社内データを活かす方法が分かる「データカタログという魔法」を読んで
2025年9月12日に発売された「データカタログという魔法」という本を読みました。

感想を3行でまとめる
- 技術の歴史から、データがどのような課題を抱えて解決してきたかが分かり、データカタログがなぜ注目されているかが分かる
- 会話形式で記載されており技術書特有な読みにくさがないため、専門的な知識をまだ持っていない人でも読める
- データカタログが成果に結びつくまでの道筋が見えてくる
技術の歴史について
2章 今さら聞けない、データ活用の基礎知識と専門用語、3章 データカタログで「こんなこともできるの!?」と思わず声が出た では、データ活用においてどのような歴史的な変遷があり、発展してきたかが記載されています。2006年以前での課題から現在に至るまで、どのような課題があって、それをどのように解決してきたかが整理されています。その流れで、データカタログがなぜ必要になってきたかを知れます。
2024年以降では、
データの活用が進むほど、管理・問い合わせ・更新への対応が追いつかなくなっていた
とあり、この課題を解決する存在がデータカタログであると理解できます。
「当時、直面していた課題」「支えとなった技術や考え方」「データに対する価値観の変化」の3点でまとめられており、既に知っている人もこれから学ぶ人も知識の整理に役立ちます。
データ関連の技術変遷は書籍で語られることは少ないため、最近になってデータ関連の仕事を始めた人にとっては非常に有用です。世の中の流れを知ることによって、将来に起こる課題が何か、なぜ今注目されているかを理解できるようになります。これは、当時の業界の雰囲気や課題感は現場にいた人のみが知っている内容です。これらの章を読むことで、業界の先人が持つ経験や知識に近づけます。
会話形式について
専門書の多くは技術的な体系によって書かれているのが一般的です。網羅性を担保するうえで有効ですが、ビジネスに活かすことを期待して読む読者にとっては、回りくどく感じてしまいます。この書籍では、3人の登場人物の会話を通じて、データカタログの活用が進んでいく様子が描かれています。
また、専門用語を日常的な言葉に例えて説明しているのが特徴的です。技術者が執筆する書籍は厳密な正しさを追求するため、誤解や語弊を招くような表現は避けられる傾向があります。そのリスクを大胆に背負って、比喩を使いながら説明しているので、初学者にとって優しい構成になっています。
経験豊富な人が新人に教えるときは、実際の現場でも比喩を用いながら専門用語の説明をします。その比喩は誰かに教えてもらう必要があり、現場に入って初めて知ることになります。登場人物である新人に対して教えるという形式で記載されているので、先輩に教えてもらう体験ができます。また、これから新人に教える立場の人は、どのような比喩を使えば伝わるかの参考になります。
例えば、以下のような比喩があります。
ETLツールは「食材を洗って切る準備係」みたいな存在
自分自身も経験が浅い時に、上記のような表現を先輩から聞いて、ETLやデータウェアハウスの理解度が上がった経験があります。
この本を通して、難解で理解に苦しんだ専門用語がすっと腹落ちできるでしょう。
データカタログの成果
開発したり整備したデータから生まれた成果は、他職種や上位レイヤーの人にとって理解しにくいです。それ故に、データ活用に対する期待や失望が繰り返されてきたように感じています。ビジネス書では成功事例を取り上げているが自社での取り組みにつなげるまでの道筋が遠いです。また、技術書では専門用語の解説や開発の方法が中心なので、「だから何?」みたいになってしまいます。
7章 データカタログで、経営陣に「DXの成果」を数字で見せたでは、データカタログを整備したことで、社内にどのような変化を起こせたかを学べます。データに基づいて行動があり初めて成果と言える様子や社内研修によって行動を変えられた様子が描かれており、データカタログが役に立つことが分かります。さらに、内製化やDX戦略に至る流れもあり、著者の深野さんがデータカタログのサービスである タヅナ を開発しクライアントに提供しているからこそ書ける内容に感じました。
最後に
著者の深野さんには個人的に親しくしてもらっており、この本を頂きました。学びの多い本なので、多くの人に届いて、データ業界がより発展していくことを願います。
から購入できます。 また、読者限定の特典もあります。
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