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テックブログの記事件数が前年比2倍になった要因を探る

2024/12/14に公開

この記事は 技術広報 Advent Calendar 2024 の14日目の記事です。


気づいたら前年比2倍

こんにちは。『金融を”サービス”として再発明する』Finatextホールディングスの ayumiya といいます。Finatextグループの広報PRとして「hogehoge広報」と名のつく活動を一通り担当しており、特に技術広報には入社以来ずっと携わっています。

先日テックブログの記事件数を集計していたら、今年2024年は昨年の倍になりそうなことに気づきました。そういえば、特に狙っていないのに5日連続で記事を公開できた週もありました。

でも、今年は新たな勉強会シリーズを始めてみたり、ハイブリット配信に挑戦してみたり、4年ぶりに技術カンファレンスに協賛したりと、どちらかというと新規プロジェクトに忙しく、テックブログはそんなに力を入れていない気がします。むしろ昨年の方が、エンジニアに1on1でヒアリングしたりなど時間を割いていました。

そこで、具体的に何が記事件数増加につながったのかを調べてみることにしました。
新しいことは何もないかもしれないけれど、1つの他社事例として、技術広報の皆さんの参考になれば幸いです!

問題のグラフがこちら

Finatext Tech Blog 記事件数のグラフ

こちらが、当社がテックブログを開始した2019年から現在までの記事件数のグラフです。2024年の数字は、現在実施中のアドベントカレンダーが無事完走できると仮定した予測値になっています。2022年にちょっと落ち込んでしまったのですが、私が入社した2020年からだいたい30件弱をキープしていたのが、今年は60件を超える予定です。いったい何が起きたのでしょうか。

直接的なインセンティブはない、編集長もいない

調査に入る前に、当社テックブログのインセンティブ設計と運営体制について触れておきます。

まずインセンティブ設計ですが、当社の評価報酬制度においてテックブログを含む技術発信は評価対象にはなりますが、直接的なインセンティブ(金銭報酬)はありません。これはブログ開設時から組織として意思をもってそうしていて、社内でも定期的に議論になりますが、今のところ変更の予定はありません。

次に運営体制ですが、編集長的な役割の人間はおらず、「持ち回りで書く」みたいな決まりもありません。技術広報は、「こういう状態にもっていきたい」という理想は持ちつつも、あくまでエンジニアが記事を書くためのあれやこれやをサポートするという立ち位置です。公開前のレビューは必須ですが、いわゆる承認フローはなく、その記事のテーマに適任なエンジニアにレビューしてもらい、その人からLGTMをもらえれば公開OKです。

5つの要因が見えてきた

要因を探るため、今年公開された1つ1つの記事についてSlackのログを掘り、「記事化のきっかけ」と「元ネタ」を調べました。一部エンジニアにはヒアリングも行いました。

その結果、以下5つの要因が見えてきました。

1. 書きやすさの向上 ~Zennへの移行~

MediumからZennに移行した8月頃から、月平均件数が増加していました。

移行前は、いったんGoogleドキュメントや社内Wikiでドラフトを書き、レビュー後にそれをMediumに移植するという流れが多かったのですが、今はほぼ全員が最初からZennでドラフトしています。また、移行に伴い執筆フローを見直し、広報レビューは任意としたこともあって、公開までがとてもスムーズになりました。

2. 開発以外の活動増加 ~海外カンファレンス、勉強会登壇、社内イベント~

記事の内容として、カンファレンス参加、勉強会登壇、社内イベント運営といった開発業務以外のアクティビティが増えていました。特に、今年は「海外カンファレンス参加予算」が確保され、立候補と審査を経て7人のエンジニアが海外カンファレンスに参加したのですが、参加条件として「登壇やテックブログなどの技術発信をすること」を課しており、これが功を奏したようです。

3. 「祭」の開催 ~アドベントカレンダー~

目下、Finatextグループとしては昨年に続き2回目となるアドベントカレンダーを開催中ですが、全社員に広く募った昨年と違い、今年は書き手をエンジニアに限定しました。単純に25件増です。ちなみに、そのうち14人がテックブログデビューです。実にめでたい、うれしい!

4. 技術広報のささやき ~「それテックブログネタやで…」~

これは今年に限らず以前から続けていることですが、Slackを巡回していて「これテックブログネタじゃん?」と感じた投稿には「TECHBLOG」スタンプでリアクションしています。このスタンプを押された投稿はテックブログチャンネルに自動投稿されるようになっていて、ネタ候補がチャンネルに集まる仕組みです。

つっちーの気づき
スタンプを押されて初めて気づいたつっちーさん

また、技術広報を支援くださっている業務委託のエンジニアの方に協力いただき、社内Wikiからネタ候補をリストアップしてエンジニアに個別に打診したりもしました。

こうした地道な提案活動をきっかけに生まれた記事も、振り返ってみれば10件超ありました。

5. 強い内発的動機を持ったエンジニアの出現

今回、1人で3件以上の記事を書いてくれたエンジニアが複数名いたのですが、Slackログを追っても、ほとんどの記事において外的要因が見当たりませんでした。

そこで、エンジニア本人に話を聞いてみることにしました。ヒアリングしたのはKevinさん六車さんです。2人ともグループ会社のナウキャストに所属するデータエンジニアで、それぞれ7本と3本の記事を書いています。ナウキャストに関しては、私はデータエンジニア向け勉強会「DataOps Night」の第2シーズン立ち上げを手伝ったくらいでほぼノータッチだったので、余計に気になりました。

Kevinさん

僕の場合は海外カンファレンスの『Snowflake Summit』に出張させてもらって、『さすがに高い金額を出してもらったし色々発信しよ』となったのがきっかけでした。それ以来、Snowflakeのコミュニティで社外の方々と交流したりして発信のモチベーションが上がっています。
最近は、後で社内でもドキュメント化しておきたいような内容をブログにしちゃう、っていうのは意識してます。技術発信で作った資料を普段の業務に利用する(またはその逆)イメージです。
メインの業務に比べると発信の優先度はどうしても下がってしまうので、普段の業務の中で自然と発信につながるようにして一石二鳥を狙ってます。例えば、Snowflakeのコスト削減についてのブログを書いて、それをほかのエンジニアに渡して『これ読みながらコスト削減してみて』と依頼したりしてます。

六車さん

僕もだいたいKevinさんと同じですね。Kevinさんとはよく『事業拡大のためにも発信していくのは大事だよね』と話しているのですが、特定のメンバーだけじゃなく様々なエンジニアが発信することが、技術発信を継続するためにも大事だと思っています。なので、2人でSlackを巡回したり、日々の業務の中で『それぜひブログにして欲しい!』という呼びかけを定期的にやってます。

す、すばらしい……!今年特にナウキャストのメンバーによる記事が増えた背景には、お2人の働きかけがあったのですね。

Finatext Tech Blog 記事件数(ナウキャストとそれ以外の内訳)

ベース × ナッジ × モメンタム

こうして振り返ってみると、背景には「ベース」「ナッジ」「モメンタム」の掛け合わせがあったのだなと思いました。

  • ベース   : 物理的+心理的ハードルを下げる + ネタ元となるアクティビティを増やす
  • ナッジ   : 情報がネタとして可視化される仕組み
  • モメンタム : 思わず乗っかりたくなるイベント

そして、そこにKevinさんや六車さんのような、積極的に書いてくれる、周りにも働きかけてくれるエンジニアの存在が加わり、気づけば前年比2倍となっていたのでした。

そんなエンジニアの皆さんの存在に感謝しつつ、来年も技術発信をサポートしていきたいと思います。


その情報を必要としていたエンジニアにちゃんと届いたのがわかると、うれしいですよね。

Finatext Tech Blog

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