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保険金請求処理でのAIテック企業の紹介

2024/12/22に公開

Finatext アドベントカレンダー 22日目の記事です。

はじめに

こんにちは!FinatextのInsurTech事業に所属するデータサイエンティストの高橋です。

保険会社の重要な業務の一つに保険金(給付金)請求があります。これは保険契約者が事故(例えば、病気や事故、災害など)に遭遇した際に、保険会社に対して保険金の支払いを求める手続きのことを指します。請求を受けた保険会社の担当者は、契約者から提供された情報に基づいて保険金が支払われるかどうかを判断します。

保険業界でもここ数年AIを利活用する動きは盛んですが、保険金請求処理での活用例も多くありますし、それを専門としたサービスを提供するスタートアップ企業も出てきています。弊社でもPoCの実装を進めており、注視している分野です(参考: 社内AIアイデアソンにて「LLMを用いた損害査定の効率化」で優勝しました)。

題材としてはちょっとニッチですが、今回は私が最近注目している保険金請求分野でAI活用を行うスタートアップ企業を三社紹介します。

Claimable

Claimableは2024年設立の米国の企業です。
https://www.getclaimable.com/

保険契約において、契約者は保険会社の保険金支払の決定に納得いかない場合、異議を申し立てて再審査などを要求できます。Claimableはその異議申し立てに必要な書類をAIが作成するサービスを提供します。
契約者がいくつかの簡単な質問に答えるだけで、AIが臨床研究、保険契約や医療歴をもとに個人に最適化、つまり保険金支払の要求が通りやすい異議申し立てのレポートを生成します。

日本のような国民皆保険が存在しない米国では、高額な医療費支出を保険でカバーする必要性が高く、このようなサービスが求められているのでしょう。

EvenUp

EvenUpは2019年設立の米国の企業です。
https://www.evenuplaw.com/

傷害賠償で必要になる請求書などの文書をAIが作成するサービスを提供します。このサービスは契約者に代わり保険会社とやりとりを行う法律事務所向けに提供されています。ユーザーである法律事務所は文書作成にかかる作業時間を大幅に短縮できます。
また、AIが作成した文書はEvenUp内の専門チームによりレビューされ、契約者への保険金支払額向上などの効果も期待できるようです。

EvenUpはリーガルテックの特色が強い企業ですが、異業種の保険で存在感を発揮している珍しい事例だと思います。

qantev

qantevは2018年設立のフランスの企業です。
https://www.qantev.com/

ここまで紹介した二社はどちらかといえば契約者側向けのサービスでしたが、この企業は保険会社向けの請求処理のプラットフォームを提供しています。
プラットフォームに載せた請求はデータクレンジングやエンリッチメントが行われ、AIにより保険金支払額予測やモラルリスクの高い請求検知などが行われます。これにより、保険会社は保険請求処理自動化や保険金支払額改善などの効果が期待できます。

AI主導によるエンドツーエンドでの請求ワークフロー完結はコスト削減効果も大きく、今後数年でのホットトピックになると思います。ただ難易度も高いため、技術やナレッジを蓄積しやすいqantevのようなプラットフォーム事業者の存在感が大きくなってくるのではないかと期待しています。

最後に

最近はマルチモーダルの生成AI普及により、保険金請求でよくある診療明細書や事故画像などの非構造データ処理のハードルも低くなってきました。保険会社の担当者が行ってきた個々のタスクもAIエージェントで代替できるものが多くあります。

よって、2025年以降も保険金請求分野でのAI利活用は進んでいくと思いますし、それを期待したいです。

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