テックカンファレンス・イベント運営のすすめ
テックカンファレンスは特定のジャンルに対し、深い知見や最新のニュースについて知る非常に有効な手段です。これらの運営は殆どがボランティアです。代表に至るまで報酬が発生することはありません。
でも時間も労力もとても消費します。ミーティングもあれば、ミーティング外で行われる情報整理や制作にも人によっては月20時間以上費やす事もあります。もはや副業です。
金銭的な報酬も発生しない。登壇者のような知名度の上昇もないカンファレンス運営になぜ人は関わるのでしょうか?運営に関わるメリットはなんなのでしょうか?
今年1年、複数のカンファレンスやイベントに運営側として参加した身として整理していきたいと思います。
こんな方へ
- 自社以外にもエンジニアの知り合いを増やしたいと思っている方
- 祭り好きな方
- 苦労した後の美味い酒が飲みたい方
誰が書いてるのか?
オレンジ色の家計簿の会社でモバイルチームのテックリードをしています。数あるプロダクトの中でも地方金融機関さん向けの銀行アプリをFlutterで開発しています。
どんなイベントを運営してきたか?
私がこの2024年に関わったカンファレンスは殆どが今年初開催もしくはまだ歴史の浅いカンファレンスやイベントでした。
FlutterNinjas Tokyo 2024 (6月)
今年初開催した国内初の英語OnlyのFlutterカンファレンスです。2Daysで10セッション、130名以上が来場されました。登壇者の多くは海外から参加しており、来場者も3割程度がNon-Jpと非常に国際色豊かなカンファレンスとなりました。
こちらはFlutterエンジニア向けコミュニティFlutter大学を運営するKboyさんとFlutter大学のコミュニティメンバーによって企画・運営されました。
ProviderやRiverpodなどFlutterエンジニアなら一度はお世話になったパッケージの作者でもあるRemiさんが初来日し登壇した事でも話題になりました。Yumemi x 自社コラボイベント (7月)
昨年、弊社メンバーで参加した東京Flutterハッカソンで特別賞として株式会社ゆめみさんが提供する「ゆめみ賞」を頂きました。
その繋がりでせっかくなら一度ゆめみさんと一緒にLTイベントをやろうというお話になり開催されました。
自社テックカンファレンス (9月)
本年度初開催の弊社エンジニアによるテックカンファレンス。弊社の様々な部署で行われている取り組みについて数多く発表させて頂きました。
運営をしていたFlutterNinjas Tokyoに弊社が協賛していた為、その際の運営経験を買われ、運営側に入らないかと声がかかりました。
FlutterKaigi 2024 (11月)
オンライン開催を含めると今年で5回目となるFlutterのカンファレンス。DroidKaigiにインスパイアされ、協賛企業数、来場者数でも現状国内で最大規模のFlutterに特化したカンファレンスです。
どう関わったか?
それぞれ統括に近いコアメンバーとして運営に携わりました。スポンサー対応、登壇者対応、当日ステージ運営、受付設計など個々のタスクを担当しながら、全体進捗や抜け漏れがないかを指摘するた多少PMのような役回りで仕事をさせてもらいました。
なぜ参加したのか?
シンプルに社内のエンジニアしか知らなかったので、社外のエンジニアと知り合いたいと思った為です。私は前職のスタートアップでエンジニアキャリアをスタートさせましたが、判断基準となるエンジニアが片手で数えるほどしかいなかった為、自分の相対的なレベルや市場価値が計れず悶々としていました。
その時点では登壇する自信も、名刺代わりとなるサービスもなく、どうしたらより本音で話せるエンジニアの知り合いを増やせるかと考えていた際にFlutterKaigi運営の募集を見て、参加を決めました。
カンファレンスまでの流れ
1. 運営メンバーとして参加する
イベントによりますが、下記の様な方法で参加します。一般的にはスタッフ募集がされていることが多いので、そこに応募します。
- 募集に応募する
- 参加を依頼される
- 主催者・運営メンバに連絡する
2. 役割を担当する
これもイベントによりますが、既に役割を与えられて、参加する場合もあれば、応募後の面談でどんな事をやりたいかをヒアリングされ、極力その役割にふられます。
3. 会議に出席する
月一ないし週一の定例ミーティングに参加しながら、全体が進捗していきます。
4. 非同期に仕事を進める
個々のタスクはチーム単位で非同期に進めていきます。ボランティアの為、人によっては稼働出来ない期間も多く、主にリーダーとなる方が中心に仕事を進めていきます。
5. タスクに追われる
開催1-2ヶ月前になると一気に慌ただしくなります。それまでは各々のチームで進めていた作業も一気に連携を求められ、すり合わせのコミュニケーションが増えていきます。直前になって、大事なタスクが漏れていたり、誰かがやってくれてると思ってた、などの事案が発覚したりと、ギリギリまで気が抜けません。
6. 本番を迎える
本番には本番にのみ発生する様々な仕事があります。本番を迎えるまでに様々な仕事をしますが、本番もたくさんの仕事があります。受付、誘導、懇親会、配信などなど。またこの段階で詰め切れてなかった事案が発覚し判断も下されます。
7. 打ち上げる
ただ解放感と達成感に満ち溢れ酒を飲み干します。後日ではなく、短くても当日夜に打ち上げるのがベスト。
カンファレンス運営の誤解
1. タスクが明確化されている?
初めて運営として参加した際にはやらないといけない事が既にあって、その中から自分ができるタスクを選んでいく形かと思っていました。しかし実際に参加してみると、何をしなければならないのか?どのような成果物を目指すのか?これらは思った以上に定義されていませんでした。その為、やるべき事の定義とその達成条件の設定を求められるシーンが思いのほかあります。
2. 役割(スコープ)が明確化されている?
役割も同様です。会場チームや受付チームなどそれっぽい線引きでチームを定義する事もありますが、タスクに応じてこれらの境界線は曖昧です。チームや役割の境界線も自分達で話し合いながら線引きする必要があります。
3. 全体の進捗を管理・理解している人がいる?
タスクが明確化されていない時点で当然と言えば当然ですが、タスクの全体像が定義されていなければ全体の進捗を測ることも出来ません。タスクをメンバーが定義する事が多いなら、勿論それらを全てを中央集権的に理解している人はいません。
4. 誰かがカバーに入ってくれる?
誰かが進捗を管理してるわけでないなら、遅れの検知も簡単ではありません。自分のタスク遅れの検知や全体への影響を認知している人はいないので、自分でちゃんとヘルプの声をあげる必要があります。
こう書いていくとこれらをある程度定義してくれて、進捗も管理してくれてる「企業」や「中間管理職」ってありがてぇなという念に駆られてきます。お分かり頂けたかと思いますが、とても有機的な組織体です。
得られるもの
ハードルを上げるような事ばかり書きましたが、得られるものも沢山あります。
1. イベント参加のハードルが下がる
一番イメージしやすく、大きなメリットは「知り合いが増える」に尽きます。懇親会でぼっちになったらどうしようという心配をする事はなくなります。どのイベントに行っても誰かしら知り合いがいるので、イベントに気軽に参加・登壇してみようという気になります。特に登壇では身内がいる事は心理的な安全性を上げます。
2. 視座が上がる
イベントに参加しているような知り合いが増えるわけですから、自然と視座も上がっていきます。気軽に技術的な悩みも話せるし、情報も共有される為、その技術のホットな話題に自然とキャッチアップできます。
3. 信頼関係を築いた知り合いが出来る
上記の利点はシンプルにイベント参加していれば叶うのでは?と思われそうですが、苦楽を共にする事でそこに「信頼関係」が加わるのが運営の良いところかなと感じます。技術力とは違う一面を運営準備を通して見ることが出来るので、単純な技術力だけではなく一緒に働きたいなと思える知り合いができます。採用を検討する際にも良い判断材料になると思います。
4. 案外仕事でも役立つ
前項でも述べたような経験をしていくとイニシアチブを取る良い経験になります。自分は業務でチームのリードをしていますが、これらのイベントを通してプロジェクトマネジメント力が鍛えられてる事を実感する事がよくあります。
また自社でカンファレンスを開催することになった際、これらの経験を買われて声がかかり、社外での活動が社内での仕事に繋がりました。
5. 終わった後の酒が美味い
最後は単純に楽しさです。大人になって文化祭を作るようなものなので、終わった後の酒は最高です。そういったものを楽しいと感じることが前提になってしまいますが、その感覚があるなら是非飛び込んでみてほしいと思います。
結局はコミュニティ
別職種からエンジニアに転身した身として、エンジニアのように会社を飛び越えたコミュニティが活発な職種は特殊です。特殊であり、エンジニアという職業の魅力・楽しみ方の一つでもあると思います。
ただそのコミュニティの中で認知されるには、高い技術力がないといけないんじゃないか?著名なパッケージやサービスを開発していないといけないんじゃないか?それはハードルが高いと感じたとしても「運営」を通してコミュニティに貢献するという選択肢があります。
もし同じように感じる方がいれば、是非一度運営側も経験してみてほしいと思います。
私のような凡人が技術コミュニティの一員になる手っ取り早い方法としてカンファレンス運営に携わったのは良い選択肢でした。お陰で自分は苦労の後の酒が美味い楽しい一年を過ごさせてもらいました。運営に限らず関わって頂いた皆様に合掌。
終わりに
FlutterNinjas TokyoもFlutterKaigiもボランティア募集はまだ公式アナウンスされていませんが、その内あるかもしれません(曖昧w)。興味がある方はぜひフォローしてみてください。
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