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ブロックチェーンの「トラストレス」を誤解していませんか?

2023/03/23に公開

はじめに

ブロックチェーンの特徴の1つに、銀行や企業などの「信頼(トラスト)できる」第三者機関を必要とせずに、取引を記録することができる点が挙げられます。この性質を 「トラストレス」 と呼びます。この単語の意味は、曖昧で誤解されやすいです。しばしば、ブロックチェーンは「トラストが不要」と誤解されます。確かに、トラスト-レスという単語からは、トラストが不要という意味に解釈してしまうことは否めません。

この記事では、「トラスト」とは何か、ブロックチェーンの特徴である「トラストレス」とは何かをまとめています。

トラスト

A さんと B さんは友人同士です。ある日、2人はランチに行ったところ、B さんは財布を忘れたことに気づきました。A さんはこれまでの B さんとの付き合いから「B さんは、後日に代金を返してくれるだろう」と信頼(トラスト)し、ランチ代を立て替えました。このとき、A さんは B さんをトラストしたのであって、B さんの銀行口座を確認して支払い能力があるかを実際に「確認」したわけではありません。

つまり、トラストとは「確認しない」ことです。確認する(口座残高を確認する)ことができれば、「信頼する」という不確実性のある行為をする必要がなくなります。なぜなら、すでに(残高が十分に残っていることを)「知っている」からです。

トラストレス

サトシ・ナカモトの論文[1]には、トラストレスという言葉は使われていません。また、論文には信頼できる第三者機関が必要ないと言っているだけで、トラストそのものが不要とは主張されていません。一般に、信頼できる第三者機関が必要ないという性質を「トラストレス」と呼んでいます。

サトシ・ナカモトの論文では、忠実な(プログラム通りに動作する悪意のない)ノードの計算能力の合計が、悪意のあるノードの計算能力の合計を上回っている限り、二重使用問題に関しては、信頼できる第三者機関を必要としないことを示しています。しかし、「(現在使用しているブロックチェーンの)忠実なノードの計算能力の合計が、悪意のあるノードの計算能力の合計を上回っている」かどうかはユーザは確認することはできません。この点においては、システムを「トラスト」していることになります。

(ブロックチェーンは、トラストそのものが不要ではないということを表す別の用語として、LinkedIn の創設者であるリード・ホフマンは、ブロックチェーンの特徴を「トラストレスなトラスト」と表現しています[2]。)

まとめ

ブロックチェーンのトラストレスとは、銀行のような信頼できる第三者機関を必要としない性質を意味します。しかし、トラストレスはトラストが必要ないという意味ではありません。ブロックチェーンのユーザは、あらゆる場面においてシステムをトラストしています。

ブロックチェーン界隈において、トラストという言葉は曖昧な意味で使用されることがあります。誤解しないように注意しましょう。

参考文献

脚注
  1. https://bitcoin.org/bitcoin.pdf ↩︎

  2. https://www.linkedin.com/pulse/20141117154558-1213-the-future-of-the-bitcoin-ecosystem-and-trustless-trust-why-i-invested-in-blockstream ↩︎

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