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n8nとDifyを比較

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以下では n8n(エヌエイトエヌ)Dify を横並びで比較します。両者とも「ノーコード/ローコードで高度なワークフローを構築できるOSSプロダクト」ですが、n8nは汎用オートメーションツール、DifyはLLM アプリ開発・エージェント運用に特化した“LLM-Ops プラットフォーム”という立ち位置です。両者の狙い・強み・料金体系・ユースケースの違いを押さえることで、選定の観点がクリアになります。


1. 目的とポジショニング

項目 n8n Dify
コア使命 SaaS/API 自動化・ETL・バックオフィス業務の省力化 🡒 Zapier/Make の OSS 代替 LLM アプリを短時間で開発・運用 🡒 LangChain/LlamaIndex+監視 UI を統合
得意領域 1,000+ノードで「外部サービス間を繋ぐ」汎用ワークフロー Prompt Orchestration、RAG パイプライン、Autonomous Agent、App ストア配信
想定ユーザー テクニカルチーム(エンジニア or データ担当) AI プロダクト開発者・プロンプトエンジニア・MLOps チーム
開発母体 n8n GmbH(独ベルリン) LangGenius Inc.(米)
OSS ライセンス Apache 2.0(一部 Community ノードは MIT) Apache 2.0

2. アーキテクチャとデプロイ

n8n

  • セルフホスト:Docker/Kubernetes/単一バイナリでデプロイ可。実行・ワークフロー数ともに無制限。(n8n Community, n8n)
  • クラウド版(n8n Cloud):SaaSとしてホスティング。Starter 2.5k 実行/月、Pro 10k 実行/月など複数プラン。(n8n, AffMaven)
  • 最新リリース:2025-07-07 時点で v1.82.x 系。パフォーマンス改善と新ノード追加が続く。(n8n Docs)

Dify

  • セルフホストdocker-compose up -d で起動。PostgreSQL と ArrowDB を同梱し、ワンクリックで RAG・Agent・UI まで立ち上がる。(GitHub)
  • クラウド版(dify.ai):Team/Sandbox ほか従量課金で推論コストを内部クレジット化。大規模利用は Enterprise 契約で VPC デプロイ可。(Dify, Top AI Tools List - OpenTools)
  • プラグインホスティング機能:Cloud 上で独自プラグインをマーケット配信できる。(Dify)

3. コア機能比較

3.1 n8n の主機能

  1. ノードベース UI:ドラッグ&ドロップでループ・分岐・エラー処理を組める。(n8n)
  2. 統合数 1,000+:Salesforce・Slack・BigQuery から Python スクリプト実行まで。v1.0 で Python ノード正式追加。(n8n Blog)
  3. AI ノード:OpenAI/Anthropic ほかを標準サポートし、チェーン実行やファイル埋め込みを GUI で扱える。(n8n Community, n8n Community)
  4. 実行ログとデバッグ:ステップ単位でデータプレビュー/リトライ。Webhook 直結で即時実行も可。(n8n)

3.2 Dify の主機能

  1. Prompt Orchestration:Prompt Unit / Variable / Template 管理により、同一アプリ内で “多言語・多モデル” を切替。(Dify)
  2. RAG Pipeline:ドキュメント取り込み ➜ Embedding ➜ ベクトル DB ➜ Retrieval の一連を GUI で作成。(Dify)
  3. Agentic Workflow:マルチツール Agent(ブラウザ、コード実行等)をノードとして連結。外部 API を Plugin SDK で拡張。(GitHub)
  4. Observability:トークン使用量・レスポンスタイム・エラー率をダッシュボード表示。(Dify)

4. 価格・ライセンス

製品 無料枠 有料 SaaS OSS / Self-host
n8n Cloud Trial:500 実行 Starter $20/月(年払)〜 Pro $50/月 完全無料(Apache 2.0)
商用利用制限なし (n8n, AffMaven)
Dify Sandbox:3 つの App/Agent・月 3 万トークン Team $49/月〜(10 万トークン+10 ユーザー)
トークン超過は従量課金
Apache 2.0。セルフホストはインフラコストのみ (Dify, Top AI Tools List - OpenTools)

5. 拡張性・コミュニティ

  • n8n

    • Community ノードでサードパーティが提供する追加ノードをワンクリック導入。GitHub Star 40k+、フォーラムは Q&A が活発。(n8n Docs, n8n Community)
    • 動画・ブログ:YouTube で具体例(AI Shorts 自動生成など)が日々公開。(YouTube)
  • Dify

    • GitHub Star 20k+(2025/07時点)で LangChain/Agentic 需要の高まりとともに拡大。(GitHub)
    • コミュニティ比較:n8n がワークフロー自動化界隈で圧倒的歴史を持つ一方、Dify は AI 開発者コミュニティで急成長中との指摘も。(LightNode, Reddit)

6. 長所・短所と典型ユースケース

観点 n8n が優位 Dify が優位
SaaS・業務自動化 既存 1,000+ SaaS 連携/豊富なトリガー
RAG/Agent 開発 基本ノードで実装可だが設定は手動が多い GUI で RAG Pipeline+監視 UI が一体化
実行コスト Self-host でフル無制限 LLM 推論従量課金を内部で最適化しやすい
コード拡張 JavaScript / Python 関数ノード LangChain 互換プラグイン SDK(Python/TypeScript)
マルチテナント Project 概念と RBAC(Cloudのみ) Team/Org テナント分離、LLM API キーを per-App 管理
日本語対応 ノード UI は i18n、日本語記事も豊富 管理 UI は英語中心、Prompt は多言語可

7. 選定ガイドライン

  • 「Zapier 代替で社内 SaaS を徹底自動化したい」「LLM は Webhook 経由で呼ぶ程度」 という組織 → n8n がミニマム構成で導入しやすい。
  • 「LLM を核にしたチャットボットやドキュメント QA を自前で運用し、プロダクトとして外部公開したい」 → Dify の RAG+エージェント機能が開発・監視・配信まで一気通貫。
  • ハイブリッド:n8n で「SaaS ⇒ ベクトル化 ⇒ Dify の Retrieval API 呼び出し」という連携も多く、両者を組み合わせたスタックも増加傾向。(LightNode)

8. まとめ

  • n8n は「外部サービス・社内 DB を自在に繋ぎ、ノードで視覚的に運用できる汎用オートメーション基盤」。セルフホスト無料・実行無制限でコストに強く、安定した OSS コミュニティが魅力。
  • Dify は「LLM アプリを高速でプロダクション運用するための All-in-One」。Prompt 管理・RAG・Agent・監視・配信までを GUI 1 枚で提供し、“LLM-Ops をゼロから作らずに済む” のが圧倒的メリット。
  • 選定の鍵は「主役が SaaS 連携か LLM か」。目的に合わせて単体採用/組み合わせを検討すると無駄がありません。

主要参考文献