【マルチエージェントの基礎】アンサンブル学習とLLM
こんにちは、MLエンジニアのふるです
今回はkaggle Masterで得たアンサンブル学習の知見をLLMやマルチエージェントシステムでどのように活用できるかについて概念的な話をまとめようと思います。
kaggleなどには日常的に活用しているバイアス・バリアンスを踏まえたアンサンブル学習について少し深掘りした内容を説明していこうと思います。
バイアス・バリアンス分解とアンサンブル学習について
1. バイアス・バリアンス分解とは?
機械学習モデルがうまく機能しない原因は、大きく分けてバイアスとバリアンスの2つで考えることができます。
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バイアス (Bias):モデルが単純すぎて、データ本来の特徴をうまく捉えられない「偏り」のことです。
- 例:「犬は全部小さい」と決めつけてしまうような浅い理解。
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バリアンス (Variance):モデルが学習データに過剰に影響され、少し条件が変わると答えもコロコロ変わってしまう「不安定さ」のことです。
- 例:同じ犬の画像を少し見せ方を変えただけで、「これは猫かもしれない」と迷うような不安定な反応。
アンサンブル学習は、このバイアスとバリアンスをうまく抑えて、安定した答えを得るための手法です。kaggleなどの上位入賞者はこのバイアスとバリアンスのバランスをとることで、最適なアンサンブルを実現するような技術が高い人が多い傾向にあります。
2. アンサンブル学習の概念
アンサンブル学習とは、「1つのモデルに任せきりにせず、複数のモデルに相談して、その意見をまとめる」考え方です。
- 日常例:1人に質問するよりも、何人かに聞いてまとめたほうが、より信頼できる答えに近づくことがあります。アンサンブル学習は、それをコンピュータモデルでやっているようなイメージです。
- 目的:1つのモデルだけだと偏り(バイアス)が強くなったり不安定(バリアンス)になったりしやすいのですが、みんなで話し合うことで補い合えるのです。
なぜLLMマルチエージェント学習で重要なのか?
LLM(大規模言語モデル)を組み合わせたマルチエージェント学習では、1つのモデルに全てを任せるのではなく、複数のモデル(エージェント)を動かして、それぞれの強みを活かしながら意見を統合します。このとき、アンサンブル学習の考え方はとても役立ちます。
- 1つのLLMが苦手な領域を別のLLMが補ったり
- 複数のLLMの回答をまとめてより安定した応答を得たり
することが可能です。
3. マルチエージェントによるアンサンブル効果
アンサンブル学習の代表的な方法には、バギング、ブースティング、スタッキングがあります。マルチエージェントの世界では、これらが「LLMエージェント同士の役割分担や組み合わせ方」に対応します。日常的なイメージとLLMでの例を交えて説明します。
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バギング (Bagging):
- 同じモデルに何回も質問して、毎回微妙な条件を変えたりして答えを集め、それらを平均したり多数決をとったりして最終回答を決めます。
- 日常例:「この質問に対して、A君に5回聞いてみて、出た答えをとりまとめてみよう。」
- LLM例:同じモデル(例:gpt-4)に何度も似た質問を投げて結果をマージする。
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ブースティング (Boosting):
- 最初は適当な答えを出し、それを見ながら「ここが間違ってる」「ここを直そう」と何度も修正を繰り返して、より良い答えに近づけます。
- 日常例:「A君が出した答えをB君が見て直し、それをC君がさらに調整して…」と手直しのリレーを続ける感じ。
- LLM例:一度出た回答に対し別のエージェントがフィードバックを与えて改善していくフロー。
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スタッキング (Stacking):
- 複数の異なるタイプのモデルに最初から質問して、それらの回答を最後に別のモデル(メタモデル)がまとめて、より良い最終答案にします。
- 日常例:「A君は歴史が得意、B君は数学が得意、C君は文章構成が上手…それぞれに答えを考えてもらってから、D君がその答えをうまくまとめる。」
- LLM例:「claude3.5 sonnet」「gpt4o」「gemini-exp-1206」などいろいろなLLMに同じ質問を投げ、最後に「o1」と呼ばれるエージェントがそれらをまとめるような仕組み、言わばMixture of Agents[1]を作る。
まとめ
アンサンブル学習は、1つのモデルに頼らず複数モデルの知見を活かして、バイアスやバリアンスの問題を和らげる強力な手法です。特にLLMを使ったマルチエージェント学習では、一つのモデルの偏りや不安定さを他のモデルが補えるため、より信頼性の高い結果を得ることができます。
ただし、通常のアンサンブル学習と比べて、マルチエージェントの世界では「どうやって答えを統合するか」を工夫する必要があります。単純な多数決ではなく、それぞれの得意分野や回答の質を考慮して、まとめ役のエージェントがうまく統合することで、本来の効果を最大限に引き出せるのです。最近ではそのまとめ役としてo1などのロングコンテクストを認識できるモデルがあり、期待が高まっている状態です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
概念的な内容だけでなく、具体的なエージェント例も今後は記事にしていこうと思いますので、何卒よろしくお願いします。
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