ビジネス要件をデータ分析基盤に落とすアプローチとその失敗談
はじめに
「ダッシュボードを作りたい」「顧客の行動を可視化したい」「〜なKPIを追いたい」
データエンジニアなら必ず受けるこんな依頼。しかし、いざ作り始めようとすると「具体的に何のデータを、どの粒度で、どんな切り口で見たいのか?」が曖昧で、結果として使われないダッシュボードやデータマートを量産してしまった経験はないでしょうか。
私は過去1年間で、この「ビジネス要件をデータ基盤に落とし込む」という課題に対して3つの異なるアプローチを実践しました。監督者として、ファシリテーターとして、そして要件定義を委ねる形で。それぞれに成功と失敗があり、最終的に「戦略からの合意形成」の重要性にたどり着きました。
この記事では、それぞれのアプローチで何がうまくいき、何が失敗だったのかを素直に共有します。同じような課題に直面しているデータエンジニアの方に、少しでも参考になれば幸いです。
課題:ビジネス要件がわからない = どんなデータ基盤が最適かわからない
分析基盤を構築する際、最初に直面するのがビジネス部門からの要件定義の曖昧さです。冒頭に挙げた抽象的な要求に対して、我々データエンジニアはどんなアプローチで手をつけるべきでしょうか?
この問題に対し、私が行った解決アプローチを3つ紹介します。
アプローチ1:ビジネス部門のMTGに監督的立場で参加
ビジネス部門の会議に参加し、データの観点から議論を見守る立場を取りました。
良かったこと:
- ビジネス部門との信頼関係構築ができた
- ビジネス課題の認識を深めることができた
悪かったこと:
- 場当たり的な対応になった結果、使わないデータマートが量産された
ニーズがあるたびに依頼・対応を繰り返していった結果・・テーブルの命名は限界を迎え、目的が曖昧になり、管理が大変になってしまいました。
これは弊社における失敗アプローチの一つだったと考えます。
作ってしまったものは履歴を洗い、使われていないものを一度壊して再定義する方針です。
アプローチ2:チームの一員として参画し、課題解決を実践
ビジネス部門に深く入り込み、共通の目標を持ってチームの一員になりました。会議には先導役として参加し、自らデータを起点とした課題解決のアプローチを実践しました。
良かったこと:
- ビジネス部門との信頼関係構築ができた
- KGI、KPIを自らで定義して構築した
- 後から汎用的に使用できる基盤が整った
- チームとしてデータドリブンな状態から脱することはなかった
悪かったこと:
- 属人的になることから逃れられない
- 再現性・継続性に疑問
アプローチ1の課題であった、「もっと深いところから握る」を実践したアプローチ2でした。まず最初の基盤を作るという観点では成功のアプローチであったと言えるでしょうが、誰にでもできるものなのか?別のチームでもできるものなのか?再現性には課題が残ります。
アプローチ3:すべての定義をビジネス部門に書かせる
ビジネス部門に要件定義を文書化してもらい、それを元に基盤を構築しました。
スキーマ:デジタル庁のダッシュボードガイドブック
良かったこと:
- ビジネス部門が改めて考えるきっかけになった
- 考える時間を与えたことで、要件が具体化されて返ってきた
悪かったこと:
- やりたいことが網羅的に描かれた結果、「重要度」という視点が落ちてしまった
このアプローチはビジネス部門の成長を促すために試験的に行ったものですが、一つ考えるきっかけにはなったのかなと思います。このアプローチ独自の課題点・・というわけではないですが、要望があったものをすべて作る!という方針をとってしまったので、もっとビジネス戦略の根幹から理解し、取捨選択はこちらで行う必要はあったのではないか?と反省しています。
こうすれば良かった:ビジネス戦略からの合意形成
以上3つのアプローチを通し、共通して思ったことは一つ。
データ部門とビジネス部門は戦略から共通認識を持つべきだと思いました。
- 事業戦略
- KGIから辿ったKPI
- North Star Metric
ここを握らずに場当たり的な対応をすると、負債が蓄積してデータエンジニアは疲弊します。
もしビジネス部門に戦略の具体がないなら、「一緒にやりませんか」と声をかけましょう。
データ部門は「依頼を受ける」という受け身の姿勢はやめて、ビジネス戦略を共に担うくらいの覚悟を持ち、ビジネス部門はデータ部門との連携を前提に戦略を立て、基盤の設計にあたる。
もちろん会社・チームの規模によりますが、一つの理想の形ではあると思います。
これからは、1〜3の解決アプローチにおいて最もうまくいった「アプローチ2」と、ビジネス部門の理解を促す「アプローチ3」を組み合わせ、持続的な仕組みとしてどうビジネス部門に提供するかがカギになると考えています。
How toは・・現状思いついていませんが、全社に展開していくために歩みを止めずに進めていきます。
Discussion
ビジネス部門との連携は大変そうですが、重要ですよね。
ブログにして頂いてありがとうございます!