短期間でアイデア創出とプロトタイピング「デザインスプリント」体験
短期間でアイデア創出とプロトタイピング「デザインスプリント」体験【GDGoC】 イベントレポート
はじめに
本記事は、2025年5月10日に大阪大学にて開催された GDG on Campus Osaka 主催「デザインスプリント体験」イベントのレポートです。
イベント概要
- 開催日時:2025年5月10日(土)11:00〜17:00
- 会場:大阪大学 豊中キャンパス サイエンススタジオA
- 主催:GDG on Campus Osaka
- 参加者数:現地参加36名/オンライン参加26名
- 配信:YouTube Live(講義部分のみ)
デザインスプリントとは
Google Venturesが提唱した、短期間で課題の特定からプロトタイピング、ユーザーテストまでを実施する課題解決フレームワークです。本イベントではその一連の流れを体験しました。
参考書籍:『デザインスプリント ―プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド』
Opening(11:00〜)
開会の挨拶では、GDGoCの紹介や、当日の流れ・注意事項の説明が行われました。会場は和やかな雰囲気で始まりました。
サントリーさんにドリンクのご提供もいただきました!
サントリーさんご提供ありがとうございます!!これからもクラフトボスいっぱい飲みます!!
デザインスプリント(前半:11:15〜12:30)
講師:安藤 幸央 氏(GDE / 株式会社エクサ)
デザインスプリントについての紹介
本セッションでは、Googleが実際に活用している「デザインスプリント」手法を説明いただきました。デザインスプリントは、個人の集中時間とチームの多様性を活かした時間を交互に組み合わせ、短期間でアイデア創出から意思決定までを行うフレームワークです。
安藤さんはUXデザイナーで、Civic TechやUXに関わる仕事、本の執筆などもされています。
スタートアップが失敗する一番の理由は「人々が望んでいないものを作ってしまうこと」だそうです。
それを防ぐために、作る前に失敗に気づく方法としてデザインスプリントがあると紹介されました。
また、デザインスプリントは専門の人だけでなく、誰でも使えるように作られた手法であることも説明されました。
実際にデザインスプリントが使われた事例も紹介されました。
- GmailのUI改善(Jake Knapp氏)
- YouTubeのUI(John Zeratsky氏)
- LEGOのブランディング(Braden Kowitz氏)
また、今日のデザインスプリントグループワークのポイントをいくつかご紹介いただきました。
- 時間を区切ることによる締め切り効果
- 付箋とシールを使うことによって、立場に左右されずアイデアを公平に評価する。
- 「質より量」の精神で、ポストイットに簡単なものでもいいのでたくさんアイデアを出す。
- 定期的に休憩をはさむことで疲れる前に休む。
グループワーク1: 自己紹介
グループでメンバー間の自己紹介を行いました。
グループ内では常に同じ発表順で発表するというところが印象的でした。
発表項目
- 名前
- 所属
- 大阪でおすすめのおいしいもの一つ
グループワーク2: 日常の悩みを共有
仕事でも学校でもバイトでも生活でも今週あった課題/問題をメンバー間で共有しました。(20分程度)
- 悩み
- ミス
- 懸念
- 面倒だったこと、調べたこと
- 何度も使ったアプリ
次に、赤、黒シールを用いた課題への投票を行いました。(10分程度)
- 赤シール:自分が「一番〇〇だと思うこと」主観
- 黒シール:一般的に考えて「一番〇〇だと思うこと」客観
(同じ案に何票も入れても良い。)
またポイントとして、一個に絞れるといいが、絞らなくてもいい。面白い課題を選んだ方がいい。(AIが活躍しそうな分野が面白いかも)ということが挙げられました。
昼休憩(12:30〜13:30)
お弁当が提供され、参加者同士の交流が盛んに行われました。
デザインスプリント(後半:13:30〜16:20)
Googleの技術の紹介
午後パートのスタートとしてGoogle技術(NotebookLM、Google AI Studio)の簡単な紹介がありました。
NotebookLM
- ハルシネーションを起こさない根拠に基づいたLLM
- 意外にも半分ぐらいの人がNotebookLMの利用経験あり
- 内容を音声にしてしゃべってくれる機能もあります。
- ラジオみたいに、「えーっと」とか「あの」とかそういう言葉を自然に入れてくれます。
- しゃべり言葉で聞く方が理解しやすいかも?
Google AI Studio
- Geminiのパラメータを操作して、面白くないけど正確度が上がるみたいなことを設定できます。
Design Sprint通信
安藤さんのNewsletter:- デザインスプリントはこのぺんてるのペンを使おう!シールはこのシール!みたいな情報も載ってます。
グループワーク3:How Might We からアイデアをビジネスへ
このセッションでは、「どうしたら〜できるだろうか?」という形で、理想の状態を考える「How Might We(HMW)」の問いを考えるグループワークを行いました。
(例)どうしたら行ったことのない美味しいお店を知ることができるだろうか?
どうしたら買い物を忘れずに安く買えるだろうか?
どうしたら損得なしで気軽に相談できるだろうか?
など、解決策ではなく“問いそのもの”をこのフェーズでは考えました。問いが出そろった後は、再びドット投票によって関心のある問いを選びました。
アイデアをビジネスとして考える
次に、アイデアをビジネスとして成立させるアプローチに関する講義パートがありました。
例として紹介されたのが、富山の薬売りに学ぶ「先に商品を置いておき、後から使った分だけ支払う」モデルです。
この仕組みは、現代の「オフィスグリコ」にも応用されており
- フードロス削減
- 新商品の反応を調べるマーケティング
- 利益率の確保と販売機会の拡大
といった効果を生んでいるそうです。
おやつタイム
おやつとしてナッツ&クランベリーを食べて少し休憩しました。
グループワーク4: 解決策を考える
問いに対する解決策を出す際には、次のような工夫が行われました。
- 一歩引いて広くとらえる。
- ゴールから逆算して考える。
- オズボーンのチェックリスト(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって)を使って発想を広げる。
出た案は、縦軸を「価値」、横軸を「実現の難しさ」としてホワイトボード上に付箋を貼ることでマッピングしました。
ハッカソンなら「簡単で価値が高いもの」、企業であれば「難しいが価値が高いもの」など、状況に応じて選択肢を絞るということが紹介されました。
グループワーク5: 課題解決をしてくれるAIのキャラを考える
次に、考えた課題を解決してくれる「AI」のキャラ設定を考えるワークを行いました。(10分)
AIの設定としては、A4用紙を四分割してAIキャラの見た目|性格、入力項目、避けること|役目|質問例、回答例を記載してメンバーに発表しました。
発表者以外のメンバーは発表直後に投資家になった気分で7枚のお金を自分のメンバーに投資します。興味深いポイントが、後で投資金額を変更することはできないということです。ひと目見たプレゼンでいくら投資するのか判断する必要があります。
Google AI Studioを使ったプロトタイピング
Google AI Studioを用いて先ほどのAIを実際にプロトタイピングしました。また、Google AI StudioのTipsとして以下のことが紹介されました。
- Temperatureパラメータを高めに設定すると創造性が上がり、低めにすると堅実な応答になる。
- grounding with google searchをオンにすることで最新情報を使える。
- 先ほどA4の紙に記入した項目がそのままプロンプトに使えるので、文字にして入力する。
最終発表
各チームで一番投資額の多かった人が以下の内容について発表
- サービス名(即席で)ダジャレ or 英単語
- プロトタイプの説明
- このサービスで提供される新しい価値は?
評価指標
H: 幸福度
E: 関わり
A: 採用
R: 継続
T: 目標達成
グループA
- 図書館の本とか手元にない本からトレーディングカードにして飾りたい。
安藤さんのコメント: トレーディングカードはつい集めたくなるから良さそう
グループB
- 着ガエル
- 子供が着替えを実行してくれない。
- 子供の着替えを推進する四コマ漫画のカードを生成してもらう。
グループC
- タスクガール
- タスク管理アシスタント
- ユーザーの目標とかタスクを聞き出して、進捗状況とか計画的に進んでいるかを確認して評価する。
安藤さんのコメント: 曖昧なことがあったら情報を補完できるようにしてもいいかもしれない。
グループD
- タス君
- 人間はモチベーションが大事
- 自分好みの女の子/イケメンがモチベーションを高めつつタスク管理をしてくれる。
安藤さんのコメント: モチベーションは人それぞれだけど、タスクとか心理状態に合わせてキャラを変えられるのがAIのいいところ
グループE
- AIコーチング君
- 本音を引き出すにはどうすればいいか?
- 対話形式で深堀するというのを会社でやっていてコーチングアシスタントを作った。
安藤さんのコメント: コーチングってすごく費用が掛かるし、相手がAIだと気兼ねなくいつでもどんな内容も相談できる。
グループF
- ポカちゃん
- IQ3な地球外生命体がコミュニケーションをアシストしてくれる。
安藤さんのコメント: これこそは、temperatureは2.0でも良さそう。たまに頭が良くなったら人に刺さるかも
グループG
- スケジュール組んだもん
- ユーザーの性格とかを元にスケジュールを調整してくれるAI
- やんなきゃいけないこととかを伝えておくと、明日の予定とタスクを教えてくれる。
- イヤホンしながら歩いてるときに音声でつたえてくれたりすると嬉しい。
安藤さんのコメント: 子供むけにも良さそう。タスク上手くいったときに褒めてくれたり、タスクが上手くいかなかったときにもアシストしてくれそうでいい。
まとめ
- デザインスプリントの本質は個人でのワークを分けてやってからみんなで意見を統合すること。
- 時間制限を設けることで高い生産性を生み出すことができる!
- ドット投票を使うことでノイズを除いて良いアイデアを評価することができる。
- 毎回同じ順番で全員が発表することで発表しない人がうまれない。
Closing(16:50〜)
今日のアイデアを実際に形にするには?
- 1pager: アイデアなどの革新的な情報を一ページにまとめた文章
- Design Document: 製品設計に関する詳細な情報を記載した文章
Join us!
もし今日のアイデアを実際に形にしたい!と思った人は是非Discordのチャンネルで話しましょう。
Google Cloud主催のAI Agent Hackathonに一緒に参加しましょう!
今後のイベントの案内
- Cline hands on (Vide coding workshop)
- 基本理解から始める画像認識アプリ開発会 in 2025
締めの挨拶では、イベントの振り返りと感謝の言葉、アンケートの案内が述べられました。
Networking(17:00〜)
終了後は1時間ほどネットワーキングを行いました。大学・業種を越えて交流が行われました。
懇親会
- 場所: ごん兵衛 石橋店
- 時間: 18:00-21:00
- 参加費:
- 学生 2500円
- 社会人: 3500円
感想・学び
- どのグループもたくさん案が出ていて素晴らしかったです。
- ドット投票は、価値の高い付箋にドットが張られているので、他のグループのホワイトボードを確認する時にも重要な情報がどこなのかがひと目でわかるという利点もあるということが分かりました。
- タスク管理/時間に関するテーマと、コミュニケーションに関するテーマが多かったことが興味深かったです。(AIによって、あらゆる行動の時間効率が上がっているはずなのに、時間が足りないのはなぜでしょうか?)
- 後半に連れて休憩の頻度を上げているのが、安藤さんのワークショップにおける工夫として感じられました。
おわりに
GDGoC Osakaでは今後も、初心者から参加可能な実践的なイベントを継続して開催予定です。興味のある方は、ぜひ次回ご参加ください!
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