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新聞記事タイトルでみる保守・リベラル

2023/04/09に公開

はじめに

一般的に読売新聞、産経新聞は保守、毎日新聞、朝日新聞はリベラルと言われています。保守だと政権寄りで、リベラルだと政権に批判的な傾向があるとも言えます。でも実際のところ新聞によってどのくらいの違いがあるのか気になって、分析してみることにしました。データは、ニュース検索サイトCeek.jpのRSSで取得したニュース記事タイトルを使いました。

分析するデータ

2023年1月から2月にかけてCeek.jpのRSSフィードでニュース記事タイトルを収集しました。収集したデータの内、「朝日新聞」「産経新聞」「毎日新聞」「読売新聞」かつ分類が「政治」の記事タイトル2232件を分析対象としました。

分析方法

Ceek.jpから取得したニュース記事タイトルを、KH Coderで分析しました。KH Coderは、計量テキスト分析またはテキストマイニングのためのフリーソフトウェアです。記事タイトルを形態素解析して、形態素(抽出語)に分割し、分析に用います。はじめに対応分析でデータ全体における各新聞の保守・リベラルの位置関係を確認してみました。そして、共起ネットワークからいくつか主要なトピックを抽出し、それをもとにコーディングを行いました。最後に、コードと新聞社のクロス集計をもとにバブルチャートを作成して新聞間の違いを比較しています。

KH Coderでは日本語形態素解析器としてMeCabとChaSenが選択できますが、今回はMeCabを使い、辞書はデフォルトのIPAdicではなくmecab-ipadic-NEologdを使用しています。

分析に際しては、「統一選」「統一教会」「首相秘書官」「衆院予算委」をひとつの語として強制抽出するようにしました。例えば「統一選」の統一と「統一教会」の統一とでは意味が違います。形態素解析で「統一」という語で抽出されて2つの意味が混在した状態だと、分析に支障が出る考えたからです。他の語も同様の理由で強制抽出しています。また、今回の分析では「代表」という語を分析対象から除外しました。XX党代表という文脈で多く使われており、テキストの内容的に関連がなくても、党名や党首名間の関連が高くなってしまうためです。

分析

対応分析

以下の図が対応分析の結果です。横軸の成分1でみると、左下には「中国」「尖閣」といった、保守層が注目しそうなトピックに関連する語が布置されています。右側中央あたりには「差別発言」「統一協会」といった語が布置されています。「差別発言」は首相秘書官による差別発言が問題になっていることで、統一協会とともに、野党が与党を批判するトピックと言えます。以上から、成分1は保守・リベラルの軸とみてよさそうです。保守寄りと言われている読売新聞が横軸の0付近に布置されています。

抽出語 × 新聞社の対応分析

共起ネットワーク

対応分析で各新聞の位置づけを全体の中で確認してみましたが、トピックをしぼって確認してみたいと思います。そのためにまず、共起ネットワークでどのうようなトピックがあるか探りました。今回は、赤枠の語に注目してみます。

抽出語の共起ネットワーク

コーディング

共起ネットワークの結果をもとにコーディングをしました。共起ネットワークに表出している語に加えて、KH Coderで抽出されている語の中で関連する語も加えています。KH Coderでは、特定の条件の語や語の組み合わせをコードとして記述したファイルを作成して、コードごとに集計などができます(コーディングルール・ファイル)。

今回作成したコードは以下の4つです。中国は、尖閣諸島や台湾など、中国を脅威とみなす内容で、保守層が注目しそうな内容と考えられます。首相秘書官差別発言は、首相秘書官の差別発言を伝える内容。統一教会は、自民党議員と統一教会との関係が問題視されている内容で、ともに野党が政権与党を批判するトピックと言えます。防衛増税は、防衛費増額のために増税することについて与野党で意見が分かれているトピックです。

コード名 コーディング
中国 ( 中国 | 中国側 | 中国本土 ) & ( 尖閣 | 気球 | 台湾 )
首相秘書官差別発言 ( 首相秘書官 | 秘書官 ) & ( 差別 | 差別発言 | 差別的 )
統一教会 統一教会
防衛増税 ( 防衛 | 防衛費 ) & ( 増額 | 増税 | 財源 | 増 )

コードと新聞社のバブルチャート

KH Coderで作成したコードの出現数を新聞社ごとに集計し、その出現割合をバブルチャートにしてみました。

コードと新聞社のバブルチャート

産経新聞で中国関連のトピックを多く取り上げている一方で、首相秘書官差別発言や統一教会関連のトピックは少なくなっています。リベラルの朝日新聞、毎日新聞ではその逆の傾向にあり、保守系・リベラル系の新聞社で違いがはっきりでています。防衛増税については、どの新聞社もそれなりに取り上げています。このトピックは、与野党で賛否が分かれているので、保守・リベラルどちらの新聞社も取り上げていると考えられます。

まとめ

保守寄りと言われている読売新聞、産経新聞と、リベラル寄りと言われている毎日新聞、朝日新聞のニュース記事タイトルを分析してみました。産経新聞では保守寄りのトピックを多く取り上げており、毎日新聞、朝日新聞では政権与党に批判的なトピックを多く取り上げていました。これは、おおかた予想通りの結果となりました。その一方で、保守系と言われている読売新聞は他の新聞社ほど取り上げるトピックに偏りがなく、保守とリベラルの中間と言える結果となりました。

最後に、話題のChatGPTに読売新聞は保守かリベラルか聞いてみました。

読売新聞は、日本の主要な新聞の一つであり、保守的な傾向を持つとされています。ただし、一方的な保守的な報道をするわけではなく、中立的な立場を取りつつ、保守的な観点からの記事も多く掲載されることが特徴です。また、時代に合わせた改革や社会問題にも取り組む姿勢も見られます。ただし、一部の批評家からは、政府寄りの報道姿勢を指摘されることもあります。

ChatGPTの回答の正確性について疑問視さえていますが、少なくとも「中立的な立場を取りつつ」とある点は今回の結果と一致しています。

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