マルチスレッドとは
マルチスレッドとは?
コンピュータプログラム内で2つ以上のタスク(スレッド)が同時に実行される技術を指します。
マルチスレッドの主な目的は、プログラムの並行性と効率を向上させることです!
一般的に、スレッドはプロセス内の実行の単位で、それぞれが独自のプログラムカウンタ、
レジスタセット、およびスタックを持っています。
しかし、同じプロセス内のスレッドは、ヒープメモリなどのリソースを共有します。
これにより、スレッド間でのデータの共有と通信が比較的容易になります。
説明 | |
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プロセス | 実行中のプログラムのインスタンス。各プロセスには独自のメモリ空間と必要なリソースが割り当てられます。 |
スレッド | プロセス内の実行の単位。複数のスレッドが同一のメモリ空間を共有できます。 |
プログラムカウンタ | 次に実行する命令のアドレスを指すレジスタ。 |
スタック | 一時的なデータを保存するためのメモリ領域。関数の呼び出しとリターンに使われます。 |
ヒープメモリ | コンピュータプログラムが実行時に使用するメモリの一部。動的なメモリ割り当てに用いられます。 |
マルチスレッドは以下のような場面で役立つ!
UIとバックグラウンドタスク
UI(User Interface)を持つアプリケーションでは、
バックグラウンドでのデータ処理とUIの更新を同時に行うことが可能です。
これにより、重い処理が行われている間でもUIがフリーズすることなく、
ユーザーはアプリケーションと対話し続けることができます。
例えば
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あるウェブブラウザーのタブで長い記事を読んでいるとき、
他のタブで動画をバックグラウンドでダウンロードしたいとなった時。 -
ダウンロードプロセスはバックグラウンドタスクとして実行され、
ユーザーは記事を読み続けることができます。 -
ダウンロードが完了したら、ユーザーに通知を送るか、
ダウンロードが完了したことを示すUIの変更が行われます!
パフォーマンスの向上
マルチコアまたはマルチプロセッサーシステムでは、複数のスレッドを同時に実行することで、
システムのパフォーマンスを向上させることが可能です。
I/O操作
一部のスレッドがI/O操作(ディスクへの書き込み、ネットワークからの読み取りなど)で
ブロックされている間も、他のスレッドは実行を続けることができます。
ただし、マルチスレッドには潜在的な問題も存在します。
複数のスレッドが共有データにアクセスすると、データの整合性が失われる可能性があります。
これを防ぐために、排他制御(mutexやsemaphoreなど)を用いて
データへのアクセスをコントロールする必要があります。
また、スレッドの作成と管理にはコストがかかるので、それも考慮する必要があります。
排他制御とは
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排他制御(Mutual Exclusion)は、共有リソースへの
同時アクセスを防ぐための手法の一つです。 -
これは、一度に1つのプロセスまたはスレッドだけが
そのリソース(例えば、データベースの特定のレコード、共有メモリ領域、ファイルなど)に
アクセスできるようにすることを意味します。 -
排他制御がないと、複数のプロセスまたはスレッドが同時に共有リソースに書き込むと、
データの整合性が破壊される可能性があります。 -
例えば、銀行の口座残高を2つの異なるプロセスが同時に更新しようとすると、
どちらの更新も正しく反映されない可能性があります。
このような問題を 「競合状態(Race Condition)」 と呼びます。 -
排他制御は、セマフォア、ミューテックス(Mutex)、
モニターなどの同期原理を用いて実装されます。 -
これらの原理は、リソースへのアクセスをコントロールし、
一度に一つのプロセスまたはスレッドだけがリソースを使用できるようにすることで、競合状態を防ぎます。
マルチスレッドをサポートしているさまざまなプログラミング言語
Java
Javaは最初からマルチスレッドをサポートして設計されており、
スレッドの作成、終了、同期などを直感的に制御できる高レベルのAPIを提供しています。
C++
C++11から標準ライブラリとしてマルチスレッドをサポートしています。
Python
Pythonではthreadingモジュールを使用してマルチスレッドを実装できますが、
GIL(Global Interpreter Lock)により同時に実行できるスレッドが一つだけなので、
CPUバウンドなタスクには向いていません。I/Oバウンドなタスクには有用です。
JavaScript(Node.js)
Node.jsはシングルスレッドで動作しますが、worker_threadsモジュールを使うことでマルチスレッドを実現できます。
これら以外にも多くの言語がマルチスレッドをサポートしています。
ただし、マルチスレッドの使用はコードの複雑性を増すため、慎重に設計と実装を行う必要があります。
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