AIは“意味”をくれない ── 新卒エンジニアの僕が学んだこと
自己紹介
初めまして、新卒2年目エンジニアの宮尾です。
この記事はFLINTERS BLOG Advent Calendar 2025の4日目の記事です。
入社した時から AI をかなり自由に使わせてもらえていたこともあり、
「キャッチアップって、AI中心の開発スタイルではどう捉えるべきなのか?」
ということをずっと考えてきました。
この記事では、僕がその答えとして辿り着いた考えをまとめます。
1. 理解できてない感
7月に配属が決まり、アプリ開発の中で
バックエンド(3ヶ月)→フロントエンド(3ヶ月)→Androidアプリ(現在)
と、色々な領域でコードを書く経験をしてきました。
当然キャッチアップが必要になりますが、
AIで調べて実装し、業務チケットを進めていく中で、
「なんとなく本質が理解できていない気がする」
という感覚がずっとありました。
業務+AIだけで学ぶとボトムアップな理解になりやすく、
体系的な理解に結びついていないことは自覚していましたが、
ドキュメントを読んでも「何か腑に落ちない…」という場面も多かったです。
2. AIは何が強いのか?
AIは、学習データにもとづいて最適と思われる回答を生成します。
つまり、記号(単語・文章)を操作し、その整理や変換をする存在です。
そのため、
- 情報の噛み砕き
- 難しい概念の翻訳
- 比喩や図示
- コード例の生成
といった “記号レベルの理解” では圧倒的に強力です。
しかし、
言葉を並べ替えること
と
その言葉の“意味”を理解すること
これらはまったく別物です。
3. 調べても理解できていないのはなぜか?
ある時、YouTube で「記号接地[1]」という概念を知りました。
記号(用語・概念)は、経験と結びついたときに意味を持つ。
という考え方です。
そこで気づいたのが、
AIで得た知識は “記号”のままで、経験と結びついていない
→ だから“理解できていない感”が生まれる
ということでした。
理解とはつまり、
記号のインプット → 実装という経験 → 経験と記号の接続(接地)
この3段階が揃ってはじめて成立するものだったのです。
4. 技術学習と記号接地
僕にとって、未知の技術の概念はすべて“抽象的な記号”です。
- Flow がどう値を返すか
- Pod がどう立ち上がるか
- SSR/CSR のズレがどう生まれるのか
どれも、
頭で理解しているつもりでも動かさないと本当の意味では分からない。
実装して動作を確認したり、
あえて壊して挙動やエラーを見ることでやっと、
「あ、そういうことか…!」
が生まれます。
この体験がないと、
いつまでもコードを書く力に結びつかないことに気づきました。
5. AIを使ってキャッチアップするには
AIは記号を分解し、整理し、翻訳するのが得意です。
一方で、意味を獲得するためには、人間側の“経験”が必須です。
つまり、
AIは理解の“代替”ではなく、理解の“助走装置”。
AIで得た情報を元に「試す → 壊す →理解する」を繰り返すのが
AIを使ったキャッチアップの最適解だと思います。
僕は次のように学んでいます。
- AIから得た情報を仮説として扱う
- コードを書いて動かす
- 結果から理解を深める
- AIに自分の言葉で説明し、ズレの検出をする
理解もコードも、何度もサイクルを回して強くなるという点が共通しています。
6. まとめ
AIは意味そのものを僕たちに与えてくれるわけではありません。
あくまで、食べやすい形に調理してくれるだけです。
その栄養(意味)を吸収するには、
結局人間側の経験が必要だと気づきました。
よく「技術書は手を動かしながら読め」と言われますが、
これはまさに “記号接地を進めるための教え” だったのだと実感しています。
結局のところ、
AIを使ってキャッチアップするときも 手を動かすのが最強 という、
ある意味でシンプルな結論になりました。
この記事が、あなたの技術学習のヒントになれば幸いです。
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記号接地は本来、AI・認知科学の分野で用いられる「記号(symbol)が実世界との経験と結びついて意味を持つ」現象を指します。この記事では技術学習プロセスの類比として用いています。 ↩︎
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