.NET 5 への移行 - WCF をどうすべきか?
こんにちは!
.NET 5 (もしくは2021年にリリースされる .NET 6) へ、移行を検討しているお客様の声をお聞きするようになりました。
その中でも、 Windows Communication Foundation (以下 WCF) をどう取り扱うべきか?についてお話したいと思います。
.NET 5 でサポート対象外となった WCF
既にご存知の方も多いかと思いますが、.NET 5 は、WCF はサポートされていません。
Web Forms、Windows Communication Foundation (WCF) サーバー、Windows Workflow を含め、もっと "レガシ" な API のいくつかはサポートされません。これらは、.NET Framework のみに留まることになります。.NET 5 内で同じ機能性を実現したい場合は、これらの API を次のように移植することを検討してください。
ASP.NET Web Forms => ASP.NET Blazor
WCF サーバーおよびリモート => gRPC
Windows Workflow (WF) => Core WF (github.com/UiPath/corewf)
以下ページより抜粋
そのため、現行システムで WCF をご利用している場合は、何かしらの対策が必要となります。
移行の選択肢
比較表
ざっくりですが、これから紹介する移行先についての比較表です。
移行先 | 移行コストの低さ | 信頼性 | 概要 |
---|---|---|---|
ASP.NET Core Web API | ★★★ | ★★★ | MS が支えているテクノロジー |
gRPC | ★☆☆ | ★★★ | Google がメインサポート |
CoreWCF | ★★☆ | ★☆☆ | 正規版のリリースがまだ、将来性に期待 |
ASP.NET Core Web API (REST-API)
まずは、ASP.NET Core Web API です。
WCF と同じく Microsoft 社が提供しているテクノロジーであるため、移行コストを低く抑えることができます。
WCF で利用していたパラメータクラスも、ほぼそのまま流用することが出来ます。
例えば、WCF で通信するパラメータクラスは以下のように定義しますが、ASP.NET Core WebAPI で取り扱うパラメータも、WCF と同様にクラス定義で実現でき、また、API として公開するためのメソッドの定義も、WCF とほとんど同じ形式で実装することが出来ます。
WCFの場合
<b>パラメータクラス</b>
[DataContract]
public class CompositeType
{
bool boolValue = true;
string stringValue = "Hello ";
[DataMember]
public bool BoolValue
{
get { return boolValue; }
set { boolValue = value; }
}
[DataMember]
public string StringValue
{
get { return stringValue; }
set { stringValue = value; }
}
}
<b>API の定義</b>
public class Service1 : IService1
{
public CompositeType GetDataUsingDataContract(CompositeType composite)
{
if (composite == null)
{
throw new ArgumentNullException("composite");
}
if (composite.BoolValue)
{
composite.StringValue += "Suffix";
}
return composite;
}
}
ASP.NET Core WebAPI の場合
<b>パラメータクラス</b>
public class WeatherForecast
{
public DateTime Date { get; set; }
public int TemperatureC { get; set; }
public int TemperatureF => 32 + (int)(TemperatureC / 0.5556);
public string Summary { get; set; }
}
<b>API の定義</b>
[ApiController]
[Route("[controller]")]
public class WeatherForecastController : ControllerBase
{
[HttpGet]
public IEnumerable<WeatherForecast> Get()
{
var rng = new Random();
return Enumerable.Range(1, 5).Select(index => new WeatherForecast
{
Date = DateTime.Now.AddDays(index),
TemperatureC = rng.Next(-20, 55),
Summary = Summaries[rng.Next(Summaries.Length)]
})
.ToArray();
}
private static readonly string[] Summaries = new[]
{
"Freezing", "Bracing", "Chilly", "Cool", "Mild", "Warm", "Balmy", "Hot", "Sweltering", "Scorching"
};
private readonly ILogger<WeatherForecastController> _logger;
public WeatherForecastController(ILogger<WeatherForecastController> logger)
{
_logger = logger;
}
}
gRPC
Google 社が開発した新しい通信技術です。
Microsoft でもサポートされている通信技術であり、Visual Studio からテンプレートを選択することで、簡単に作成することができます。
WCF と比較すると、パラメータ定義の方法が大きく異なり、 .proto ファイルというファイルでパラメータを定義します。
つまり、WCF からの移行の場合、全てのパラメータを再定義する必要があります。
そのため、ASP.NET Core Web API と比較すると、コストが多く掛かります。
<b>パラメータ定義</b>
syntax = "proto3";
option csharp_namespace = "GrpcService1";
package greet;
// The greeting service definition.
service Greeter {
// Sends a greeting
rpc SayHello (HelloRequest) returns (HelloReply);
}
// The request message containing the user's name.
message HelloRequest {
string name = 1;
}
// The response message containing the greetings.
message HelloReply {
string message = 1;
}
<b>API の定義</b>
public class GreeterService : Greeter.GreeterBase
{
private readonly ILogger<GreeterService> _logger;
public GreeterService(ILogger<GreeterService> logger)
{
_logger = logger;
}
public override Task<HelloReply> SayHello(HelloRequest request, ServerCallContext context)
{
return Task.FromResult(new HelloReply
{
Message = "Hello " + request.Name
});
}
}
CoreWCF
最後の選択肢としては、 WCF を .NET 5 でも取り扱う事が出来るように出来る Core WCF というライブラリです。
注意点としては、正式リリースが未だされておらず (v0.2.1が最新 - 2021年8月時点)、まだ実際に導入するべきタイミングではありません。
WCF サーバーのサポートが行われないことは、一部の人にとって間違いなく残念なことです。しかし、Microsoft では最近、MIT オープン ソース ライセンス下でソフトウェアをリリースすることを決定しました。このソフトウェアはコミュニティの管理下に入ることになります (github.com/CoreWCF/CoreWCF を参照)。.NET Framework を独立してリリースするにはまだ行うべき作業がたくさんありますが、その間にも、クライアント側の WCF API は利用可能です (github.com/dotnet/wcf を参照)。
以下ページより抜粋
今後、開発が進み、現行の WCF と同様の使い方ができる可能性はありますが、現段階では、あまり推奨できる選択肢ではありません。
まとめ
それぞれの移行先を、あらためてまとめると以下のようになります。
・ASP.NET Core Web API .. 移行コストをかなり抑えることが出来る、使い慣れたマイクロソフトテクノロジーで開発できる
・gRPC ... 移行時に伴いコストは増えるが、最新の通信技術を採用したい場合におすすめ
・CoreWCF ... まだまだ移行計画が先であり、正式リリース後にタイミングがあえば検討の余地あり
また、今後も WCF を包括する .NET Framework のサポートは継続して行われますので、今すぐに移行する必要はありませんが、いずれ対応すべきタイミングが訪れます。
その際に、慌てて対応を行うよりは、早めに計画し、準備を進めていきたいですね。
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