AIモデルの学習プロセス
AI モデルの「学習」プロセスは、主に以下のような段階で行われます
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事前学習 (Pre-training)
- 目的: 一般的な言語理解と生成能力の獲得
- 方法:
- インターネット上の膨大なテキストデータ(ウェブページ、本、記事など)を収集
- 自己教師あり学習という手法を用いて、テキストの一部を隠し、それを予測する訓練を繰り返す
- 特徴:
- 非常に大規模なデータ(数百GB〜数TB)を使用
- 大量の計算資源(多数のGPUやTPU)を必要とする
- 数週間から数ヶ月かかることもある
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ファインチューニング (Fine-tuning)
- 目的: 特定のタスクや用途に適応させる
- 方法:
- 目的に応じた質の高いデータセットを用意(例:Q&A、翻訳、要約など)
- 事前学習済みモデルをこのデータセットで追加学習させる
- 特徴:
- 事前学習と比べて少量のデータ(数GB程度)で可能
- 比較的短期間(数時間〜数日)で完了
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RLHF (Reinforcement Learning from Human Feedback)
- 目的: 人間の価値観や倫理観を反映させ、より有用な応答を生成できるようにする
- 方法:
- モデルの出力に対する人間の評価データを収集
- その評価を報酬として、強化学習の手法でモデルを調整
- 特徴:
- 人間の好みや価値観を直接的に学習に取り入れられる
- 大規模な人的リソースが必要(評価者の確保と訓練)
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インコンテキスト学習 (In-context Learning)
- これは従来の「学習」とは少し異なりますが、Claude や ChatGPT の重要な特徴です
- 目的: ユーザーとの対話の中で、その文脈に応じた適切な応答を生成する
- 方法:
- ユーザーの入力や過去の対話履歴を「プロンプト」として利用
- そのプロンプトに基づいて、適切な応答を生成
- 特徴:
- モデルのパラメータは変更されない(従来の意味での「学習」は行われない)
- しかし、与えられた文脈に基づいて柔軟に振る舞いを変えられる
これらの AI に「データを食わせる」というのは、主に事前学習とファインチューニングの段階を指します。大量のテキストデータを用意し、それを効率的に処理できるよう整形した上で、学習アルゴリズムに入力します。
具体的なプロセスをステップバイステップで説明すると:
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データ収集: ウェブクローリング、書籍のデジタル化、専門文書の収集など
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データクリーニング:
- 重複の除去
- 不適切なコンテンツのフィルタリング
- フォーマットの統一化
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トークン化: テキストを単語や部分単語(サブワード)に分割
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データセットの作成: 学習用、検証用、テスト用にデータを分割
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バッチ処理: データを小さな単位(バッチ)に分割し、効率的に処理できるよう準備
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モデルへの入力: 準備したデータを学習アルゴリズムに順次投入
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学習の実行: データを用いてモデルのパラメータを更新
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評価: 検証用データセットで性能をチェック
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調整と繰り返し: 結果に基づいてハイパーパラメータを調整し、必要に応じてプロセスを繰り返す
この一連のプロセスは、専門的な知識と高度な計算資源を必要とするため、通常は AI 研究者や大規模なテクノロジー企業によって行われます。
Claude や ChatGPT のようなモデルの「学習」は、基本的にこのようなプロセスで行われています。ただし、これらのモデルは既に高度に訓練されているため、一般ユーザーが直接「学習させる」ことはできません。代わりに、ユーザーはプロンプトエンジニアリングと呼ばれる技術を使って、これらの AI の振る舞いを効果的に制御することができます。
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