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新人教育_実践のあとに理論を学んで気づいたこと

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この記事で得られること。

  • 大学生~20代前半の新卒社員への教育に携わる人向けの参考
    • 「会議や勉強会の場で、自身の無知や誤解を露呈しまった。」→ 新人がこういう状況に陥って後ろ向きになるのは避けたいですよね。その対策の一助となれば。
  • ”教育者が特に注力するとよいことは、新人が自律的に成長しやすい環境づくり。”←心理的安全性の確保 とも言える。
    • ”社会構築主義的知識観”:何が知るに値する知識か、誰が有能なのかは、ある状況(場面)における振る舞いにより社会的に決められる という観点があること。
      • その対策が、教育者として新人によい環境を与えることにつながる。
      • 逃げ道の提示、努力目標の設定、少数意見の歓迎、曖昧さの解消(アシスト)など

執筆者

  • とある企業のIT担当部署にて、新人教育を担当
  • 主な属性は、IT
    • 要件定義から運用まで幅広に担当。(情シス、サイバーセキュリティ含む)
    • これまでのキャリアパスの過程で複数回、若年者の教育に関与
    • その他、稀有な機会を得て、大学生の教育も一時担当(主にリーダーシップや生活指導)

記事執筆の経緯

  • 最近、新たに新人教育の担当になったことを機に放送大学院にて教育関連の講義を受講するなど、教育理論を学び始める。実践の後追いで理論を学ぶ形。
  • 学んだ理論の定着だけでなく、新人教育に取り組んでいる方々にお役に立ちたいと思い執筆を決意

今回提示する理論:学習過程や成果の観点の一つ、”社会構築主義的知識観”

どういうことか

  • ”観”、つまりのものごとの見方の一つを示したもの。
  • 人のある状況(場面)における振る舞いを見て「あの人は知識がある/ない、有能だ/無能だ」という。
    • 何が「(知るに値する)知識」かは、社会的に決められる。
    • 「どういう状況で同振る舞うのが適切か」が人々の間に文化的に共有されている。
    • まったく同一の言動を行ったとしても、「知識がある/ない」の評価はその時の状況次第。
参考事項
  • 社会構築主義的知識観だけでなく、その他 行動主義的学習観、認知主義的学習観、構成主義的学習観といった観点もあります。これらも1900年代における教育理論の研究と実践がなされてきました。
    • 例えば行動主義的学習観はいわゆる”アメとムチによる教育”から導かれた観点であるため、教育者と被教育者の相互作用や被教育者同士の相互作用の利点は活かしづらい(評価しづらい)観点です。
    • ITの教育においては一部そういった一方的な教育を行う場合がありますが、今回は新人の心理的安全性に注目したお話ですので、それは別の機会に触れたいと思います。

自己の経験

  • 多くの人はこの観点(社会構成主義的知識観)に合致する体験をしたことがあるのではないでしょうか。
    • 何が正しいかが、直近の状況や会議の参加者が発したナラティブによって実質的に決まってしまう。(他にも確からしい解はあったので私から提案したものの、それらは注目されない。)
    • その他多様な状況で。例えば会議中に挙手して回答や質問を堂々としたものの、己の無知や誤解により場が静まり返る。。。  その後長い間、コミュニティの中で積極的に活動する気にならず、また精神的に落ち込んで仕事や生活に雑念が入り込んでパフォーマンスが相当落ちました。
  • 教育者としても、成功経験と失敗経験から、この観点の重要性を感じることが確かにあります。
    • 一例として、教育者が”批判的思考を敢えて働かせてみてもよい”などの言葉を課題付与の際に添えたり、グループワークの時にその編成(少人数化)や活動場所を工夫して議論を活性化させるなど。 またその逆による失敗経験も記憶にあります。

新人の立場に立つと、、、

  • 新人、特に新卒社員1年目は業務に直結する知識、技術、人間関係、経験が薄く、端的に言うと弱者です。
  • 「弱者であることを自覚している者であれば、勇気を出して物事に取り組んでもっと成長しよう!」と考える前に、失敗することのリスクも意識します。
  • そのため、彼らの教育担当は社会構成主義的知識観をもって新人が落ち込んでしまうリスクが少ない環境を作ってあげるとよいと考えます。

Tips

  • 教育企画段階
    • 人事に関与できる立場の人も巻き込んで、その新人が1つだけでなく計2~3のコミュニティに参加できるようにするとよいと思います。
      • OJT兼ねて、新人に兼務をさせる。(工数半々、0.8+0.2など)また、1~2か月の比較的短期間かつ複数部署にまたがる臨時のタスクチームや勉強会に参加させる。
        -新人が思わず自らの無知や誤解を衆前で晒してしまう/自分の意見が採用されない といった状況に接して落ち込むリスクのヘッジとなります。教育担当者は予め、「当初の1年間、1つのコミュニティで自信を少し高められれば上々。全部のコミュニティでうまく立ち回れるというのは相当難しい。」と言って安心感を与える。
    • 特に1年目は、年度の途中で主な所属先(OJT先)を変えてあげるとよいです。例えば人間関係がうまくいっていなくても、そこでリセット可能となり、新人が自主自立・再起しやすくなります。
  • 教育実行段階
    • 知識不足を補うための教育、成功体験を提供するための2~3段階に難易度を設定した課題・発表機会の付与を行うとよいです。
    • 特に入社から半年間は職場の状況(特に人間関係や業務上の慣習)がわかっていないので、課題の出し方、情報連携・報告の要領については曖昧さを減らすとよいです。課題そのものより、そのアウトプットの様式や手続きの過程で正解を得られなかったことを気に病んでしまう可能性があります。(徐々に、確からしい解を得られる様になりますが。)
    • その際、教育担当以外の人たちに講義、評価、指導を任せる際は”良いところと、要改善点(伸びしろ)は努めてセットで伝えること。”、”人前でなるべく指摘しないこと”、”新人が失敗したら、その場でフォローして後で落ち込むことをなるべく防ぐこと”、”深く考えさせたり、あえて壁を実感させる場合は、ほかの人にメンターや観察役を依頼するなどのフォローを欠かさずに”と必ずお願いし、かつ自ら状況を抽出確認し続けること。
    • 平素から時々、特に用事がなくても2~3分でいいので新人と雑談をすること。平素の様子がわかっていると、気持ちの落ち込みや悩みに直面したことに教育者が気づける可能性が高まります。(見方を変えると、自らの弱みを見せたくない新人もいるので、教育担当が普段から接していないとわからない。)

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