[スクラム開発] Large Scale Scrum (LeSS) をやってみた
はじめに
こんにちは!
株式会社Goalsでエンジニアリングマネージャーをしている石井です。
Goalsではこれまで1プロダクト1チームの基本的なスクラム体制で開発していましたが、プロダクトの成長とともに複数チームでの協働が求められるようになってきました。
その中で私たちが取り組んだのが「Large Scale Scrum(以下、LeSS)」というフレームワークです。本記事では、実際にLeSSに取り組んだ背景や、導入してみて見えたこと・得られたことについてご紹介したいと思います。
なぜLeSSだったのか?
スクラムはもともと「1チーム1プロダクト」に最適化されたフレームワークです。
私たちは以前からスクラム開発に取り組んでいましたが、開発体制は次第に以下のような構成になっていきました。
- HANZO自動発注という1つのプロダクトに対して、2つの開発チーム(+PdMチーム)
- 複数のスプリントが並行
- チームごとのバックログで開発
すると、以下のような問題が発生してきました。
抱えていた課題
- チーム横断での開発プロジェクトにおいて、全体の進捗状況が見えづらい
- チーム間で設計認識の齟齬が起きやすく、手戻りが発生
- スプリントがズレていることで、タスクの完了タイミングに差が出てしまう
- 開発案件は増える一方なのに、開発リソースやプロセスの仕組み化が追いつかない
このような背景から、「1プロダクトに対して複数チームでスクラムを協働できる仕組み」が必要だと感じ、LeSSの導入を検討しました。
LeSSとは?
LeSSは、Scrumをベースに最大8チーム(1チーム最大8人)での開発を可能にするための、最小限の拡張フレームワークです。
特徴的な原則(抜粋)
- 1プロダクト、1バックログ、1プロダクトオーナー、1スプリント
- プロダクト全体思考:顧客は「プロダクト全体」を購入する
- チームでのリファインメント:顧客の課題理解をチーム全体で行う
- 仮説検証を繰り返し、継続的に改善する経験ベースのアプローチ
- 役割・プロセスをできる限り減らし、最大の効果を出す(More with LeSS)
実際にやったこと
私たちのLeSS導入における具体的な取り組みは以下の通りです。
1. バックログを1つに統合
チームごとにバラバラだったバックログを1つにまとめ、全チームが同じバックログをメンテナンスするようにしました。
これにより、
- 優先度が揃う
- チーム横断での課題認識が一致する
- 作業の重複や漏れが減る
といった効果が得られました。
2. スプリントを1つに統一
すべてのチームが同じスプリントサイクルで開発するようにしました。
- 同じタイミングでスプリントプランニング、レビュー、レトロスペクティブを実施
- チーム間の進捗が比較しやすくなる
- 共通認識が高まりやすい
3. 開発プロセスの標準化
LeSSの導入に合わせて、運用ガイドラインを策定しました。
- 開発ルールを明文化
- チーム間での意思決定プロセスを揃える
- プロダクト全体の整合性が保たれやすくなる
LeSS導入の効果と限界
LeSSによって以下の改善が見られました:
- バックログ統一により、案件の進捗が把握しやすくなった
- スプリントの統一で開発サイクルの一貫性が向上
- プロセス標準化による属人性の緩和
ただし、LeSS導入だけではすべての問題が解決したわけではありません。
残された課題
LeSSを導入しただけでは解決が難しかった根本課題もあります。
解決に至らなかった主な課題
- 技術的負債による開発スピードの停滞
- 優先順位の不安定さ
- 属人化された開発体制
- 不十分なテストや自動化による品質のばらつき
これらは、LeSSの範疇を超えた課題であり、今後の取り組みで改善していく必要があります。
現在の取り組みと今後
現在は以下のような取り組みを進めています:
- モジュラーモノリス化によるドメインオーナー制度の導入
- 開発プロセス標準の整備
- プロジェクト体制での改善活動
LeSSはあくまでも「協働の型」を与えてくれるフレームワークです。
そこに適切な技術基盤や組織的な運営が合わさってこそ、真の効果が出てくると実感しています。
まとめ
LeSSの導入は、私たちのチームにとって以下のような良い変化をもたらしました。
- バックログ・スプリントの統一による見通しの良さ
- チーム間の連携が取りやすくなった
- プロダクト全体を意識した開発体制の第一歩になった
ただし、LeSSは万能薬ではありません。チームの成長や技術的課題の克服は、別途地道な努力が必要です。
LeSSの導入を検討している方は、「何を解決したいのか」を明確にした上で、小さく試してみるところから始めるのがおすすめです。
参考資料
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