AIツールと攻めの技術選定
株式会社GENDA FE/BE開発部のshinnokiです。
この記事はGENDA Advent Calendar 2025 シリーズ1 20日目の記事です。
はじめに
ソフトウェア開発において、2025年は Cursor や Claude Code をはじめとしたAIツール/AIエージェントによって大きく環境が変わった1年だったかと思います。
自分にとっては、新規開発のプロジェクトに関わる機会があり、React Server Components (RSC) および Next.js App Router を本格的に取り入れた1年でもありました。[1]
ちょうど2年前のアドベントカレンダーで、自分は「RSCは無理して取り入れる必要ないんじゃないか」という旨を書いていました。[2]
このときと比較するとライブラリ等のエコシステムは格段に整ったものの、一人ではなくチームで開発することを考えたときに、そもそも理解するべきことが多く学習コストが高いという問題は変わらず存在するように個人的には感じています。
それにもかかわらずRSCを活用していこうとなったのは、AIツールを使えば学習コストの問題は比較的低く見積もれると判断したからです。
これはつまり、AIツールによって単に開発効率が高まるだけでなく、技術選定も影響を受けているということです。
そこで昨今のAIツールの進化が技術選定に具体的にどのような影響を与えそうなのかを、自分なりに考えてみました。
AIツールによって変わったこと
新しい技術を取り入れやすくなった
AIツールの進化によって一番変わったと感じるのは、「新しい技術を試す」こと自体のハードルが下がった点です。
以前は、まずドキュメントや書籍で概念を理解し、サンプルコードや記事を探し、手元で動かしてみて……という順番になりがちで、技術検証そのもののコストがありました。
一方でAIツールを使えば、完全に理解しきる前でも、いきなり現実の課題に近い形でプロトタイプを作って検証できます。
結果として、キャッチアップの順序が「理解してから触る」よりも「触って検証しながら理解する」に寄り、導入判断までの距離が縮まったと感じています。
またこれは「プロジェクトメンバーが慣れているから」というバイアスを一定取り払う効果もあります。経験者の有無に引っ張られすぎず、技術選定の議論が要件や制約に寄りやすくなりました。
常に新しい技術が正解というものでは決してありませんが、ある程度トレンドに乗ってベストプラクティスに従っておくと、もし将来移行することになってもAIが学習できる情報量や事例が多いため対応しやすいと思われます。
オンボーディングコストが減った
前節と似たような話ではありますが、チームとして新しい技術を取り入れるだけでなく、新規メンバー、特にインターン生やジュニアメンバーのオンボーディングにおいても効果を感じています。
実際に自分のプロジェクトにおいてもインターン生が立ち上げから関わってくれていたのですが、参考になるコードが少なくタスクの粒度も荒い初期においても Claude Code を駆使して実務で活躍してくれました。
従来であれば「学習→実装」の流れだったものが「とりあえず実装→学習」という流れも可能になったことで、手厚いオンボーディングを用意せずとも自己学習できることが増えたと感じています。
リファクタリングがやりやすくなった
「やることは明確だけど単純に作業量が多い」というようなリファクタリングタスクは、AIエージェントの得意分野の一つです。
以前はタイミングを見つつインターン生やジュニアメンバーを巻き込んで手分けして進めることが多かったのですが、こういったタスクは積極的にAIに任せていくべきだと思っています。
一方で、これまでこうしたタスクを手分けしていたのは単なるリソース確保のためだけでなく、その過程で背景や分からないことを調べることで学習につながるという側面もありました。
ジュニアメンバーの成長の機会をどのように設計するかは今後の課題ですが、それでも以前のように手分けするのではなく、例えばジュニアメンバーが主担当としてAIエージェントを使って遂行し、その際のリスクを減らすための仕組みづくりにチームとして取り組むのが正しい方向性だと思っています。
心がけたいこと
AIは責任をとってくれない
AIに任せた結果の技術選定でうまく行かなかったりトラブルが起きたとしても、責任を取るのは人間です。
その時点では最新で魅力的に見えた技術が、いまいち普及せず知見がたまらないままレガシー化してしまった、というのは特に辛いパターンです。
単に「流行っているから」「AIが推しているから」でとどまらず、言語やフレームワークの将来性を見極める審美眼は引き続き求められます。
とはいえいくら頑張っても、将来のことに絶対はありません。
攻めた技術選定のリスクを適切に管理するには、タスクや実装レベルの話(戦術)だけでなく、組織やプロダクトを取り巻く前提(戦略)にも目を向けて考える必要があります。[3]
自分のモノにする
AIツールを使えば誰でも同じ結果に行き着くので、専門知識は要らなくなるのではと言われることもあります。
しかし少なくとも現時点においては、AIツールの使用者が一定の知識や判断軸を持つことによってチェックポイントのように核心に近い地点からスタートでき、その結果より早く、より深い結果につながると感じています。
AIツールによって得られた結果に対して、その場限りで満足するか、それに対して考察を加え自分のモノにするかの姿勢の差が、日々の積み重ねとして大きな差になると思っています。
まとめ
改めて振り返ると2025年は、ソフトウェア開発に携わる人であれば誰もがAIツール/AIエージェントの影響を無視できなくなり、不可逆的な変化が訪れた1年だったように思います。
きっと来年も今年と同じか、それ以上の変化が訪れるでしょうが、従来のやり方にとらわれすぎずに常にアンラーニングしていく姿勢を大事にしたいです。
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