DXってなに?
はじめに
会社のDXを推進していくにあたり、知っているつもりでも言語化が難しいDXについてまとめてみた。
DXとは
DXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること[1]
簡単に言うと
DXとは、データとデジタル技術を活用して 社会の変化に対応すること。
DXの重要性
変化への対応
- 顧客の変化: 例えば今ではネットで物を注文すれば、すぐに手に入ることが当たり前。企業はその期待に応えるために、迅速で正確なサービスを提供しなければならない。
- 競争環境の変化: IT技術の発展により、新規事業の立ち上げや国際ビジネスが容易になった。新たな競争相手に対応しないとライバルに負けることになる。
- 優先事項の変化: SDGs、働き方改革、リモートワークなど、取り組むべき課題が変化。これららに対応するためには新しい技術の導入が不可欠になっていく。
DXの目的と効果
- 業務効率の向上: ただ速く仕事をするだけでなく、無駄を減らして効率的に進めることが重要。これにより、同じ時間でもより多くのことが達成できる。
- 働き方の変革: 人口減少や地方の人材不足に対応し、デジタル技術で効率的な働き方を実現。
- 将来の成長: DXを導入することで、将来の企業成長を支える。
このように、DXはただの技術導入ではなく、変化に対応しながら企業をより強く、効率的にし、未来に向けて成長させるための重要な取り組みである。
デジタルとは?
デジタル化とDX化は違う。
まず、デジタルとは何かを理解するために、アナログと比べてみる。
- アナログ:アナログ時計のように時間を隙間なく連続的に示す。
- デジタル:デジタル時計のように時間が「10:00」のように、数字(情報)を区切って表現している。
デジタル化とは?
それだと「アナログの方が自然で良さそう」と思うかもしれないが、デジタル化には多くの利点がある。デジタル化とは、アナログデータをデジタルデータに変換することで、その目的は、データをコンピュータで扱いやすくすることにある。
デジタル化の利点は次の通り。
- データの共有が容易: インターネットを通じて、世界中の人々と迅速にデータを共有できる。
- 大量のデータを記録できる: スマートフォンなどのデバイスに大量の情報を保存できる。
- 高速な計算が可能: コンピュータは人間よりも迅速かつ複雑な計算を行える。
デジタル化を進めることで、業務を効率化し、コストを削減することができる。
デジタル化とDXの違い
デジタル化は、アナログの情報をデジタルに変えることで、作業を効率化すること。例えば、紙の書類を電子ファイルに変えることがデジタル化の一例。しかし、それだけでは「デジタル化」にとどまる。
一方、DXは、単なるデジタル化にとどまらず、社会の変化や新しいニーズに対応してビジネスを進化させることを意味する。デジタル技術を使って、今までとは違う新しいサービスを提供したり、働き方そのものを変えたりするのがDX。
経済産業省の定義
経済産業省は、デジタル化とDXの流れを以下の3段階で定義している。
- デジタイゼーション: アナログ情報をデジタル化し、処理速度や伝達速度を上げる。
- デジタライゼーション: デジタル化した情報を使って業務効率を上げ、サービス価値を向上させる。
- デジタルトランスフォーメーション(DX): デジタライゼーションの結果として、ビジネスモデルや企業文化を変革する。
DXの目的
DXの目的は、一言でいえば、顧客や社員にとってより魅力的な会社になること。
DXの具体的な目的
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顧客にもっと価値を提供すること(CX)
- カスタマーエクスペリエンスの向上: DXによって新しいサービスを提供したり、個々の顧客に合わせたサポートを提供することで、顧客にとっての価値を高める。これにより、顧客満足度が高まり会社の成長にもつながる。
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社員にとって働きやすい環境を作ること(EX)
- エンプロイーエクスペリエンスの向上: DXによって単純作業(ノンコアビジネス)が自動化されると、社員はもっと魅力的な仕事(コアビジネス)に取り組むことができ、働きやすい環境が整う。これにより、社員は仕事に価値を感じ、会社への満足度が高まる。
デジタル化とDX化の例
デジタル化とDXの違いを理解するために、書類管理の効率化を例に見てみる。
-
デジタル化: 紙の書類をスキャンして電子化し、クラウド上に保存することで、物理的なスペースを減らし、検索や管理を容易にすることがデジタル化である。具体的には、書類をデジタルファイルに変換し、キーワード検索で素早く情報を見つけられるようにすること。
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DX: 同じ書類管理の効率化でも、その結果、リモートワークが可能になり、従業員がどこからでもアクセスできるようになり、仕事の柔軟性が増し、生産性が向上するなどの大きな成果が得られる場合、これがDXである。単なる効率化だけでなく、業務プロセス全体を見直し、社員にとって働きやすい環境を提供することを目指すのがDXといえる。
DXパターン
DXにはさまざまな取り組みがあり、それぞれをパターンに分類することができる。ここでは、DXを大きく分けて紹介し、それぞれの代表的な事例を見ていく。
DXの分類
DXは大きく「業務改革」と「事業改革」の2種類に分類できる。
業務改革のDX
業務改革のDXはさらに3つに分けられる。
- 生産性のDX: サービスや製品の品質向上や働き方改革につながる取り組み。
- 意思決定のDX: 意思決定のスピードや正確性を向上させる取り組み。
- 顧客理解のDX: 顧客サポートの品質向上や新サービス、製品開発につながる取り組み。
事業改革のDX
事業改革のDXは2つに分けられる。
- 既存事業のDX: 既存業界で新しいサービスを立ち上げる取り組み。
- 新規事業のDX: 新しい業界で新規事業を立ち上げる取り組み。
業務改革DXと事業改革DXの違い
具体例を通してこれらの違いを理解する。
業務改革DX
例えば、製造ラインを効率化して稼働を削減する施策は、CX(カスタマーエクスペリエンス)やEX(エンプロイーエクスペリエンス)の向上には繋がらないため、DXではなくデジタル化といえる。
一方、製造ラインを効率化して販売価格を下げることでCXが向上する場合、これがDXに該当する。ただし、この場合でも、商品を売ってお金をもらうというビジネスモデル自体は変わっていない。このようなDX施策を「業務改革DX」と定義する。この業務改革DXは、経済産業省のレポートなどで「守りのDX」とも呼ばれている。
事業改革DX
次に、売り切り型のサービスをサブスクリプションモデルに変えたりする施策は、ビジネスモデル自体を変えている。これを「事業改革DX」と定義する。ただし、新しい施策を始めるだけではDXとは言えず、それによってCXが向上することが重要である。
事業改革DXはさらに2つに分けられる。
- 既存業界の事業改革DX: 例えば、売り切りサービスをサブスクリプションモデルに変える施策は、同じ業界でビジネスを行いながらお金の取り方を変えるもの。
- 新規業界の事業改革DX: 例えば、自動車メーカーが電気自動車の普及に合わせて充電インフラ事業に進出する施策は、今までとは異なる新しい業界に乗り出すもの。この事業改革DXは、経済産業省のレポートでは「攻めのDX」と呼ばれている。
DXの思考法
ここからはDXを成功させるためには、どのような思考法があり、どう役立つのかをまとめる。
ロジカル思考
ビジネスの現場では、これまでロジカル思考(論理的思考)が主流であった。ロジカル思考は、論理的に正しい方法で課題を解決するための基本的な考え方である。
例えば、製造業の現場では、ロジカル思考を使って工程の効率化やコスト削減を追求し、最適な生産プロセスを構築してきた。これにより、生産性を向上させ、企業の競争力を高めることができる。
デザイン思考
デザイン思考は、顧客の感じ方やニーズを重視する思考法である。顧客の視点から物事を考え、彼らに何を感じてほしいのか、どのように行動してほしいのかを中心に据える。
例えば、ヘルスケア業界では、患者の不安や期待に寄り添い、それに応えるサービスを提供することが求められる。ロジカル思考では見えにくい感情や体験にフォーカスすることで、より良い顧客体験を提供することができる。
アート思考
アート思考は、自分の感性や直感を活かして新しいアイデアを生み出す思考法である。自分が何を伝えたいのか、どのような独自の視点を持っているのかを重視する。
例えば、ファッション業界では、デザイナーが自身の創造力を発揮し、ユニークなデザインを提案することでブランドの価値を高めている。ロジカル思考だけでは生まれにくい、個性的で魅力的なアイデアを形にすることができる。
思考法の組み合わせ
これらの思考法は、ロジカル思考と対立するものではなく、むしろ補完し合う関係にある。ロジカル思考で合理的な解決策を見つけることは重要だが、それに加えてデザイン思考やアート思考を取り入れることで、より多様なニーズに応じた創造的なアイデアを提案することが可能になる。
アジャイルの本質とDX推進の重要性
DXプロジェクトを推進する際、「アジャイル」という言葉の理解が大切。アジャイルについて簡単にまとめる。
アジャイルとは?
アジャイルとは、一般的に「少しずつ作ること」と理解されがちだが、本質は仮説検証を繰り返しながら進めるプロセスを指す。
良くないアプローチ
車を作る過程を考えてみる。
タイヤ、フレーム、ボディを順番に作っていくアプローチでは、確かに少しずつ作っているが、この方法には大きな問題がある。
タイヤやフレーム、ボディが個別に完成しても、それ単体では役に立たず、最終的に車が完成するまで顧客はその価値を実感することができない。結果として、車が完成した時に「これは求めていたものではなかった」となるリスクがある。
良いアプローチ
アジャイルの考え方では、まずスケートボードを作る。車を作る目的は「速く移動できること」。この目的に対して、スケートボードは歩くよりも速く移動できるというニーズを満たしている。
顧客がそれを喜べば、次にキックボード、さらに自転車と、徐々に速く移動できる手段を提供していく。こうして、段階的に価値を提供しながら進めていくのがアジャイルの本質。
アジャイルの2つのポイント
- 使えるものを早く提供する:まずはシンプルでも機能するものを提供し、顧客のフィードバックを得る。
- 成果物ではなく価値に注目する:提供したものがどのような価値を生むのかに重視し、次のステップを決定する。
MVP(Minimum Viable Product)とPoC(Proof of Concept)
アジャイルでは、まずMVP(Minimum Viable Product:最小限の機能を持つプロダクト)を作り、仮説検証する。
これが受け入れられれば、次のステップに進む。この一連のプロセスをPoC(Proof of Concept:概念実証)と呼ぶ。
まとめ
DXは、企業が未来に向けて進化するための強力なエンジン。単なる作業の効率化を超えて、顧客に新しい価値を提供し、社員にもっと魅力的で働きやすい環境を作ること。それがDXの本質。
時代の変化に対応し、ビジネスを次のステージへ導くためのDXは、企業にとって避けては通れない挑戦だと思うので、私も企業で新たな価値を生み出し、未来を切り拓くために、DXの力を最大限に活用していきたい。
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経済産業省による定義 ↩︎
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