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Gemini利用環境の解説(Google AI Studio,Vertex AI Studio,Gemini for Google etc)

2024/12/18に公開

こんにちは、メディア・エンターテイメント業界 担当の Customer Engineer の Dan です。
本記事は Google Cloud Japan Advent Calendar 2024 Gemini 特集版 の 16 日目の記事です。

上記 Advent Calendar に掲載されている他の記事を見ていただけると分かる通り、Gemini といってもその利用環境やサービスとして、Google AI Studio、Vertex AI Studio、Gemini for Google Workspace、Gemini in BigQuery、Gemini Code Assist など様々なサービスがあります。色々ありすぎて、どういうシーンに使うべきサービスなのか分かりづらいと感じる方もいるかと思いますので、本記事では各サービスの機能やターゲット、利用規約の違い等を解説していきます。

3行まとめ

  • Geminiは個人向けと企業向けのサービスに分かれており、個人向けはGoogle AI Studio、企業向けはVertex AI StudioとGemini for Google Workspaceが中心です。
  • 個人向けはサポートが限られ、データが学習に利用される可能性があります。
  • 企業向けでは充実したサポートとデータ保護が提供されます。

Gemini エコシステム

改めてですが、Gemini は Google が開発する最先端の生成 AI モデル ファミリーの名称です。 テキストだけでなく画像や動画なども一緒に処理できる、マルチモーダル モデルの大規模言語モデル (LLM, Large Language Model) になります。またロングコンテキストとして、2024/12 現在は 200 万トークンまでのデータ入力に対応しており、約 2 時間の動画、22 時間の音声、2,000 ページ以上の PDF といった大規模データの情報を処理可能です。 この能力を活かし、複雑な問題を理解し、幅広い分野の知識を備えているため、下記のような様々な形でサービスとして提供されています。

サービスとターゲット例)

  • Geminiアプリ: AIアシスタントとして気軽にGeminiを使いたいユーザー向け(例: 個人的な質問、アイデア出し)
  • Gemini API: 自社サービスにGeminiを組み込みたい開発者向け(例: チャットボットの開発、文章生成API)
  • Gemini for Google Workspace: 企業のIT管理者がGoogle WorkspaceアプリとGeminiを連携して従業員の業務効率化を図りたい場合(例: メール作成支援、ドキュメント要約)

これらの他にも数多くの Gemini 関連サービスがあり、今後も増えていくものと思われます。
Gemini サービスを選定するにあたり、機能だけではなく下記の点にも留意いただくことが重要です。

  • サポートの有無
  • データの取り扱い(モデルの学習への利用可否)、利用規約
  • 利用者の制御、監査ログの可否

企業利用であれば、自社のサービスレベルやセキュリティ規定、ガバナンス要件が上記にマッチするかどうかで、どの Gemini サービスを利用するかを判断することになります。
ここからは、下記の2軸をベースに、現状提供している Gemini サービスについて整理していきます。補足として見分け方も記載します。

  • 一般利用者向け(toC): Google が提供するサービス
    • notebooklm.google.com や ai.google.dev のような、google ドメインで提供されます
  • 企業向け(toB): Google Cloud が提供するサービス
    • Web コンソールは console.cloud.google.com、API は aiplatform.googleapis.com といった形で、cloud や googleapis といったドメインで提供されます

12/16 現在の Gemini サービスの大きな分類は下図の通りです。
Gemini エコシステム

一般利用者向け(toC)Gemini サービス

toC 向け Gemini サービスは基本的に下表の通り、個人利用向けの特徴を有しています。
特に、品質の向上とプロダクトの改善のために入力データを基盤モデルの学習に利用する場合がある点は注意が必要です。もちろんその際はプライバシーを保護するための措置が講じられていますが、会話には機密情報を入力しないことが推奨になります。

これらのサービスには、Google 利用規約生成 AI の使用禁止に関するポリシーが適用されます。Google が Gemini アプリのデータをどのように使用するかについて詳しくは、Gemini アプリのプライバシー ハブをご参照ください。

カテゴリ 説明
サポート × サポート窓口はなくコミュニティベースでの課題解決
データの取扱 Gemini API 追加利用規約
・無料枠の場合、基盤モデルの学習にデータを利用
・有料枠の場合、データ利用対象外

※規約内に Google Cloud Platform 利用規約に関する言及がありますが、有料枠の請求管理に Google Cloud 請求先アカウントを利用するために請求部分のみ Google Cloud の利用規約が適用されます。API の利用に関しては Google Cloud のサポートや規約は一切適用されません。

顧客暗号鍵やデータの所在地に関する設定は不可
利用者の制御 △ (Google Workspace 管理者画面から機能自体へのアクセス制限は可能)
監査ログの収集 ×

toC 向け Gemini サービスには下表のようなサービスがあります。

サービス名 特徴 注意点
Google AI Studio Gemini API (Gemini 1.0 や 1.5 Pro/Flash, 2.0 Flash 等の基盤モデル) を利用できるサービス
Web UI コンソール上での利用の他、API キーを発行してアプリケーションから利用することが可能 前述のGoogle 利用規約生成 AI の使用禁止に関するポリシーに加え、Gemini API 追加利用規約が適用される。Gemini API 追加利用規約内で Google Cloud 利用規約が言及されているが、これは Google AI Studio の有料サービスの課金は Google Cloud の請求機能を利用して行われる仕様になっているため、この請求・支払い部分に関する規約だけは Google Cloud 側の利用規約に部分的に従うことになっている
Gemini アプリ Google の生成AIサービスである Gemini を利用できるWeb/モバイル アプリ
Gemini in Gmail, Docs, Slides, Sheet, Chat, Meet, Drive, Vids, Keep, Form Google Workspace Labs(早期アクセス用テスト プログラム)経由で利用可能な、Google Workspace 製品に統合された個人向け Gemini サービス 企業内利用は、Gemini for Google Workspace をご利用ください
NotebookLM ユーザーがアップロードした資料などの情報に基づいて回答する機能を持つ生成AIツール
Google Labs (ImageFX, MusicFX etc) 旧 AI Test Kitchen、Googleから提供される最新AIテクノロジーを利用できるプラットフォーム。ImageFX: テキストから画像を生成できるAI画像生成ツール。MusicFX: テキストから音楽を生成できるAI音楽生成ツール Privacy Policy

企業向け(toB)Gemini サービス

toB 向け Gemini サービスは基本的に下表の通り、企業利用向けの特徴を有しています。
特に、入力データが基盤モデルの学習に利用されない点が特徴です。

これらのサービスには、Google Cloud Platform 利用規約Google Cloud Platform Acceptable Use Policyが適用されます。Google Cloud がデータをどのように使用するかは、Google Cloud プライバシー通知をご参照ください。

カテゴリ 説明
サポート ◯ カスタマーケアに加入が必要
データの取扱 Google Cloud Platform 利用規約。入力されたデータは基盤モデルの学習に利用されません。顧客暗号鍵の適用や、データの所在地に関する設定が可能
利用者の制御 ◯ IAM による制御や、利用可能なサードパーティモデルを組織ポリシーで制限可能
監査ログの収集 ◯ 通常の監査ログの他、下記機能を実装することで利用者のプロンプトや Gemini の出力をロギングすることが可能(今後マネージドサービスとして機能提供されることを期待しています)https://github.com/GCP-Architecture-Guides/gcp-llm-logging

toB 向け Gemini サービスには下表のようなサービスがあります。

サービス名 特徴 注意点
Vertex AI Studio Gemini API を利用できるGoogle Cloud のサービス。Google AI Studio の企業版。
Web UI コンソール上での利用の他、サービスアカウントやAPI キーを使用してアプリケーションから利用することが可能
その他の特徴として、Google Cloud 上の他サービスとシームレスに連携することが可能
Gemini for Google Workspace(NotebookLM Plus 含む) Gmailやドキュメント、スプレッドシートなどの使い慣れた Google Workspace アプリと Gemini の強力な AI 機能を連携して業務効率化を図ることが可能なサービス 利用に際しては、Google Workspace プランのアドオンとして、下記プランの契約が必要。

Gemini Business: 基本的な Gemini の機能を利用できるプラン
Gemini Enterprise: Business の機能に加えて、より高度な機能やセキュリティ機能が追加されたプラン

機能詳細は、Google Workspace 管理者ヘルプ - Gemini for Google Workspace を参照
Gemini for Google Cloud Google Cloud ユーザーに、生成 AI を活用したアシスタンスを提供する機能の総称

次行から記載するサービスを有する
Gemini Code Assist AIを活用したコーディング支援ツール。コード生成、補完、レビューなどを効率化します Gemini Code Assist の Standard もしくは Enterprise プランが必要
機能差異は Gemini for Google Cloud の料金 を参照
Gemini in Colab Enterprise Colab Enterprise上でGeminiのAI機能を利用し、コーディングやデータ分析などを支援するサービス Gemini Code Assist の Standard もしくは Enterprise プランが必要
Gemini in Firebase Firebaseアプリ開発を支援するコラボレーションアシスタントです。開発効率向上、デバッグ時間短縮に貢献します Gemini Code Assist の Standard もしくは Enterprise プランが必要
Gemini in Databases AIを活用したデータベースアシスタント。自然言語でのデータ分析、SQL生成、パフォーマンス最適化などを支援します Gemini Code Assist の Standard もしくは Enterprise プランが必要
Gemini in Apigee, Gemini in Application Integration Apigee や Application Integration の開発を支援する AI ツール。自然言語でフロー生成、タスク提案、コード生成などを行い、開発を効率化します Gemini Code Assist の Standard もしくは Enterprise プランが必要
Gemini in BigQuery BigQuery 上で自然言語でデータ分析を可能にするAIツール。SQL生成などを支援し、データ活用を効率化します Gemini Code Assist の Enterprise プランもしくは BigQuery Enterprise Plus エディション契約が必要
Gemini in Security Command Center(SCC) SCC 上のセキュリティ脅威の検出・調査・対応を支援する AI サービス。自然言語検索やサマリー生成などが可能 ケースの AI サマリーと UDM 検索クエリは、SCC Enterprise ティアに含まれる

まとめ

この記事では、Googleの生成AIモデル「Gemini」の利用環境の違い、特に個人向け(toC)と企業向け(toB)のサービスの違いに焦点を当ててご紹介しました。Geminiはマルチモーダルで非常に強力なモデルですが、その利用方法や提供形態は多岐に渡り、ユーザーは自身のニーズに合ったサービスを選ぶ必要があります。

特に重要な点は、以下の3点です。

  • 個人利用と企業利用で明確な区別がある: 個人向けはGoogle AI StudioやGeminiアプリ、Google Workspaceアプリへの統合など、手軽にGeminiを体験できるサービスが中心です。一方、企業向けはVertex AI StudioやGemini for Google Workspaceなど、より厳格なセキュリティやサポートが求められる環境で利用できるサービスが中心となります。
  • データの取り扱いが大きく異なる: 個人向けサービスでは、サービスの品質向上やプロダクト改善のために入力データが基盤モデルの学習に利用される可能性があります。そのため、機密情報の入力は避けるべきです。企業利用では、入力データが基盤モデルの学習に利用されることはなく、より安心して利用できます。
  • サポート体制や利用規約も異なる: 個人利用はコミュニティベースのサポートが中心となり、利用規約もGoogleの一般的な利用規約が適用されます。企業利用は充実したサポートが提供され、Google Cloud Platformの利用規約が適用されます。企業は自社のセキュリティポリシーやガバナンス要件に合わせてサービスを選択できます。

今後も Gemini 関連のサービスは増えていくことが予想されます。本記事が、皆様が Gemini サービスを選定する際の一助となれば幸いです。

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