Google Distributed Cloud(GDC)connected のご紹介
Google Cloud Japan Advent Calendar 2024 の 7 日目です。
(7日目が空いていたので、遅ればせながら記事を投稿しています!)
こんにちは。Google Cloud カスタマーエンジニアの Koto です。
こちらの記事では、まだあまり知られていない(?)Google Distributed Cloud connected について概要を紹介したいと思います!
Google Distributed Cloud(略称:GDC)とは?
GDC は、Google Cloud の技術を自社のデータセンターやエッジ環境に拡張する、ハードウェアとソフトウェアが一体となったアプライアンス製品です。これにより、データ主権、運用主権、低レイテンシ、ハイブリットクラウドでの運用など、特定の要件を満たしながら Google Cloud のサービスを利用できます。
GDC は connected、air-gapped、そして software only の3つの提供形態があります。
名称 | 特徴 |
---|---|
GDC air-gapped | 運用時に Google Cloud への接続を必要とせず、プライベートクラウド基盤として利用します。データ、運用主権が利用者となるため、厳格なセキュリティ要件やコンプライアンス要件を満たす必要のある環境に適しています。 |
GDC connected | 運用時に Google Cloud へ接続しながら、パブリッククラウドの拡張としてオンプレミスやエッジ環境に配置します。低レイテンシが求められるシステム、エッジでのデータ処理、ハイブリッドクラウド環境等の構築に適しています。 |
GDC software only | GDC のソフトウェア基盤(GKE Enterprise オンプレミス)のみを提供します。既存のハードウェアを活用したい場合に適しています。 |
GDC が生まれた背景
システム構築する際、オンプレミスや自社クラウド上に構築するか、パブリッククラウド上に構築するかは、そのシステムの要件により様々です。
特に以下のようなケースで、パブリッククラウドの利用が難しいと判断されることがあります。
1.レイテンシの影響を受けやすいシステム: 金融取引など、遅延が許されないシステム。
2.データ主権やコンプライアンスの要件が高いシステム: 医療情報や政府機関のデータなど、特定の場所でのデータ保持、運用方法や人員体制など特殊な要件が求められるシステム。
3.エッジロケーションでのデータ処理: 工場や小売店など、データ発生源に近い場所での処理が求められたり、インターネットへの接続が安定しない、帯域が足りないシステム。
これらの課題を解決するために生まれたのが GDC です!
GDC はソフトウェア部分には、機能豊富なマネージド Kubernetes サービスである GKE Enterprise や GDC の運用、稼働に必要なコンポーネントを搭載しており、ハードウェアとセットで提供することで、テスト済みで安全で高機能な環境をすぐにお客様サイトにセットアップすることができます。
また Google Cloud が提供する AI 関連の機能や一部マネージドサービスもデプロイして使うことができます(機能拡張中)。
GDC connected の特徴
GDC connected は、名前の通りパブリッククラウドと管理系の通信を行いながら、ワークロードやデータは利用者のデータセンターやエッジ環境に配置し稼働させることが可能です。
GDC connected と GDC air-gapped の大きな違いの一つは、運用時のパブリッククラウドとの通信の有無です。
GDC air-gapped はパブリッククラウドへの依存性が無く通信も不要です。運用で必要となる機能は GDC air-gapped に内包されます。ログやメトリックスも、air-gapped のハードウェア内で保存されます。
GDC connected は Cloud コンソールから GDC connected のサーバー群の管理、監視が可能です。Cloud コンソールから一元管理することができるため、複数環境に存在するエッジコンピューティングやハイブリッドクラウドとしての利用に適しています。
GDC connected の Kubernetes コントロールプレーンは Google Cloud 側に存在し、通信を通じて利用します。重要な点として、GDC と Google Cloud 間の通信が一時的に途絶した場合でも、データプレーンには影響を与えず、ワークロードは最大で7日間稼働し続けることができます(7日間はコミットされた期間ではなく、目安となります)。これにより、通信環境が不安定な場所でもワークロードに影響を与えること無く利用できます。
さらに、GDC connected はコンテナだけでなく VM ランタイムもサポートし、CPU に加えて GPU を搭載したハードウェアも選択可能です。これにより、AI/ML ワークロードなど、幅広い用途に対応できます。
GDC connected の柔軟なハードウェア構成
GDC connected には、ラック型とサーバー型があり、用途や規模に応じて最適な構成を選択することができます。
サーバー型は小売の店舗や工場などスペースが小さい場所にも配置が可能で、ラック型はデータセンターや比較的大規模な利用用途に向いています。
- GDC connected ラック (汎用):
- 大規模な汎用コンピューティングやAI/ML、グラフィック集約型ワークロードに
- 6台のサーバー、オプションのGPU、ローカルSSDストレージ、2つのToRスイッチ、専用ラックで構成されます。
- CPUは288~1152 vCPU、RAMは768GB~3072GB、ストレージは12TB~48TB SSD、オプションで6~24個のGPUを利用できます。
- GDC connected ラック (ネットワーク最適化):
- 大規模なネットワーク集約型コンピューティングに最適です。
- 3~12台のサーバー、オプションのGPU、ローカルSSDストレージ、2つのToRスイッチ、専用ラックで構成されます。
- CPUは384~1546 vCPU、RAMは1536GB~6144GB、ストレージは9.6TB~38.4TB SSD、オプションで6~24個のGPUを利用できます。
- GDC connected サーバー (中):
- 中規模な汎用コンピューティングに最適です。
- 3台のスタンドアロンサーバー、ローカルSSDストレージで構成されます。
- CPUは32または96 vCPU、RAMは64GBまたは192GB、ストレージは1.6TBまたは4.8TB SSDです。GPUはサポートされていません。
- GDC connected サーバー (大):
- 大規模な汎用コンピューティングに最適です。
- 3台のスタンドアロンサーバー、ローカルSSDストレージで構成されます。
- CPUは32または192 vCPU、RAMは128GBまたは384GB、ストレージは3.2TBまたは9.6TB SSDです。GPUはサポートされていません。
詳細はドキュメントをご確認ください。
デフォルトでは冗長性を考慮した3台のサーバーから始めることができます。(1台のサーバーでのデプロイを行いたい場合には、営業担当者にお問い合わせください。)またラックをマルチラック構成にすることも可能なため、大規模なシステムも構築可能です。
GDC connected はアプライアンス製品のため、ハードウェアの故障時も Google と認定パートナーが連携して対応します。Google は GDC connected に接続されたハードウェアの障害を検出すると、原則として3営業日以内に現場訪問の手配を行います。(※ GDC には Premium Support 契約が必要となります。詳細は、個別に担当営業にご連絡ください。)
まとめ
この記事では、GDC connected の概要についてご紹介させていただきました!
GDC connected は、パブリッククラウドだけでは実現が難しかったワークロードにフィットする強力なプロダクトです。まずは皆さまに知っていただき、ご興味をもっていただけたら嬉しいです!
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