Migration Center を使って簡単に Compute Engine の見積を行う方法
2023 年 7 月に Migration Center が GA となり、Google Cloud への Lift & Shift を行う際の IaaS 費用の見積を Google Cloud Console から簡単に行えるようになりました。
本ブログでは既存のサーバー一覧を元に Migration Center の機能を活用してクイックに見積る方法についてご紹介したいと思います。
TL;DR
クラウドのサーバー費用の見積もりが Google Cloud の Migration Center を使うと簡単にできてしまいます!
テンプレートに沿って入力していただく形でも、お手元のサーバーリストからでも、すぐにセルフサービスで費用が見積もれます。
Migration Center の概要
Google Cloud Migration Center は、コストの見積もりから実際の移行の実行までの一連のツールと方法論を提供する、新しい Google Cloud のサービスです。
- 移行とモダナイゼーションを TCO 試算から移行の実行まで一貫して実行可能
- データに基づいた構成の推奨により、Google Cloud への移行を最適化
- VM だけではなく、コンテナやサーバレスへの移行も計画可能
アセスメントの種類
Migration Center では、評価対象のサーバー情報を収集する手段として次の 3 つのアプローチがサポートされています。
- 自動化された1回限りの収集
- 自動化された連続収集
- 手動データインポート
本ブログでは、手動データインポートによる手順を紹介していますが、どの方法を選択するべきかは、必要なデータの種類や収集頻度、データ管理方法などによって異なります。詳細はこちらを参照して下さい。
Stratozone との違い
これまでは Migration Center と Stratozone の併用が必要でしたが、3 月 16 日よりサーバー毎の詳細コストやインベントリ情報を含めたレポートを全て Migration Center から出力出来るようになりました。その他の詳細情報についてはこちらをご覧ください。
事前準備
サーバー一覧の準備
まずは、手元で管理しているサーバー一覧に必要な情報が入力されているかを確認します。
下記が必須情報となるため、データ欠損があれば補完して下さい。
- System名
- ストレージ容量
- CPUコア数
- メモリ量
- OS名
Google Cloud 側の準備
Google Cloud側で必要な準備も進めていきます。
Migration Center を利用するプロジェクトを作成し、適切なIAM権限を付与して下さい。
Migration Center のセットアップ
API の有効化
対象のプロジェクトで、 Migration Center APIを有効化 します。
手動データアップロード
手動データアップロードの種類
手動データアップロードには下記の種類があります。
- テンプレートテーブルに手動で必要情報を入力してアップロード
- 他のクラウドプロバイダでホストされたインフラストラクチャから自動スクリプトでデータを収集してアップロード
- RVToolsを使用して生成されたインフラストラクチャデータをアップロード
本ブログではテンプレートテーブルを使用した手順を紹介していきますが、その他の手順については、こちらのリンクを参照して下さい。
テンプレートの種類
Migration Center に手動でデータをアップロードする場合、予め用意したサーバー一覧の情報を Migration Center のテンプレートに整形する必要があります。下記のテンプレートが Migration Center より提供されています。
- vmInfo.csv
- perfInfo.csv
- diskInfo.csv
- tagInfo.csv
今回の説明では vmInfo.csv のみを使用するため、vmInfo.csv をこちらのリンクよりダウンロードします。
vmInfo.csv は以下の項目で構成されています。
手元のサーバー一覧の情報を元に、 vmInfo.csv の必須項目を入力していきます。
列名 | 種別 | 内容 |
---|---|---|
MachineId | 必須 | 仮想マシンの一意の識別子 |
MachineName | 必須 | 仮想マシンの表示名 |
PrimaryIPAddress | 任意 | マシンの IP アドレス |
PrimaryMACAddress | 任意 | マシンの MAC アドレス |
PublicIPAddress | 任意 | マシンのパブリック IP アドレス |
IpAddressListSemiColonDelimited | 任意 | 割り当て済みまたは割り当てられたネットワーク アドレスのリスト |
TotalDiskAllocatedGiB | 必須 | ディスクの合計容量 |
TotalDiskUsedGiB | 必須 | ディスクの使用容量の合計 |
MachineTypeLabel | 任意 | AWS または Azure マシンタイプのラベル |
AllocatedProcessorCoreCount | 必須 | 仮想マシンの CPU コアの数 |
MemoryGiB | 必須 | 仮想マシンのメモリ量 |
HostingLocation | 任意 | AWS または Azure 形式のマシンのロケーション |
OsType | 任意 | マシンの OS タイプ |
OsPublisher | 任意 | マシンの OS 販売元 |
OsName | 必須 | マシンの OS 名 |
OsVersion | 任意 | マシンの OS のバージョン |
MachineStatus | 任意 | マシンの電源状態 |
ProvisioningState | 任意 | プロビジョニング状態(Azure VM のみ) |
CreateDate | 任意 | マシンの作成タイムスタンプ |
IsPhysical | 必須 | マシンが物理マシンまたは仮想マシン |
データのアップロード
必要情報を入力したテンプレートファイルを Migration Center へアップロードします。
Migration Center のナビゲーションメニューから、"データインポート" をクリックします。
"Add Data" をクリックします。
"Select how you would like to discover assets" で "Upload files" を選択します。
"File import job name" を入力し、
"File Format" で "Manually populated template CSV" を選択します。
"SELECE FILES TO UPLOAD" をクリックし、先程必要情報を入力したテンプレートファイルを選択します。
"UPLOAD FILES" をクリックすると、アップロードを開始します。
Upload が完了するとこの画面に遷移するので、 "IMPORT DATA" をクリックします。
画面が更新され、"Status" が "Completed" となったら、アップロード完了です。
見積もりに関わるパラメータの調整
アップロードしたデータの確認方法
アップロードされたデータの内容を確認する手順を説明します。
アップロードした VM を Group という単位にまとめていきます。
Migration Center のナビゲーションメニューから、"Group" をクリックします。
"CREATE GROUP" をクリックします。
"Group name" を入力し、 "NEXT" をクリックします。
見積もり対象としたいVMにチェックを入れて、 "CREATE" をクリックします。
今回の説明では、すべてのVMを対象とするため "Select all rows" にチェックを入れて、すべてを選択しています。
作成が終わると Group 一覧が表示されるので、今作成した Groupをクリックします。
Group に含まれる VM のリソース総量が確認できます。
VM 毎の詳細を確認したい場合は、対象の VM name のリンクをクリックします。
VM 毎の詳細情報を確認することができます。
インスタンス種類、サイジング、課金体系の変更方法
見積もり時の Compute Engine の種類やリソースの使用量に応じたサイジングの最適化を行うことが可能です。条件として使用する移行設定を変更する手順を説明します。
Migration Center のナビゲーションメニューから、"Migration preferences" をクリックします。
使用する構成情報の名前をクリックします。
条件の設定内容が一覧で表示されるので、今回の移行条件にあっているか内容を確認します。
条件の設定を変更したい場合は、 "EDIT" をクリックして変更します。
-
リソース最適化は不要、ということであれば Sizing を "No rightsizing" に変更します。
-
特定の CPU の種類やマシンタイプ上でしか動かないアプリケーションがある場合、Machine Series の “Any Type” を任意のものに変更します。Compute Engine 毎の CPU 種別の情報についてはこちらをご確認ください。
-
Pricing Type では従量課金以外に 1 年及び 3 年の確定利用割引を選択することができます。
"SAVE" して保存して完了です。
Compute Engine 見積の出力
詳細見積もりのエクスポート方法
アップロードしたデータの確認、移行設定が終わったので、実際に見積もりを実行して、結果を出力していきます。
Migration Center のナビゲーションメニューから、"Reports Catalog" をクリックします。
"TOC and detailed pricing reports" をクリックします。
"Report name" を入力して、 "NEXT" をクリックします。
先ほど作成した "GROUP" を対象として選択して、 "GENERATE REPORT" をクリックします。
しばらくすると見積もりが完了し、 "TCO & pricing" 一覧が表示されます。
対象の "Report name" リンクをクリックします。
"Total cost of ownership report" に遷移します。
スクロールしていくと、概算コストなどが確認できます。
サーバー毎の詳細なコスト情報を確認するため、 Spreadsheet にレポート内容をエクスポートすることも可能です。
その場合は "EXPORT" をクリックし、さらに "Export detailed pricing report to Google Sheets" をクリックします。
確認画面で、 "Export" をクリックします。
Export が完了したら、 "OPEN REPORT" をクリックします。
入力した諸条件とともに、各 VM 毎の見積もり結果を確認することができます。
資料の見方
エクスポート結果の各項目の見方について、簡単に説明します。
“CPUs required”や”Memory required (MB)” が今回の見積もりで必要となる CPU 数やメモリ容量などの要件で"Machine type" 以降の列が、見積もりで重要な情報です。
- Machine type
- 見積もりの要件に基づいて選定された Compute Engine インスタンスの種類
- Package included CPU count
- 選定された Compute Engine に搭載されている CPU のコア数
- Machine memory (MB)
- 選定された Compute Engine に搭載されているメモリ容量
- Machine storage (GB)
- 選定された Compute Engine に搭載されているストレージ容量
- Machine cost/month (USD)
- 選定された Compute Engine インスタンスの月額コスト
- OS cost/month (USD)
- CPU コア数に応じた OS コスト
- Storage cost/month (USD)
- ディスクに掛かるコスト
- Network egress cost/month (USD)
- ネットワーク転送に掛かるコスト
(自動収集による評価を行っている場合はトラフィックに応じてコストが試算されます)
- ネットワーク転送に掛かるコスト
- Total cost/month (USD)
- 総コスト
最後に
以上の手順を用いることで、 Google 公式の Pricing Calculator を利用するよりも Migration Center を使用して簡単に複数台のサーバー見積もりを行うことができます。サーバー一覧を元に IaaS 費用をクイックにお見積りされたい場合は是非 Migration Center をご活用いただければと思います!
Discussion