😺

円グラフが有効なケースを考察してみる

2024/02/07に公開

嫌われる円グラフ

何らかの集団や組織、量の構成比をビジュアライズする場合、一般的な手段として円グラフはよく用いられますが、項目間の比較がしにくいことなどを理由にデータアナリストやデータサイエンティストからは敬遠されがちです。

Tableauの視覚的分析のベストプラクティスでも次のように触れられています。

一部と全体の間の関係を分析することがあります。 このような場合にはよく円グラフが使
われますが、次の 2 つの理由から円グラフはお勧めできません。 1) 人の視覚系はパイ
の見積もりに不向きであり、2) すぐ隣りのパイ同士としか比較できないからです。

Tableauが特別に円グラフを嫌っているわけではなく、他にも複数の書籍が円グラフはミスリードを招きやすく活用シーンが少ないことに触れています。

よく語られる円グラフのデメリットは下記の通り

  • 隣り合っているものしか比較できない
  • 角度を比較するのが困難
  • 色を使わないと表現できない
  • スペースを大幅に取る
  • 数が多いものを比較することができない

言われてみれば納得ですし、そのほとんどがバーチャート等の他の手段で代替できるため、確かに利用価値は低そうです。
一方で、「絶対に使ってはダメということではない」とか「円グラフが適しているときには使ってもいい」というようなことも言われるのですが、ここまでボロボロに書かれる円グラフを敢えて使うべきケースってあるの?と疑問に感じたので円グラフが有効なケースを考えてみたいと思います。

過半数を超えたか否か

以下のバーチャートは2020年の米国大統領選挙でアラスカ州における政党別得票率を表したものです。敢えて具体的な得票数や得票率のラベルやリファレンスラインは表示していません。

一見しただけでアラスカ州では共和党(REPUBLICAN)が民主党(DEMOCRAT)に勝利したことはわかると思います。では、「共和党が過半数を獲得したかどうか」という問いについてはどうでしょうか?この視覚情報のみから判断することはできますか?即答できる人は少ないのではないでしょうか。

これを円グラフで表現したものが下記です。

どうでしょうか?共和党が過半数を取得したことが一目瞭然ではないでしょうか?

もちろんリファレンスラインというひと手間を加えればバーチャートでもわかりやすくビジュアライズすることができます。

実際の大統領選挙の結果は多くの州の結果を同時に表示するので、このリファレンスライン付きのバーチャートがよく使われます。とはいえ、特定の状況下においては円グラフがバーチャートよりも直感的に情報を伝達できるケースがあることが分かったと思います。

円グラフを使うべきシーン

円グラフの方がバーチャートよりも優れている点がありそうだ、ということが分かったところでではどういった点が優れているのか、どういったメッセージを伝えたい場合に円グラフが有効なのかを整理したいと思います。

バーチャートの場合、50%がどこに当たるのかが直感的に分からなかったわけですが、円グラフの場合は50%がどこに当たるか直感的にすぐ理解することができました。
つまり、円グラフのデメリットに「角度を比較するのが困難」というものがありますが、垂直、水平な線との比較は容易である、という例外が存在するのです。これを利用すれば、スタートが0のとき限定ですが、25%、50%、75%を超えたか否かの判定で円グラフは有用といえます。
ということは、25%、50%、75%が何らかの重要な意味を持つとき、ある要素がそれを超えることができたかどうかを伝えたいようなシーンでは円グラフがバーチャートよりも活躍するということはあるかもしれません。

身近なところでいえば以下のようなケースでは円グラフでの表示が活きそうです。

  • 選挙で特定の政党が単独で議席の過半数を取得することができたか
  • 株主総会の決議事項の承認において、賛成票が出席株主の過半数を超えたか
  • 法案の可決において、賛成票が出席議員の過半数を超えたか

構成要素の単純な大小や時系列での変化、多くの結果を並べて表示するようなケースではバーチャートの方が有利なので円グラフの利用シーンは多くはないかもしれません。しかし、円グラフが有用なケースもを具体的に整理しておけばここぞというところで円グラフを活用できそうです。

Discussion