

第 1 版と第 2 版では同じサービスを紹介している章がありますが、この数年の各サービスのアップデートを踏まえて書き直しているところもあります。そのため第 1 版をすでに読まれている方でも、第 2 版を読んでいただくことでアップデートをクイックにキャッチアップできるのでおすすめです。

生成 AI を中心とした AI サービスを知ることができる

第 1 版の出版時と第 2 版の出版時の期間で最も大きなアップデートといえば、生成 AI の登場です。Google Cloud では Gemini という生成 AI サービスの提供を 2023 年に開始しました。また、AI サービス (Vertex AI) 全体のポートフォリオを、生成 AI 活用で最適に使えるようアップデートしています。

第 2 版では、特に「10 章 : AI サービス」の中で Gemini を中心とした生成 AI の解説が新しく収録されています。

こんな方におすすめ!

本書はこれから Google Cloud を学ぶ方向けのものですが、本書にに書かれている内容がどのような方により効果的か、私なりに考えてみました。

当てはまる方は、この書籍をかなり有効活用できるかもしれません。

業務で Google Cloud を使う方・使いたい方

Google Cloud を学ぶにはまず触れてみることが鉄則ではありますが、個人で使用するレベルではあまり気にかけないような機能でも、業務利用となると例えば次のような点に配慮した上で使う必要があります。

  • 部署ごとにプロジェクト管理をするには?
  • 安全に権限管理をするには?
  • オンプレと安全に接続するには?

本書ではそういった 業務で利用する上で必要な知識 がまとめられています。

自社で Google Cloud を使うプロジェクトにアサインされたので、基礎知識を身に付けたい といった方や Google Cloud を自社で使うことになったので、基本を理解した上で利用を開始したい といった方にはうってつけです。

他のクラウドサービスを経験しているエンジニア

私自身はお仕事の中でさまざまな企業のエンジニアの方とお話しする機会が多いです。そうした中でよく感じているのが Google Cloud を使い始められる方は、すでに AWS や Azure を使ったことがある方が非常に多い ということです(私自身もそうです)。実際にも、他のクラウドと複合的に使用される企業がほとんどなのではないかと思います。

そういった クラウド経験者 の方は、次の点を意識して学習すると短期間でキャッチアップできるはずです。

  • クラウドの特性 (可用性やスケーラビリティなど) は変わらないので、クラウドの基礎知識を活かした上で学べる
  • 共通点はあるものの、クラウドサービスの考え方は異なるので、他のクラウドサービスと Google Cloud の考え方の違いを学べる

特に後者は本書の 2 章でしっかり語られているので、まずは Google Cloud ならではと言えるサービスの考え方を理解し、クラウドの基礎知識を踏まえた上でより詳細に学んでいくと良いスタートが切れると思います。

各章の見どころ

1 章 : Google Cloud の基礎知識

この章では、まずは Google Cloud の全体像を把握するために、Google Cloud は一体何なのか?どのように使うのか?についての概要がまとめられています。

読者の方へおすすめする、この章の読み方は とにかく手短にささっと読む! です。

1 章では事細かに解説はされていないので、初学者においては読み進めている段階ではモヤっとする部分が出てくるかもしれません。ですが、この章ではあくまで 全体把握が目的 なので、詳細な理解は次章以降で進めていただく形で問題ありません。例えば「クラウドとは何か?」については 2 章で詳しく解説されているので、1 章の段階ではざっくり全体を理解するところに留め、具体的には 2 章から学んでいただけると良いかと思います。

またこの章では、使われる機会の多いアーキテクチャパターンについても取り上げています。例えばどのようなユースケースで Google Cloud を使えるのか、イメージを膨らませることができます。

2 章 : クラウドのしくみと Google の取り組み

この章は個人的に はじめて Google Cloud を触れる人が学ぶ上で、最も重要な章 だと思っています。その理由としては、クラウドの仕組みやメリットを踏まえた上で、なぜ Google Cloud が便利なのか?という Google Cloud の存在理由 についてしっかり書かれているからです。

この章で解説されている重要な点は次の通りです。

  • クラウドとは何か? : 「クラウドの考え方とは?」「オンプレミスとの違いは?」「なぜクラウドの利用が活発なのか?」といった点から理解できます。
  • パブリッククラウド : プライベートクラウドと比較して、パブリッククラウドにはどのような特徴があるか
  • IaaS、PaaS、SaaS : 各利用形態の違い、それぞれを選ぶポイント
  • Google Cloud のコンセプト : The Datacenter as a Computer の考え方
  • Google Cloud のネットワーク : 世界規模で整備されている Google のネットワークを利用している点
  • セキュリティ : IaaS、PaaS、SaaS における責任範囲 (責任共有モデル)、ゼロトラストの考え方
  • ハイブリッドクラウド・マルチクラウド : オンプレや他のクラウドと組み合わせて利用する際の具体的な方法
  • オープンクラウド : Google Cloud におけるオープンソースの活用への取り組み

いずれも Google Cloud でユニークなところも多く、見どころたっぷりですが特に「ハイブリッドクラウド・マルチクラウド」については Google Cloud を使う上で特に抑えておきたいポイントです。Google Cloud は単一のクラウドとしてではなく、複数のクラウドの中の 1 つのクラウドとして利用されることの方が多いです。そのため「オンプレミスとどのように繋ぐか?」「AWS や Azure とどのように繋ぐか?」という点は Google Cloud を実務で利用する際によく出てくる考慮点になります。

また、この章の後半では生成 AI について触れられており、生成 AI について、また Google Cloud の生成 AI サービスについて、一から理解できる解説になっています。特に、生成 AI に触れたことがない方におすすめの内容です。

  • 機械学習と AI とは、そして生成 AI とは何か?
  • 生成 AI を支える技術である「大規模言語モデル (LLM) 」とは何か?
  • ハルシネーション、プロンプトエンジニアリング、ファインチューニングとは何か?
  • Google が提供する LLM である Gemini の特徴
  • 生成 AI に関する Google の取り組み

3 章 : Google Cloudを使うには

この章では Google Cloud を初めて使う方向けに、Google Cloud を使うまでの流れを解説しています。また、Google Cloud を使う上で触れる機会の多い Google Cloud コンソール、CLI ツールの基本的な使う方も学ぶことができます。

実務で使う上では、そういった基本的な使い方以外に、リソース管理や IAM、課金の仕組みなども理解しておく必要があります。この章ではそれぞれについての基礎知識が解説されています。

  • リソース管理 : 組織、フォルダを使って Google Cloud プロジェクトをグループ化しながら管理する方法
  • IAM : リソースに対するアクションを許可するための仕組み、より効率的に管理するためのロールの使い方
  • リージョンとゾーン : リソースをどこに置くのか・どこで使うのかを決めるリージョンとゾーンの選び方のポイント
  • 課金 : 料金を支払うために使用する必要がある「Cloud Billing」サービスの基本的な使い方

これらの機能には多くの機能があり、いろいろな運用方法に柔軟に対応できるようになっています。どのように設定すると自身(または自社)の使い方としてベストなのか考えながら決めていく必要があります。まずはこの章で「どのようなことを決めなければいけないか」の全体像を把握し、詳細なドキュメントも照らし合わせながら決めてくことをおすすめします。

4 章 : サーバーサービス「Compute Engine」

Compute Engine は Google Cloud で提供する仮想マシンを利用できるサービスです。略して GCE と呼ばれることも多いです。

IaaS として利用することができ、オンプレや既存のソフトウェアのホスティング先としてはまずシンプルに使うことができるサービスです。また Compute Engine をバックエンドとしている Google Cloud サービスもあるため (GKE や Dataflow など)、Compute Engine の特性を覚えておくことで他のサービスの理解にも繋がります。

5 章 : ネットワークサービス「VPC」

2 章で触れられている通り、Google Cloud のネットワークはクラウド利用を前提として最適化されています。そのため VPC が必要とされる構成を取る際も、概ねシンプルになる場合が多いです。一方でオンプレで取られる構成と大きく違う部分 (VPC がリージョンをまたがる点など) があるため、どのように違うのか、どのように構成すれば良いのかをしっかり理解することが重要です。

この章では VPC の考え方と基本的な構成、ファイアウォールによる通信制御、そして他のネットワークを繋ぐためのサービスなどを学ぶことができます。

またこの章では負荷分散サービスである Cloud Load Balancing や CDN サービスである Cloud CDN なども紹介しています。VPC に限らず、Google Cloud のネットワークサービス全体を俯瞰することができます。

6 章 : ストレージサービス「Cloud Storage」

この章で扱うストレージサービスである Cloud Stotage (通称 GCS) は利用する機会が非常に多いです。Cloud Storage は言い換えると「データをファイル単位で扱う」ためのサービスであり、システム間でのファイルのやり取りが必要なケースでよく利用されます。

この章では Cloud Storage の特徴と基本的な使い方を学ぶことができます。まずは「ストレージクラス」や「オブジェクト」と「バケット」の関係性といったような Cloud Storage を使う上での基本的な機能の解説からはじまり、オブジェクト(ファイル)をアップロード・ダウンロードする方法、権限管理やバージョン管理の方法などといった Cloud Storage の基本的な使い方が解説されています。

7 章 : コンテナとサーバーレスのサービス

この章では、アプリケーションを動作させる仕組みとして使用する機会の多い「コンテナ」を動かすためのサービスについて、それからサーバーレスで動かすことのできるサービスについて解説しています。

サービスとしては GKE (Google Kubernetes Engine)Cloud Run にあたるのですが、これらをフル活用するためにはコンテナがそもそもどういうもので、どのような点にメリットがあるか抑えておかなければいけません。この章ではまず「コンテナとは何か」という解説から始まり、コンテナをオーケストレーションするためのツールである「Kubernetes」はどのような役割を果たすのか、そして Kubernetes をマネージドサービスとして GKE が紹介されています。順々に読み進めていくことで、最終的には GKE の全体像を把握できるようになっています。

サーバーレス系のサービスについては、Google Cloud では Google App Engine (GAE)Cloud Functions (現 Cloud Run functions)、そして Cloud Run といった選択肢があります。それぞれどのようなサービスなのか、そしてどのような違いがあるのか(使い分けるポイント)が解説されています。

また、この章では CI/CD サービスである Cloud Build についても触れられています。これらを踏まえることで、Google Cloud でコンテナアプリケーションをデプロイするまでのパイプラインをどのように組めば良いか理解することができます。

8 章 : データベースサービス

「データベース」と一言で言っても、RDBMS や NoSQL、または DWH などといったように種類は様々であり、それらに対応する Google Cloud のサービスも多岐に渡ります。

この章では「データベースとは?」や「リレーショナルデータベース (RDB) と NoSQL データベースの違いとは?」といった点をまずはおさらいした上で、各データベースサービスの違いと、Cloud SQLAlloyDBSpannerFirestoreMemorystore など主要なデータベースサービスの概要が学べます。

中でも「データベースサービスの選択基準」のページには、データの種類・ユースケースによってどのようなデータベースサービスを選択すれば良いかフローチャートでまとめられているので、非常に参考になります。

9 章 : データ分析のサービス

Google Cloud では、国内でも利用されることが多い BigQuery を中心としたデータ分析サービスが充実しています。データを貯めて分析を行うためのデータウェアハウス (DWH) だけではなく、グラフなどのような可視化を行うための Looker Studio (旧 Data Portal) などもあり、データ分析を行う環境をまるっと簡単に構築できるようになっています。

この章では「データ分析とは実際にどのようなことをするのか?」「なぜデータ分析が注目を浴びているのか?」といった解説から始まっているため、これまでにデータ分析を行ったことがない方でも「データ分析」の意味を理解できるようになっています。その上で「データ分析基盤を選ぶポイント」を読むことで、BigQuery がなぜ注目を浴びているのかが理解できます。

またこの章では、BigQuery にデータを集めるために必要な Pub/SubCloud Composer といったサービス、またデータ加工に必要な DataflowDataform などといったサービスの概要も紹介されています。データ分析だけではなく、データを収集するためのパイプラインの作り方も学べます。

BigQuery の基礎だけではなく BigQuery のベストプラクティスについても解説されているので、BigQuery についてのより実用的な知識を身につけることができるように解説されています。

10 章 : AI サービス

最後の章は生成 AI をはじめとした AI サービスについての解説です。

この章までに紹介されているサービスは、オンプレや AWS などの他のクラウドで触れる機会があるサービスが多いと思います。一方で機械学習や AI は、業務で使われるようになってから比較的日が浅いため、Google Cloud で初めて触れるという方も多いのではないでしょうか。

Google Cloud では AI サービスは全て Vertex AI という「統合 AI 開発プラットフォーム」に統合されており、AI サービスを使う場合は Vertex AI に含まれるサービスを使うことになります。つまりこの章では「Vertex AI ではどのようなことができるのか?」について解説されています。

この章では、まず Vertex AI でできる代表的な機能について解説されています。機械学習や AI を業務で使う場合は、大きく「すでに用意されているモデルを使う」か「モデルを作って使うか」の 2 つに分かれます。どちらを必要としているかによって Vertex AI の使い方が大きく変わります。AI を業務で使用する上では、まずどちらを必要としているのかを考えた上で、「モデルを使うための機能」を使うのか、または「モデルを作るための機能」も使うのかを選択します。

昨今では特に生成 AI が注目を浴びているので「生成 AI アプリケーションを作る上ではどのようなサービスを組み合わせて使うのか」というポイントを中心に解説しています。生成 AI アプリケーションに必要なスタック「モデル利用とカスタマイズ」「モデルの拡張 (RAG など)」「モデル評価、改善」などに対してそれぞれどのようなサービスを使えば良いか全体像も把握できますし、より簡単に作れるサービスである Vertex AI Agent Builder についても触れています。

AI サービスという点では「生成 AI を使って Google Cloud の利用をサポートする機能」も提供されているので、コード生成やガイダンスなどのサポートが受けられる Gemini for Google Cloud についても解説されています。これから Google Cloud を使うのであれば、こういった生成 AI のパワーを活用すると良いでしょう。

まとめ

本書はタイトルの通り、まさに 即戦力 として必要となる Google Cloud の基礎知識をしっかり学ぶことができる Google Cloud の教科書 です。

もう「Google Cloud は分からない」とは言わせません。本当に時間のない方でも、ほんの数時間、せめて 2 章まで読むだけでも Google Cloud の基本をお分かりいただけると思います。それだけできっと新たな可能性を見つけることができるでしょう。

Google Cloud をガッツリ学びたい方の初めの一冊としても、Google Cloud に少しでも興味を持っている方や気になっているけど触れられていない方のきっかけの一冊としても、ぜひぜひご一読ください!

https://gihyo.jp/book/2024/978-4-297-14347-3

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