Claude3.7がリリースされて何がかわったのか?
Anthropicから「経済指数:Claude 3.7 Sonnetによる洞察」というレポートが公開されていたので、内容を簡単にまとめました。
前回のレポートでは、「Claude」がどんな職業の人にどのように使われているかがテーマでした。今回のレポートでは、新しくリリースされた「Claude 3.7」で何が変化したのかに焦点が当てられています。
Claude 3.7 Sonnet の特徴と利用傾向
増えた利用用途
Claude 3.7 Sonnetは、高度なプログラミング能力や「拡張思考モード(extended thinking mode)」という機能を持っています。このモデルのリリース後、以下の用途で特に利用が増えています。
- プログラミング(コーディング)
- 教育分野
- 科学的研究
- 医療・ヘルスケア関連
「拡張思考モード」の具体的な使われ方
新機能の「拡張思考モード」は、主に専門的で技術的な課題を解決する際に使われています。
利用が多い職業の例:
- コンピューター科学の研究者
- ソフトウェア開発者
- アニメーション制作者
- ゲームデザイナー
AIの使われ方の分類
AIがどのように仕事を補助または完全に行う自動化かを職業・タスク別にデータ化しています。
具体例:
-
補助的使用(共同作業)
- 編集者やコピーライターはAIと一緒に文章を書き直し、改善する作業が多いです。
-
自動化(指示を与えて完了させる)
- 翻訳者・通訳者などの作業は、AIに指示だけ与え、人間の関与が最小限になることが多いです。
こうした分類に関する詳しいデータが次のように提供されています。
詳細な利用分類の提供
AIの使われ方を非常に細かく分類した初めてのデータが提供されています。この分類は、630項目もの具体的な用途に分かれており、従来の「上から下」の分類では見逃されるような細かな用途を捉えています。
例として挙げられた分類の一部:
- 「家庭の水道や設備の修理を手伝う」
- 「バッテリー技術や充電システムについてのアドバイス」
これらの細かな分類データは、研究者に役立つ新しい分析方法を提供しています。
データはこちらから閲覧・ダウンロードができます👉
Claude 3.7 Sonnetリリース後の利用傾向の変化:
特定の職業カテゴリで利用割合が変化しました。
増加した分野(緑色で表示):
-
コンピューター・数学分野: +3.0%(37.2% → 40.2%)
- コーディング能力が向上したため、予測通り利用割合が上昇。
-
教育・指導・図書館分野: +1.8%(9.3% → 11.1%)
- 教育関連でAIの活用が進んでいる可能性が示唆される。
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ライフサイエンス・物理科学・社会科学分野: +0.5%(6.4% → 7.1%)
- 科学系分野へのAI利用がやや増加。
減少した分野(青色で表示):
- アート・エンターテインメント・スポーツ・メディア分野: -0.7%(10.3% → 9.6%)
- 事務・管理サポート分野: -0.8%(7.9% → 7.1%)
「拡張思考モード」は、特に以下のような状況で頻繁に使用されています。
- 技術的課題の解決(研究、プログラミング、ソフトウェア開発)
- デジタル創作活動(ゲームデザイン、アニメーション制作)
これらの職種では、複雑な問題にじっくり取り組む必要があるため、長時間かけて思考を深めることが求められます。
よく使われる職種と割合は次の通りです
- コンピューターおよび情報リサーチ科学者(9.7%)
- ソフトウェア開発者(アプリケーション)(8.4%)
- ソフトウェア開発者(システムソフトウェア)(8.0%)
- CNC工作機械プログラマー(金属・プラスチック)(7.5%)
- コンピューターシステムエンジニア/設計者(7.4%)
- ソフトウェア品質保証エンジニア&テスター(7.4%)
- マルチメディアアーティスト&アニメーター(6.9%)
- データベース設計者(6.9%)
- コンピュータープログラマー(6.6%)
- コンピューターシステム分析者(6.6%)
- バイオインフォマティクス技術者(6.5%)
- ゲームデザイナー(6.2%)
- データウェアハウジングスペシャリスト(5.7%)
- 統計学者(5.6%)
- Web開発者(5.6%)
- データベース管理者(5.0%)
- ネットワーク&コンピューターシステム管理者(4.8%)
- Web管理者(4.7%)
- コンピューターオペレーター(4.6%)
- テクニカルライター(4.3%)
支援型と自動型
タスクの性質や職業によって、支援型と自動化型の使われ方に大きな差があります。
1. 支援型と自動化型の概要
支援型: AIが人間の作業をサポートし、人が中心となって繰り返し改善する使い方。
例:文章の執筆支援、資料作成のサポート、学習の支援。
自動化型: AIがほぼ独立して作業を完結する使い方。
例:デバッグ、翻訳作業、エラー修正。
全体では支援型が約57%、自動化型が約43%で、比率は今回大きく変化していません。
ただし、「学習」のような支援型利用が増加傾向にあります(約23%から約28%に上昇)。
2. タスク別の傾向
AIとのやり取りには、特定の作業タイプごとに明確な傾向があります。
【支援型が多い作業例】
-
文章の執筆・編集(コピーライター、編集者、テクニカルライター):
- AIと一緒に繰り返し文章を修正・改善する。
- コピーライター:約57.7%、編集者:約54.8%がこの形式を利用。
-
教材・マルチメディア資料作成(教材設計者、マルチメディア制作者):
- AIと繰り返しやりとりして、資料を作成・改善する。
- 教材設計:約46.1%、マルチメディア制作:約40.8%。
【自動化型が多い作業例】
-
ITシステム管理・デバッグ作業:
- AIが自動的にエラーの修正や問題解決を実施。
- ネットワーク管理者:約44.9%、ウェブ管理者:約41.0%、ソフトウェア開発者:約30.5%~29.0%。
-
翻訳・通訳:
- AIが人間の介入をほぼ必要とせず、文章を自動翻訳。
3. 職業別の傾向
職業カテゴリーごとに、支援型と自動化型のバランスが異なります。
【支援型が強い職業】
-
地域・社会サービス職(教育・カウンセリング等):
- 約75%が支援型のやり取り。
-
営業・販売系職業:
- 約65~70%が支援型のやり取り。
【支援と自動化が半々の職業】
- コンピューター・数学関連職業
-
製造関連職業
- 支援と自動化がほぼ50%ずつで、バランスよく使われている。
完全に自動化が中心となる職業カテゴリーはありませんでした。
職業別に見るAI活用の3つのパターン
① 学習を支援するタスクが多い職業
AIが情報収集や分析を支援する業務
-
司書 (55.9%)
利用者の要望を分析し、情報提供を支援。 -
コンピュータハードウェアエンジニア (55.5%)
情報分析によるコンピュータや周辺機器の設計・レイアウト支援。 -
事務職員 (49.7%)
オフィス機器やソフトウェアのトラブル解決を支援。 -
データベース設計者 (44.0%)
ビジネスや業務要件の理解を深めるために、他職種と協力。 -
情報科学者・研究者 (43.8%)
問題解決のために数学的なモデルを構築することを支援。
② 自動化が多い職業
AIが作業を自動化・指示に基づいて代替する業務
-
俳優 (63.4%)
演劇・コメディ・人形劇などのための脚本やナレーションを作成。 -
通訳者・翻訳者 (58.6%)
法律文書、科学的文献、ニュースなどを特定言語へ翻訳。 -
詩人・作詞家・クリエイティブライター (56.0%)
文学作品や詩などの創作。 -
アーキビスト(文書管理者)(49.7%)
文書や資料を選択・編集し、知識を応用して出版・展示用に準備。 -
画家・彫刻家・イラストレーターなど芸術家 (48.6%)
装飾目的やメッセージを視覚的に伝えるための作品を作成。
③ 検証・修正を支援する職業
AIが情報や成果物の検証・修正を補助する業務
-
ソフトウェア品質保証エンジニア (10.7%)
ソフトウェアやコードのエラー検出・修正を支援。 -
統計学者 (9.4%)
情報の信頼性・有用性を評価する。 -
データベース管理者 (8.1%)
データベースやプログラムのテスト・エラー修正。 -
コンピュータシステムアナリスト (7.9%)
コンピュータの性能問題を分析し修正する。 -
通訳者・翻訳者 (7.1%)
翻訳された文書を校正・編集・修正する。
📌 まとめると
- AI利用は、支援型(人間主導)が全体的に優勢。
- 執筆、教育、デザインなど創造的な職業ほど支援型利用が高い。
- IT、翻訳、エラー修正など明確なタスクを伴う職業は、自動化の比率が高いが、完全な自動化はまだない。
特に興味深い使用例の紹介
-
水資源管理システムやインフラ整備に関する支援
水道施設などの管理やプロジェクト計画のサポート -
インタラクティブな視覚化が可能な物理シミュレーションの作成
実際の物理現象をシミュレーションし、視覚的に表示するプログラムの作成支援 -
フォントの選定・導入・トラブル対応の支援
フォントに関する実用的なアドバイスや技術的問題の解決を提供 -
求人応募書類(履歴書、カバーレター等)の作成・改善サポート
魅力的な応募書類の作成支援、または既存書類の添削改善を行う -
バッテリー技術や充電システムについての専門的なアドバイス
電池や充電設備の選定や導入時の技術的支援 -
コードやデータベースでのタイムゾーン処理に関するサポート
プログラムやデータベースにおける時刻の処理を支援する技術的なサポート
結論
モデルが進化し続けるにつれ、その経済的な影響を測る方法も向上させる必要があります。
今回の報告書(Claude 3.7 Sonnetの導入以降のデータを対象)では、以下の結果が明らかになりました。
- プログラミング、教育、科学分野における利用は比較的緩やかに増加している。
- 自動化(完全な代替)と拡張(人間の補助)のバランスには、前回から変化は見られない。
- Claudeの新機能「拡張思考モード(extended thinking mode)」は、特に技術的な領域やタスクで頻繁に活用されている。
- タスクや職種ごとの自動化・拡張の傾向に一定のパターンが確認できた。
自動化とは「AIが人間の仕事を完全に代替すること」であり、拡張とは「AIが人間の作業効率や精度を高めるために補助すること」を指します。
関連リンク
- 今回のレポート
- 前回のレポート
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