LlamaIndex で ChatGPT に専門知識を組み込んでみた
こんにちは、初めましての方は初めまして。株式会社 Fusic の瓦です。春ですね。
2022 年 12 月に ChatGPT が突如現れてから、大規模言語モデル (LLM) を使ったアプリやライブラリがたくさん出てきました。ChatGPT はとても流暢な文を生成出来るのですが、訓練に含まれていない情報(専門的な知識や学習後に出た情報)について生成出来ないという弱点があります。その弱点を克服するものの一つとして、LlamaIndex というライブラリが公開されています。この記事では、その LlamaIndex を試してみたいと思います。
事前準備
LlamaIndex で ChatGPT を使用するためには、OpenAI の API KEY が必要です。そのため、まずは OpenAI のアカウントを作って API KEY を作成しておきましょう。作成方法は簡単で、ログイン後に
- 上のプロフィールアイコンをクリック
-
View API Keys
をクリック -
+ Create new secret key
をクリック
で発行できます。
※ 発行後に API key generated というポップアップが出てきますが、ここ以外で API KEY を見ることは出来ないので、コピーして保存するなりしてください。まあ簡単に作成、失効できるので忘れたら作り直せば済みますが…
LlamaIndex を試してみる
LlamaIndex は、自分の持っているデータや専門知識などの外部データを LLM に簡単に組み込めるライブラリです。似たようなライブラリとしては LangChain がありますが、LlamaIndex の方がより簡単に触れそうなのでこちらを使用します。
LlamaIndex には、指定したディレクトリ以下のファイルをデータとして読み込むクラス SimpleDirectoryReader
が提供されています。以下のコードで、データの読み込みおよびインデックスが作成できます。
from llama_index import GPTSimpleVectorIndex, SimpleDirectoryReader
from llama_index.llm_predictor.chatgpt import ChatGPTLLMPredictor
documents = SimpleDirectoryReader("/path/to/directory").load_data()
index = GPTSimpleVectorIndex(documents=documents, llm_predictor=ChatGPTLLMPredictor())
index
作成は Open AI の Embeddins の API に投げて結果を取得しています。そのため、データ量に応じて時間がかかります。
これで準備は終了です。とても簡単ですね。インデックスは毎回作成していると時間とお金がかかってしまうので、一度作成したら save_to_disk
関数を使うことで json 形式でローカルに保存しておくことができます。また、ローカルに保存したインデックスを読み込むことも出来ます。
# インデックスの保存
index.save_to_disk("index.json")
# インデックスの読み込み
index = GPTSimpleVectorIndex.load_from_disk("index.json", llm_predictor=ChatGPTLLMPredictor())
query
関数の引数として文字列を渡すと、クエリを投げることが出来ます。今回はインデックスの作成、読み込み時に llm_predictor=ChatGPTLLMPredictor()
を引数として与えているため、OpenAI の Chat completion を使用して返答を得ています。
res = index.query("質問文")
これだけで、外部データを反映した返答が得られます。
実際に試してみる
最終的なディレクトリ構成は以下のようになります。
.
├── data
│ └── blog.txt
├── index
│ └── index.json
└── main.py
今回は Fusic の記事の中から、
を使用して ChatGPT にクエリを投げてみたいと思います。
まず始めの準備として、上の記事をコピペし、テキストファイルとして data/blog.txt
に保存します。LlamaIndex には Web ページをデータとしてインデックスを作れるクラス SimpleWebPageReader
も提供されているのですが、html
タグなどがノイズとなるため、今回はテキストファイルとして保存しました。
テキストファイルを保存した後に main.py
を実行します。コードは以下になります。OPENAI_API_KEY
を環境変数として定義しておかないといけないので注意してください(export OPENAI_API_KEY=<ここを自分の API KEY にする>
を実行しておくと楽です)
import os
from llama_index import GPTSimpleVectorIndex, SimpleDirectoryReader
from llama_index.llm_predictor.chatgpt import ChatGPTLLMPredictor
def main():
pwd = __file__
pwd_dir = pwd.rsplit("/", 1)[0]
index_dir = os.path.join(pwd_dir, "index")
index_file = os.path.join(index_dir, "index.json")
if not os.path.exists(index_file):
os.makedirs(index_dir, exist_ok=True)
documents = SimpleDirectoryReader(os.path.join(pwd_dir, "data")).load_data()
index = GPTSimpleVectorIndex(
documents=documents, llm_predictor=ChatGPTLLMPredictor()
)
index.save_to_disk(index_file)
else:
index = GPTSimpleVectorIndex.load_from_disk(
index_file,
llm_predictor=ChatGPTLLMPredictor(),
)
while True:
inp = input("聞きたいことを教えてください。\n>>>")
print(index.query("日本語で答えてください。" + inp))
print()
if __name__ == "__main__":
main()
上のコードでは、実行するファイルと同じ場所に data
ディレクトリがあることを想定しています。また index
ディレクトリを作成し、その中に作成したインデックスを index.json
として保存します。
実行すると、
聞きたいことを教えてください。
>>>
と出てくると思うので、質問文を入力すれば答えが返ってきます。上のコードの query
関数で「日本語で答えてください。」と書いているのは、日本語で質問文を入力しても英語で返ってくることがあるからです。
記事からしか分からない質問を二つ試してみます。
例えば「登場する人物を教えてください」と聞いてみると
聞きたいことを教えてください。
>>> 登場する人物をリスト形式で教えてください
先進技術本部 先進技術部門 機械学習チーム ハン ボムソク
技術開発本部 技術開発第二部門 山路 直人
先進技術本部 先進技術部門 機械学習チーム トシュコフ テオドル
技術開発本部 技術開発第一部門 光岡 郁穂
と出力されました。登場人物としては少ない(インタビュアーの佐藤さんがいない)ですが、ChatGPT にはない知識を答えられているという点では成功です。
また、「山路直人について教えてください」と聞いてみると
聞きたいことを教えてください。
>>> 山路直人について教えてください
山路直人は、フロントエンドもRubyも人一倍勉強していると思われ、社内のMTGでもしっかり発言していて存在感があると述べられています。また 、RubyKaigiのような大きな技術のカンファレンスで登壇したいという目標を持っているとも述べられています。
と出力されました。ちゃんとインタビューの内容を元に出力できています!
GPT-4 を試してみる。
ChatGPTLLMPredictor
は、デフォルトでは gpt-3.5-turbo
を使用していますが、最近では GPT-4 が使えることが発表されました。LlamaIndex でも以下のように使用するモデルを指定することで GPT-4 を使用することが出来ます。
from langchain.chat_models import ChatOpenAI
# model_name で `gpt-4` を指定
llm = ChatOpenAI(temperature=0, model_name="gpt-4")
... # 省略
index = GPTSimpleVectorIndex(
documents=documents, llm_predictor=ChatGPTLLMPredictor(llm=llm)
)
実際に試して、どのように変わるか試してみます。
聞きたいことを教えてください。
>>> 登場人物をリスト形式で教えてください。
- ハン ボムソク(先進技術本部 先進技術部門 機械学習チーム)
- 山路 直人(技術開発本部 技術開発第二部門)
- トシュコフ テオドル(先進技術本部 先進技術部門 機械学習チーム)
- 光岡 郁穂(技術開発本部 技術開発第一部門)
- 佐藤(採用担当)
ちゃんと登場人物が 5 人になっています! gpt-3.5-turbo
ではほぼ本文から抜き出したような結果が出力されていたのですが、こちらでは所属が名前の後ろに括弧つきで表示されています。佐藤さんに関しては本文で「採用担当の佐藤」と書かれているだけなのですが、他の人の表示に合わせてリスト形式で書かれており、この記事から分かる情報としては申し分ない結果が出力がされています。
さらに、同じように「山路直人について教えてください」と聞いてみます。
聞きたいことを教えてください。
>>> 山路直人について教えてください
山路直人さんは、フロントエンドやRubyの技術に熱心に取り組んでおり、社内のMTGでもしっかり発言し、存在感があります。また、元気で体力があり、同僚たちと一緒に最後までやり切る姿が印象的です。今後の目標として、RubyKaigiのような大きな技術カンファレンスで登壇することを目指しています。
と出力されました。こちらは gpt-3.5-turbo
に比べると「元気で体力があり、同僚たちと一緒に最後までやり切る姿が印象的」との情報が追加されています。しかし、これは山路さんが他の三人について言及した内容なので、この記事から分かる山路さんのこととしては不正確です。文体としてはこちらの方が個人的に好きなのですが、これは好みが分かれそうです。
まとめ
この記事では LlamaIndex について、簡単な使い方を示し、実際に試してみました。自身の持っているデータを参考にして ChatGPT が持っていない知識についても文の生成が出来るので、パーソナライズしたチャットボットなどが手軽に作成できそうです。どうやってローカルのデータを使用しているのかなど、LlamaIndex の詳細な動作については、次回(やる気と時間があれば)書きたいと思います。
Discussion
とてもわかりやすい記事で、大変勉強になりました、ありがとうございます。
一点質問させていただけないでしょうか。
自身の環境では、index.query()を実行した際の返答が、256トークン以内に切り詰められてしまうのですが、同様の現象はかわらさんの環境では起きているでしょうか?
Index作成時に、以下のようにServiceContextを用いてnum_outputを指定してみたりしているのですが、
依然としてquery結果は256トークン以内のままになっています。
コメントありがとうございます!
質問に関してですが、私の環境では再現できませんでした(長い文を出力させるために、試しにあるアルゴリズムを python で実装したコードを出力させたところ、1000 トークン近くの出力が出てきました)
一応長さの制御方法として
の
max_tokens
とnum_output
の二カ所がありそうなんですが、どちらを設定しても長いとなりました。もうちょっと調べてはみますが、とりあえず参考までに…
返信ありがとうございます!
いただいたコード、とても勉強になります。
max_tokensの設定は試したことがなかったので、トライしてみます。