品質向上を目指しQA/QCチームを始めます
はじめに
こんにちは、株式会社ジーニー で、GENIEE SFA/CRM を開発している柴山です。
今回は、来期から新しくQA/QCチームを立ち上げるために整理した情報を共有させて頂きます。
AI生成によるイメージ画像(写っている資料に意味はございません)
なぜ今、QA/QCチームの構築が必要なのか
皆さん同様、私のチームが直面している課題の一つに 安定・安心の品質提供 というテーマがあります。事業成長に合わせたスピード重視の開発サイクルの中で、品質をいかに担保するかが大きな課題となっています。
その中で、私のチームでは過去1年間で以下のような課題に直面していました:
- 本番環境でのインシデント発生率の増加(問い合わせや発生事象をインシデント管理しておりますが、ここの母数が増加していく状態)
- 開発内容の属人化と知識共有の不足(特定のメンバーしか対応が出来ない状態)
- テスト工程の標準化・自動化の遅れ(開発サイクルに対応しきれていない状態)
- 品質に関する定量的な評価指標の欠如(振り返りや定量指標が取れていない状態)
これらの「障害が起きてから対応する」という後手に回った体制から脱却し、「事前に品質を作り込む」体制への転換が急務でした。そこで、QA/QCチームの構築プロジェクトを立ち上げることにしました。
QA/QCチームのコンセプト設計
現状を踏まえ、新しいQA/QCチームのコンセプトを以下のように仮置きしました。
QAとQCの役割の明確化
多くの開発チームで「QA」と「QC」を混同されることがあるかと思いますが、両者は明確に異なる役割を持つと考えています:
QA(Quality Assurance)の役割:
- 開発プロセス全体の見直しと改善
- テスト基準やプロセスのルール策定
- ガイドライン・プレイブックの作成
- 品質の見える化推進
QC(Quality Control)の役割:
- プロダクトの具体的なテスト実施
- 障害の再現と根本原因の究明
- テストカバレッジの定量化
- 品質評価指標(KPI)の測定
チームのミッションと目指す品質文化
新チームのミッションを「問題点の見える化と改善アクションの迅速実施を通じ、クリティカルな本番障害の根絶と開発プロセスの透明化を実現する」と定義しました。
(長いでしょうか・・・やりたい事が多いのでご容赦ください)
そして、このミッションを達成するために、以下の品質文化を開発チーム内で醸成していきます:
- 定量的・定性的な評価指標に基づくPDCAサイクルの運用
- 現場で自走するチームメンバーの育成
- 組織全体への品質意識の浸透
初期PoCフェーズの実践 (まず最初に)
コンセプト設計に基づき、実際にチームを立ち上げるための初期PoCフェーズを実施します。
メンバー選定と役割分担
初期チームは少数精鋭で構成し、以下の基準でメンバーを選定しています:
- 課題発掘、ヒアリング、情報収集能力が高い人材
- QAのバックグラウンドが多様なメンバー(SaaSでの経験、マルチテナントの知識、実開発経験など)
- 改善提案と実行力を持つ人材
ヒアリングと情報収集のプロセス
初期フェーズとなるPoCフェーズでは、まず現状の正確な把握が重要です。そこで以下のようなヒアリング計画を立てました:
これにより、各領域の課題を体系的に把握し、一元管理できる仕組みを構築します。
「見える化」資料の作成
ヒアリングや情報収集をする際には、データを基に以下のような「見える化」資料を作成していきます:
- 品質スコアカード:各プロダクト・機能ごとの品質スコアを可視化
- 障害マップ:障害の発生箇所と頻度を視覚的に表現
- テストカバレッジダッシュボード:自動テスト・手動テストのカバレッジを可視化
- 品質改善ロードマップ:短期・中期・長期の改善計画を時系列で整理
現状の課題とPain Pointを可視化する資料となります。これは単なる問題点の列挙ではなく、以下の要素を含む実用的な資料です:
- 各プロダクト領域ごとの問題点と共通課題のマッピング
- ダッシュボードやチャートを活用した定量評価
- タイムラインによる障害発生パターンの可視化
- 定性的なフィードバックの構造化
この「見える化」資料は、経営層への報告だけでなく、現場での改善アクションの基礎資料として活用します。
PoC期間のスケジュールと評価基準
PoCフェーズは2025年4月から3ヶ月間で実施する予定です:
(無理やり Mermaid形式で書いてます・・・)
評価基準としては、以下のKPIを仮設定しています:
- 障害再発率の低減(目標:30%減)
- テストカバレッジの向上(目標:主要機能80%以上)
- ヒアリング結果の網羅性(目標:全チーム・主要機能カバー)
- 「見える化」資料の有効性(内部レビューでの評価スコア4/5以上)
運用体制と組織連携の構築
PoCフェーズの成果を踏まえ、本格的な運用体制については以下のように構築していく予定です。
QA/QCチームを中核とした品質運用体制
組織横断の連携体制
品質向上は一つのチームだけでは達成できません。QA/QCチームが孤立した存在にならないよう、以下のような組織横断の連携体制を整備します:
-
各プロダクトチームとの定例連絡会:
- 週次で品質状況のレビューと課題共有
- 改善施策の進捗確認
-
情報共有プラットフォームの整備:
- 社内ドキュメントに品質関連ナレッジベースを構築
- Slackチャンネルでのリアルタイム情報共有
-
部門間フィードバックループ:
- QA/QCチームからの改善提案
- 開発チームからの実装フィードバック
- 運用チームからの障害情報フィードバック
特に重要なのは、QA/QCチームが「品質警察」ではなく「品質パートナー」として機能することです。開発チームと協力して問題を解決する姿勢が大切な事だと考えています。
効果測定と改善プロセスの確立
取り組みの効果を測定し、継続的に改善するためのプロセスを確立します。
KPIと定量的指標の設定例
これらの指標は社内ダッシュボードでリアルタイムに可視化し、毎月のレビュー会議でレポートしていきたいです。
PDCAサイクルの実践
効果的な改善を継続するために、以下のようなPDCAサイクルを回していく予定です:
-
Plan(計画):
- ヒアリングやモニタリング結果を踏まえた改善目標設定
- 障害原因分析に基づくアクションプラン策定
-
Do(実行):
- 改善策の実施と標準プロセスへの組み込み
- テスト手法や障害対策のルール改定
-
Check(評価):
- KPIや定量・定性評価による効果測定
- 改善策実施後の効果検証
-
Act(改善):
- レビュー結果を基にした新たな改善策の策定
- 継続的なプロセス改善
今後の展望:全社的な品質文化の醸成へ
初期の成功体験(結果次第だと思いますが)を基に、将来的には以下のような展開を計画しています:
全社的な品質向上の実現 (最終的なゴールのイメージ)
- プロダクト・サービスの品質モニタリング体制の高度化
- リアルタイムな品質状況把握と迅速な改善の実現
- 社内勉強会やワークショップを通じた品質意識の向上
他事業部への水平展開 (必ず実現させること)
- 開発部門以外(PdM/Designer、カスタマーサクセス、プロジェクトチームなど)への品質管理手法の展開
- 各部門の特性に合わせたカスタマイズ可能なQA/QCプロセスの提案
- 部門間の連携強化による全社的な品質文化の醸成
まとめ:品質は文化であり、プロセスである
QA/QCチームの導入を通じて、開発チーム全員に学んで欲しい事は「品質は単なるテスト活動ではなく、組織文化とプロセスの問題である」ということです。
効果的な品質管理体制の構築には以下の要素が不可欠です:
- QAとQCの役割の明確な区別と連携
- 定量的・定性的な評価指標に基づく継続的改善
- 組織全体での品質意識の共有と自走型文化の醸成
- 効果的な組織間連携と情報共有の仕組み
これらの要素を組み合わせることで、単なる「テストチーム」ではなく、組織全体の品質向上を牽引する「品質文化の推進者」としてのQA/QCチームを構築することができると考えています。
皆さんの組織でも、ぜひこのアプローチを参考にしてみてください。品質向上の旅は、一朝一夕には完成しませんが、正しい方向性と継続的な改善によって、確実に成果を上げることができるはずです。
(上記の結果が出ましたら、また改めて共有させてください)
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