社内メンバーだけで完結!データマネジメント成熟度評価(アセスメント)プロジェクトの全工程
はじめに
こんにちは、データエンジニアの上田です。
弊社にとって、データは事業発展のコアであり、データを正しく・最大限活用するためデータ品質は非常に重要です。
まずはデータ品質について現状把握、課題発掘、優先順位付を行う必要があります。そのためにDMBOK(Data Management Body of Knowledge)で触れられている"データマネジメント成熟度評価(アセスメント)"を実施しました。
とはいえ、初めてアセスメントを行う際の具体的なステップは意外と情報が少なく、「どこから着手すればいいのか」迷いがちです。
本記事では、私たちが実際にとった手順を紹介します。
データエンジニアだけでなく、データ品質に課題を感じている非エンジニアの方にも読んでいただいて、少しでも参考になれば幸いです。
「これからデータマネジメントやるぞー!」「まずは現状把握、アセスメント!」「でもどこからどうやって進めるのかなぁ」とお考えの同じ境遇の方々が活用できるよう実施工程順に記載しますので、よかったら手順書のようにご活用ください。
実施工程
[フェーズ0]プロジェクト全体のフェーズと優先度を整理する
やみくもに進むのではなく、まずは下の表のようにタスクを整理しました。
全部で8つのフェーズに分解し、タスクは優先度整理を行いました。その上で各タスクをチケット化し担当者と期限を決定しました。
こうすることで全容がみえ、進捗や軌道修正も行いやすくなりました。
フェーズ / 優先度 | 高(最優先) | 低(できれば) |
---|---|---|
1 現状把握 | ・アセスメントの目的、達成条件を整理する ・アセスメント対象範囲を定義しドキュメント化する |
・フレームワークの候補調査 |
2 方針の合意 | ・組織として実施する範囲を合意する ・初回アセスメントにかけられる時間、予算、人員を決定する |
|
3 技術要件の決定 | ・フレームワークを決定する ・社内利用者からのフィードバック要件を決定する |
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4 チーム外協力要請 | ・チーム外関係者へ、目的、実施方法、スケジュールを展開する ・担当者へ協力が必要なタスクを共有する ・フィードバックをもとに要件を見直す |
|
5 納品物作成(開発、ドキュメント) | ・社内アンケートを作成する ・アセスメントを進めていくフレームワークの整理 |
|
6 テスト | ・フレームワークをチーム内で検証する ・社内アンケートをチーム内で検証する |
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7 リリース | ・アセスメントを実施する ・アセスメント結果の報告書を作成する |
|
8 運用 | ・改善アクションを特定しロードマップを作成する | ・定期アセスメントに備えてアンケートやフレームワークを振り返る |
この表に記載のタスク粒度で以降の工程の紹介を行っていきますね!
[フェーズ1]現状把握
1-1 アセスメントの目的、達成条件を整理する
データマネジメントおよびアセスメントの目的、達成条件を明文化します。
参考までに、弊社では次のようにしました。
<データマネジメントの目的>
フェズにおいてデータが事業発展のコアである。
データを正しく・最大限活用するためデータマネジメントを行う。
データマネジメントを行わないと、
- [データが正しくない状態]→集計ミス、法令違反、顧客からの信頼を損ねる
- [データを最大限活用できていない状態]→提案内容に制限、分析に時間がかかる
<アセスメントの目的と達成条件>
- 初回アセスメント実施
- 目的
- 現状を把握し、課題を発掘し優先順位付を行う判断材料とする。
- 達成条件
- 客観的知識体系(DMBOK)と社内利用者からのフィードバックを反映したフェズ独自の評価基準を整備し、現状のデータマネジメント成熟度を評価する
- 定期的なアセスメント実施
- 目的
- 継続的な改善サイクルが回る状態を実現する
- 達成条件
- アセスメントの一連のサイクルの方法が確立されている
- アセスメント実施、結果の解釈、改善、などが明確な状態
- アセスメント活動のスケジュールが決定している
- ステークホルダーが、定期的なアセスメントの目的、方法、スケジュールを理解している
1-2 アセスメント対象範囲(スコープ)を定義しドキュメント化する
アセスメント対象のスコープを整理します。データアーキテクチャ図のこの部分が対象だよ、って丸で囲んであげるようなイメージです。
もしデータアーキテクチャ図がなければこのタイミングで作ってみましょう。(DMBOKにおけるデータの青写真を参考にすると良いかと思います)
1-3 (任意)フレームワークの候補調査
フェーズ3でスムーズに対応できるように、調査を始めておきます。
[フェーズ2]方針の合意
2-1 組織として実施する範囲を合意する
フェーズ1で決定した目的とアセスメント対象範囲(スコープ)を関係者と合意します。
2-2 初回アセスメントにかけられる時間、予算、人員を決定する
並行して2-1の内容を実施する場合のコストを決定します。
予算や期待値によっては社外のリソース(社外のコンサルティングファームなど)の活用も視野に入るかと思います。
[フェーズ3]技術要件の決定
3-1 フレームワークを決定する
各種フレームワークの調査を行い、使用するものを決定し、想定される手順も検討しておきます。
弊社では、デジタル庁から発表されている 「データ品質管理ガイドブック」を参考に作成することにしました。
上記は、以下の国際標準をベースに、データ品質の評価、サービス品質の評価及び管理プロセスの評価の3つの視点から評価モデルを考えられているとのことです。
・ ISO/IEC 25012(データ品質の評価) データそのものの品質
・ ISO/IEC 25024(サービス品質の評価) データを使ったサービス実現プロセスに関する品質
・ ISO/TS 8000-61(データ管理プロセスの評価) データの整備から活用までの管理プロセスに関する品質
ドキュメントは大変充実しており、かつ読解する難易度もあまり高くなく、プロジェクトを進める際のインプットのタイミングで特に重宝させていただきました。
エクセル形式の回答フォーム(465-6_データの品質確保に係る調査票テンプレート例.xlsx、468-2_データ品質評価ツール.xlsxなど)も整備されており、無料で参照できます。
弊社の必要としていたものに大変フィットしており、資料に出会った時に本当に感謝感激しました。ありがとうございます!!!
こちらを弊社の状況に合わせてカスタマイズしつつ利用させていただくことにしました。
3-2 社内利用者からのフィードバック要件を決定する
社内利用者からのフィードバックを得るため、自社独自の評価基準(社内アンケート、インタビューなど)の要件を決定します。
弊社では次のように回答者の種別を作成し、アンケートの質問項目を割り当てました。
<回答者種別>
1. データ利用者
- データを参照している人(参照者)
- データを作成または連携している人(作成者)
- データの管理を任されている人(管理者)
2. 経営層、担当役員
<質問(将来的な案も含む)>
- ISO25012によるデータ品質の評価(次の15項目)について、利用者の感覚値の評価を得る。
正確性(Accuracy)
完全性(Completeness)
一貫性(Consistency)
信ぴょう(憑)性(Credibility)
最新性(Currentness)
アクセシビリティ(Accessibility)
標準適合性(Compliance)
機密性(Confidentiality)
効率性(Efficiency)
精度(Precision)
追跡可能性(Traceability)
理解性(Understandability)
可用性(Availability)
移植性(Portability)
回復性(Recoverability)
- 何に困っているか、困っているレベル感のヒアリング(自由記述)
- その他案
- リソース使用率(感覚値で良いので実績コストと計画コスト)
- 次の各項目に全体の業務の○%の時間を費やしているか(実績コスト)
- 手動でデータを抽出する
- 必要なデータの特定〜抽出までにかかる時間
- データに関する問い合わせ対応
- データの問題が発生した際の修正作業やコミュニケーション
- 本来、上記業務は全体の業務の○%の時間を費やす状態が理想か(計画コスト)
- 各所で発生したリスクの影響度
- データ品質不良(誤った分析など)による信頼喪失(定性、記述式)
- データ品質不良(誤った分析など)による損失金額
- 誤った意思決定による損害を含む
- レギュレーション(個人情報保護法やGDPRなど)違反による損失金額
[フェーズ4]チーム外協力要請
4-1 チーム外関係者へ、目的、実施方法、スケジュールを展開する
フェーズ3で詳細が見えてきたと思います。改めてスケジュールを立てて、目的、実施方法とともにチーム外の関係者へ共有します。
4-2 担当者へ協力が必要なタスクを共有する
- 調査する上で必要なヒアリング会
- 調査に必要なデータの提供依頼
- 3-2で決定した社内利用者からのフィードバック要件に基づいて社内アンケート依頼
などについて、関係先へ事前に「やる予定だよ〜」を共有しておきます。
4-3 フィードバックをもとに要件を見直す
4-1, 4-2を行った際にフィードバックがあれば調整します。
[フェーズ5] 納品物作成(開発、ドキュメント)
5-1 社内アンケートを作成する
弊社ではgoogleフォームを用いて作成しました。スプレッドシートに回答結果が収集され、そのまま集計します。
5-2 アセスメントを進めていくフレームワークの整理
フェーズ3で選択したフレームワークはそのままだと使用しにくいことが多いかと思います。
自社の観点でカスタマイズしたり、不要な質問を削ったりします。
[フェーズ6]テスト
6-1,2 フレームワークと社内アンケートをチーム内で検証する
フェーズ5で作成した社内アンケートとフレームワークをテストします。
複数のメンバーに同じテンプレートを回答してもらってブレがないのが理想です。ブレがある場合には理由を探り対策を練っておきます。
[フェーズ7]リリース
7-1 アセスメントを実施する
アセスメントに必要なインプットを集める、評価結果の視覚化など
7-2 アセスメント結果の報告書を作成する
この報告書の目的は次の2点になります。
- チーム外に今回のアセスメント結果を共有する
- チーム内での情報の整理を行う
弊社では報告書テンプレートに沿って上から順に着手すればアセスメントが完了できるようにしちゃいました。
報告書テンプレートでは評価結果をまとめるだけでなく、いろんな振り返りを行うようにしています。
- 利用者目線とデータチーム間の評価のギャップ考察
- 把握された組織の弱み、強み
- リスクの洗い出し
結果を振り返った後は、改善アクションの選択肢の整理までテンプレートで行えるようにしています。
これにより定期的にアセスメントを行い、結果を知るだけでなく、自然と改善サイクルを回していくようにしています。
[フェーズ8]運用
8-1 改善アクションを特定しロードマップを作成する
7-2で作成したアセスメント結果の報告書をもとに、議論します。
まとめ
以上が初回のアセスメント実施までの実施工程です。
この後は頻度を決めて定期的にアセスメント実施を行い、継続的な改善サイクルが回していきます。
少しでも参考になれば嬉しいです。
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