我々はなぜ、15年動いた基幹システムの内製化に踏み切ったのか?
はじめまして。Business Success 研修オペレーション基盤チームの武内と申します 。普段はチームのテックリードとして、基幹システムの開発・運用・保守などを担当しています 。
さて、この記事を読んでくださっているエンジニアの皆さんに、一つ質問があります。
あなたの会社には、長年ビジネスを支え続けている、いわば「心臓部」のようなシステムはありますか?
私たちの会社にも、まさにそんなシステムがあります。しかし、実は…、2024年度から、その基幹システムを自分たちの手で作り替えていく「内製化」への取り組みを始めました 。
これは、決して簡単な道のりではありません。しかし、私たちがなぜ「今、内製なのか」、その決断に至った背景と、私たちが向き合うことになったリアルな課題について、お話ししたいと思います。
第1章:静かに広がり続けた、理想と現実のギャップ
内製化という大きな決断。その直接の引き金となったのは、事業の成長スピードと、システム開発の現実との間に生まれた、看過できないギャップでした。
事業部門からは、年々増加する研修ニーズに応えるため、「もっと早く、もっと多くの機能を」という期待が寄せられます 。具体的には、年間3〜4件の大規模な開発を求められていました 。しかし、当時の私たちの開発プロセスでは、年間1〜2件の開発を実現するのが限界だったのです 。
このギャップこそが、"今"この問題に取り組まなければならない最大の理由だと、私たちは考えています 。このままでは、事業の成長機会を逃してしまう。スピードと柔軟性の向上は、もはや待ったなしの急務だったのです 。
そして、このギャップを生み出していた背景には、長年システムが抱えてきた、3つの根深い課題がありました。
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老朽化
現在の基幹システムが本格稼働を始めたのは2009年 。以来15年間、事業を支え続けてくれましたが、主要なシステムは2031年にサポート終了(EOL)を迎えることが決まっています 。残された時間は、決して多くありません。
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複雑性
長年の改修を重ねた結果、システムは非常に複雑な状態にありました。例えば、20以上のデータベースが単一のSQL Serverインスタンス上で共存し 、互いに強く依存し合っているため、一つのシステムを修正すると、他の思わぬ箇所に影響が及ぶことも少なくありませんでした 。
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体制とプロセス
これまでメインの開発は、外部のベンダー様に深く依存していました 。これにより、いわゆる「ベンダーロックイン」の状態にあり、例えばユーザーから要望のあった画面の項目を一つ修正するだけでも、「ユーザー部門 → 私たち → ベンダー様」という三者間のフローを経る必要がありました 。このプロセスが、開発のスピード感を大きく損なう一因となっていたのです。
第2章:このままでは、未来を描けない
先ほど挙げた3つの課題を、もし私たちがこのまま放置していたら、どうなっていたでしょうか。おそらく、遠くない未来に2つの大きな壁にぶつかっていたはずです。
一つは、「事業機会の喪失」です。
世の中のニーズが目まぐるしく変わる中で、新しい研修サービスや機能改善のアイデアが生まれても、開発のスピードが追いつかなければ、その好機を逃してしまいます 。エンジニアとして、自分たちのシステムが事業成長の足かせになってしまうことほど、悔しいことはありません。
そしてもう一つが、「技術的負債の蓄積」という、エンジニアなら誰もが頭を悩ませる問題です。
老朽化し、複雑化したシステムに依存し続けることは、将来の改修コストを雪だるま式に増やしていくことに他なりません 。見て見ぬふりをすればするほど、将来の自分たち、そして未来にチームに加わってくれる仲間たちの負担が、どんどん大きくなっていくのです。
この状況を打開し、未来の事業成長を支えるためには、根本的な解決策が必要でした。
第3章:だから私たちは「内製化」の道を選んだ
そこで私たちが選んだのが、「内製化」という選択肢でした。
自分たちの手でシステムをコントロールすることで、これまでの課題を乗り越え、目指す未来を実現できると考えたからです。私たちが内製化によって手に入れたいものは、大きく3つあります。
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事業成長に追随できる、スケール性の確保
EOLの問題やシステムの複雑性に対応できる、新しい基盤を構築します 。これにより、将来の事業展開やサービス拡大にも柔軟かつ迅速に対応できる、変化に強い土台を築くことを目指します。
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チームに知識と経験が蓄積される体制
これまで外部に頼ることが多かった開発のスキルや、事業の背景を深く理解したドメイン知識を、継続的にチームの中に蓄積していきます 。特定の誰かに依存するのではなく、チーム全体でシステムのことを理解し、互いに成長していけるような開発組織が理想です。
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「外部依存の打破」による、開発スピードの向上
内製化の最も大きなメリットの一つは、スピード感です。ユーザーからの要望を、企画からリリースまで一気通貫で、素早く自分たちの手で形にできるようになること 。このサイクルを実現することで、事業への貢献度を最大化していきたいと考えています 。
エピローグ:この挑戦は、まだ始まったばかり
ここまで、私たちがなぜ「今、内製なのか」についてお話しさせていただきました。
もちろん、この取り組みは決して簡単な道のりではありません。15年間、事業の根幹を支え続けてくれた巨大なシステムに向き合うことの難しさを、チーム一同、日々実感しています。
しかし、同時に、この複雑な課題にチームで向き合い、一つひとつ解決していくプロセスは、非常に手応えのある、エキサイティングなものでもあります。
自分たちの手で事業の未来を創っていく。
そのための土台を、自分たちの技術で築き上げていく。
この挑戦は、まだ始まったばかりです。次回以降のテックマガジンでは、今回お話しきれなかった「内製の具体的な取り組みや、そこで得られた技術的な学び」など、より詳細な挑戦の記録をお届けできればと考えています 。
この記事が、未来の仲間と出会うきっかけになることを願っています。
ご清覧いただき、ありがとうございました。
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