メールサーバー運用方法の選択:クラウドとオンプレミスの比較と考察
※ 筆者はblastengineのエバンジェリストです。
一般社団法人日本ビジネスメール協会によると、2024年における仕事上でのコミュニケーション手段として、メールは98.6%となっているそうです。これは、他のコミュニケーション手段よりも利用が多いとのことで、メールは仕事上のやり取りに欠かせないツールとなっています。
そうした中で、メールサーバーの運用をオンプレミスとクラウド、どちらを選択すべきかを考えてみたいと思います。
オンプレミス型メールサーバー
ここでいうオンプレミス型というのは、以下のような形態を想定しています。
- 自社内でサーバーを設置・管理する
- プライベートクラウド内でメールサーバーを運用する
メリット
メールシステム再構築では8割以上がオンプレミスを希望 - ZDNET Japanにもある通り、オンプレミス型のメリットは以下のような点が挙げられます。
- 内部統制、コンプライアンス、セキュリティ面での安心感
他、理由も挙がっているのですが、どちらかというとクラウド(SaaS)を利用する上での不満・不安が多いようです。
- サーバーが国外に設置されている可能性
- 低料金で妥協点が増えそう
- データの完全性と復旧への責任
- カスタマーサポートの制限
- 障害発生時の説明が十分ではない
- 障害が多い
こうした不満・不安からオンプレミスを選択するという企業が多い(多かった)ようです。
デメリット
逆にオンプレミスのデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 運用コストが高い
- システム構築や運用に時間と専門知識が必要
- 災害時のデータ保護やバックアップ対策が自社の責任
メールシステムは24時間365日の運用が当たり前に求められるので、運用コストが高くなりがちです。これはメールソフトウェアに限った話ではなく、OSやハードウェア、ネットワーク機器なども含めた運用コストになります。障害発生時の事業損失や、データの復旧にかかるコストも考慮する必要があります。
また、昨今ではSPFやDKIM、DMARCなどの不正メール防止技術の採用が必須となっており、こうした技術への対応も求められます。マーケティングメールなどで大量のメール配信を行う際には、サーバーのスペックも求められるので、運用コストが高くなる可能性があります。
クラウド型メールサーバー
ここでいうクラウド型メールサーバーは、いわゆるSaaS利用になります。サイバーソリューションズ社による2023年7月のレポートによれば、勤務先の電子メール環境について、クラウドが76.5%だそうです。2012年の記事とは相反しますが、クラウド型を選択する企業が圧倒的に増えてきています。
メリット
クラウド型メールサーバーのメリットは以下のような点が挙げられます。
- 初期導入コストが低い
- サーバーの保守・運用が不要
- オートスケール
- 最新技術への追従が容易
一般的に、クラウドサービスはオンプレミスと比較して安価です。初期システム構築費用も低いため、すぐに導入できます。また、リソースの増減も気にせず、柔軟に対応が可能です。
先に挙げたSPF/DKIM/DMARCといった技術への対応も、サービスプロバイダー側で行う形になり、利用者側の設定はごくわずかで済みます。また、クラウドサービスは常に最新の技術を提供しているため、セキュリティリスクを低減できます。
デメリット
一方で、クラウド型メールサーバーのデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- データが外部サーバーに保存・通過する
- カスタマイズ性が制限される
- 継続的な利用料金が発生
前述のオンプレミスを選択するという場合に被りますが、メールデータが海外のサーバーを経由・保存されることに対する懸念が挙げられます。昨今のGDPRや個人情報保護法など、データの取り扱いに関する法律も厳しくなってきているため、データの取り扱いには十分な注意が必要です。
また、企業のセキュリティ要件に合わせた柔軟な対応ができるかどうかも懸念点になります。クラウドサービスは標準化されたサービスを提供しているため、カスタマイズ性の制限や、追加料金が発生することもあるでしょう。
クラウド型とオンプレミス型の比較
オンプレミスとクラウド型のメリット・デメリットを比較してみます。
コスト面
初期コストについて言えば、クラウド型の方が安価で済むケールが多いでしょう。ただし、既存のサーバー資産の中にメールシステムを組み込んでしまえば、オンプレミス型の方が安価になることもあります。
運用コストでいうと、オンプレミス型はサーバーとアプリケーションの保守・運用が必要になります。クラウド型はもちろん、サブスクリプションコストが発生するでしょう。こちらも一般的にはクラウド型の方が安価で済むことが多いです。
セキュリティ面
データの管理という面で考えると、オンプレミスの方がメリットがあります。企業のコンプライアンスやセキュリティ指針に沿って、データ管理を行えます。クラウド型の場合、他社にデータを預けることになるため、データの管理場所やアクセス制御に不安を感じる企業もあるでしょう。
そのため、クラウド型を選択する場合には、そのプロバイダーのセキュリティポリシーやデータの管理体制について、十分な確認と検討が必要です。
運用・保守面
クラウド型の場合、サーバーの保守・運用はプロバイダーが行ってくれるため、自社での管理負担が軽減されます。一方、オンプレミス型は自社でサーバーを管理するため、システム管理の負荷がかかります。
メールデータの損失が発生すれば、ビジネス上の大きなリスクになります。データのバックアップ体制や、障害時の体制もオンプレミス型の方がより高いレベルでの体制構築が求められます。
スケーラビリティ
最近ではオンプレミスであっても、メールのデータはサーバ上に残すことが増えています。そのため、ユーザー数やデータ量が増加すると、サーバーのスペックを上げる必要が出てきます。クラウド型の場合、ユーザー数やデータ量の増減に対して柔軟に対応できるため、よりスケーラビリティに優れていると言えそうです。
また、マーケティング系のメールを送信するケースでは、メールサーバーに十分な配信能力が求められます。オンプレミスの場合、柔軟にリソースを増減させるのが難しいケールもあるでしょう。クラウド型の場合、そのサービス自体の配信能力が十分にあれば、普段の運用と変わらない形で大量のメールを送信することができます。
選択のポイント
オンプレミスとクラウド型の選択にあたっては、セキュリティ要件が最も大きく関わってきそうです。メールは企業機密に関するデータも送受信されるので、そのデータの取り扱いにおいては十分なセキュリティが求められます。オンプレミスであれば必ず安心という訳ではありませんが、クラウド型でデータを共有されるのに比べると、セキュリティ面での不安は少ないでしょう。
クラウド型を選択する企業が増えているというのは、運用面でのコストを懸念しているのだと考えられます。昨今ではクラウドサービスを利用すること自体に対する不安は解消しており、多くの企業が積極的です。そのため、セキュリティが問題ないと判断できれば、クラウド型の選択は検討に値するでしょう。
なお、ハイブリッド運用という形も検討できます。従業員のメールについてはオンプレミス型を使いつつ、マーケティング系の大量メール配信については、クラウド型で対応するという形です。都度配送と大量配送ではメールサーバーに求められる要件が異なるので、それぞれに適した運用を考える余地は十分にあるでしょう。
まとめ
今回は、オンプレミス型とクラウド型のメールサーバー運用方法について比較しました。クラウド化の流れは強いと思われますが、メールサーバーは機密情報を扱うという点において、早々にクラウド化できない事情もありそうです。ただ、大量メール配信についてだけクラウド型を利用する選択肢はあり得るかと思います。
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