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BtoBのカスタマージャーニーマップ 作成時のポイント

2024/04/22に公開

※本記事は、2022年9月29日に公開済みの記事を移行して再掲載したものです。

開発部デザイナーの片岡です。

新サービスを作成する際に顧客を深く理解することは非常に大切です。その中で、カスタマージャーニーマップの作成は大事な過程となります。

特にBtoB企業の場合は、事業ドメイン知識習得のハードルが高く、顧客の気持ちを共感・理解することが容易ではありません。

また、組織が一体となって意思決定を行ったり、ステークホルダーの存在があるため幅広い視野が必要となってきます。

本記事ではそんなBtoB企業における、カスタマージャーニーマップの作成のポイントについてお伝えしようと思います。

私自身も日々勉強中ですが、本記事に起こしてみました。

⛳ 特にこのような方向け
・カスタマージャーニーマップの作成をする方
・BtoB企業に勤めている方
・職種はUXデザイナー、PM、営業、マーケターなど

そもそもカスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは…

商品やサービスの販売促進において、その商品・サービスを購入または利用する人物像(ペルソナ)を設定し、その行動、思考、感情を分析し、認知から検討、購入・利用へ至るシナリオを時系列で捉える考え方である。カスタマージャーニーを設計するためのツールをカスタマージャーニーマップと言う。

(引用:wikipedia

カスタマージャーニーは、現代のマーケティングフレームワークにおいて欠かせないものです。

行動観察やアンケート、インタビューなどで収集した情報をもとにジャーニーマップにまとめて、ユーザーの振る舞いを理解する作業がカスタマージャーニーマップです。

画像引用:https://miro.com/ja/templates/customer-journey-map/

また、カスタマージャーニーマップは、既存商品やサービスに向けたものだけでなく、業務や何かの出来事に対しての顧客の一連の行動や感情をマッピングし現場の課題を把握することで、商品やサービス開発のステップとしても役立ちます。

行動観察やアンケート、インタビューに基づいて作成すれば現状把握(As-Is)のカスタマージャーニーマップとなり、目指す姿を思い浮かべて記述すれば開発目標(To-Be)としてのカスタマージャーニーマップとなります。

カスタマージャーニーマップのメリット

カスタマージャーニーマップを作成するメリットには、下記です。

  • 社内で共通認識を持って課題に取り組める・目線合わせ

カスタマージャーニーマップは、一連のユーザー体験を時系列にまとめ、行動・感情の変化を可視化することで、同じ目的を持った関係者間が対象のユーザーに関する共通認識をもつ材料となります。

カスタマージャーニーマップは、担当者一人で作成するものではありません。顧客とサービスの接点に関わる部門を巻き込んで作成します。営業、企画、開発、デザインなどあらゆる部署が横断的に関わることで、企業内で共通認識を持って問題解決に臨めるのです。そうすれば、課題の優先順位が明確になり、意思決定のスピードも上がるなど、PDCAを迅速に回すことにもつながります。

また、「体験」とは曖昧な概念であり、人によって解釈のバラつきがあります。その中で、開発の現場で関係者間で意識にズレがあると議論が進みません。その曖昧な「体験」を共有可能な方法で記述する方法として、ジャーニーマップはその一つの案であるといえるでしょう。

  • 顧客体験の向上と接点の強化

顧客体験や接点(タッチポイント)を噛み砕いて現状を把握し可視化することで、今後自社がどのような顧客接点を持つべきかを検討することができます。

  • 課題の洗い出しを行い、解決策を見つけられる

カスタマージャーニーマップは時系列で顧客の感情や行動を可視化するので、フェーズごとに顧客が望むものや動機がわかりやすくなります。課題の抽出により解決策を見出したり、そのときどきに応じた最適な施策を打ち出しやすくなり、顧客接点の最適化をはかりやすくなるので、企業としてのブランド力の向上につながることも期待できます。

BtoCとの違い

BtoBのカスタマージャーニーマップを作成する上で、意識したいポイントや、BtoCとの違いは下記になります。

  • 意思決定者

顧客が企業か消費者かの大きな違いは、購買に対する意思決定者です。消費者の場合は、個人の意思決定に基づいて購買の決定が為されますが、BtoBの場合は購買を決定するまでに複雑なプロセスを辿ります。複数の担当者が商品やサービスを比較検討し、合理的な基準に基づいて慎重に判断し、組織や部門のトップが最終的な決断を下すのです。このように、意思決定に多くの人間が関わるBtoBでは、商品を購入するにあたっての合理的な判断理由が必要になります。

  • 取り扱う商品

BtoCでは、消費者がすぐに活用できるような商品を取り扱うことになります。 しかし、BtoBの場合で取り扱う商品は社内で使用するツールや、商品の製造に使う素材・パーツを取り扱うなど、単にデザインの良し悪しや気分で瞬発的に購入を決心するのでなく長期的に利用するか・効率性・コストや実用性を重視する傾向があるでしょう。

  • 購入サイクル

BtoBでは商品の購入決定までに長い時間を必要とするのが一般的です。一方、BtoCでは直感的に、短い期間で購入を決定する傾向にあります。長い視野で俯瞰して観察し、商品・サービスを利用してもらうイメージを思い描くことが大切です。

  • 企業文化

企業によって文化(日頃利用しているツールやルーティーンなど)や価値観は様々です。新規ツール導入に対する感情や、企業全体の傾向として根付いている文化などをヒアリングするのも有効となるかと思います。

  • マーケティング手法

BtoBのマーケティングでは、企業の利益を伸ばすために役立つ商品・サービスであることを伝える必要があります。先述の「意思決定者」にも通じますが、複数の人間を納得させるために、商品・サービスの導入により費用対効果の高さなどを合理的にアピールすることも大切です。

では、上記を踏まえてカスタマージャーニーマップを作成していきましょう!

カスタマージャーニーマップの作り方

BtoB企業がカスタマージャーニーマップを作成するときの、手順の一例を紹介します。

  1. テーマ設定
  2. ペルソナを設定する
  3. フレームを設定する
  4. 顧客行動の洗い出し
  5. 顧客の思考と感情の洗い出し
  6. タッチポイントを設定する
  7. マッピングする

1.テーマを設定する

下記の3つの要素を設定する。

  • 目的とゴール

作成の前に、そもそもなぜマップを作成するのかを自問自答します。

このマップをどのような目標に向けて作成するのか?誰のためのマップなのか?どのような経験に基づいているのか?等です。

  • 顧客のスタートとゴールの状態

顧客はサービスを認識しているのか、現在どのような状態でどのような状態を目指したいのかを明確にします。

  • 始まりから終わりまでの期間設定

どのくらいの期間でどのような粒度で進めるのかを設定することで、フェーズごとに顧客にどのようなアプローチをするのかを検討できます。

2.ペルソナを設定する

ペルソナとは、自社の商品やサービスを利用する典型的な顧客像を現したモデルのことを言います。

ユーザーインタビューやアンケートなどを通して既存の顧客や見込み顧客に現状や課題をヒアリングし具体的に引用しても良いですし、顧客になって欲しいイメージを膨らませて作成するのも有効です。

実際に顧客に接触している(した)メンバーが、「こういうお客さんいるよね」と思えるような設定にできると理想的です。

目的に応じてペルソナの具体性は調整していくべきですが、項目としては下記が例となります。

個人的なプロフィール

・年齢

・性別

・居住地

・家族構成

・趣味

企業における属性

・勤務時間

・所属部署

・役職の有無

・業務内容

・業務上の課題

項目

・パーソナリティ

・仕事のKPI

・ペインポイント

・仕事のモチベーション

・情報収集方法

・日々のルーティーン

3.フレームを設定する

次に、カスタマージャーニーマップの横軸と縦軸の項目を決めます。

記事の最後に掲載のテンプレートを利用するのもおすすめです。

ここでは、カスタマージャーニーマップでよく利用されている例として下記の項目を紹介します。

(BtoB企業におけるのサービス導入のカスタマージャーニーマップを想定します)

縦軸は、主にユーザーの行動や感情を表記します。

どのような行動を起こし、何を考え、どのような感情を抱くのかを設定したペルソナやユーザーヒアリング、調査などの材料をもとに想定して、それに対する課題を洗い出していきます。

主に以下の5つの項目を設定します。項目は、自社の状況や目的に応じて、臨機応変に対応しましょう。

  • 行動:実際にユーザーがとる行動
  • タッチポイント:ユーザーと接触する場所や機会、ツール、媒体など
  • 思考:行動をする際にユーザーが考えること
  • 感情(感情曲線):行動をしたユーザーが感じたこと
  • 課題:行動した結果ユーザーが抱いた不満や不足していた点

また、状況に応じて下記の項目もあるとより具体化しやすくなります。

  • 関係者(社内の利用者、相談者、意思決定者など)
  • 情報リソース
  • 現状の利用ツール

など

横軸は、主に以下の4つの項目を設定します。

  • (導入前)認知・興味:ユーザーがサービスを認知した状態
  • (導入中)情報収集・比較検討:サービスについて情報収集した・他サービスと比較検討している状態
  • (導入中)体験・導入意思決定:実際にサービスを体験・意思決定・導入した状態
  • (導入後)導入後:サービス導入後の状態

ユーザーが購入までのプロセスでどのような状態なのかを把握します。横軸も商品や目的などで変わるため、自社の状況に応じて項目を変更してもかまいません。

4.顧客行動の洗い出し

フレームが決定したら、フェーズごとの顧客行動を洗い出します。テーマで設定したスタートからゴールまでの間に、想定しているペルソナが各プロセスでどのような行動を取るのかを考察・調査して積み上げていきましょう。顧客がどんな体験をできれば満足をするか、業務の中で解決すべき課題は何かを認識して考えていくと良いでしょう。

こちらも、ユーザーインタビューやヒアリング、行動観察調査(エスノグラフィー)などを通じて顧客への共感を深め、行動や感情を洗い出すのも有効です。

以下では、業務効率化ツールを検討している企業を例に出して、実際に想定してペルソナの行動を設定してみました。

  • 認知:業務量から効率化の必要性を感じる
  • 情報収集・比較検討:業務効率化ツールのサービスをインターネットで検索したり、資料請求をして比較検討する
  • 体験・導入意思決定:業務効率化ツールのトライアルを行い各ツールを評価し、意思決定者と相談の上ツールの導入を採用する
  • 導入後:業務効率が上がり、業績の向上や残業時間の縮小に繋がる

顧客行動の洗い出しは、考えられるものを全て挙げていくのがおすすめです。洗い出したいくつかの顧客行動から、実際に起こしそうな行動パターンを整理していくと分かりやすいでしょう。

5.顧客の思考と感情の洗い出し

次に、洗い出した顧客の行動に伴う顧客の感情を整理していきます。

以下が例となります。

  • 認知:業務が多くて整理がつかない。時間がかかり、イライラする。
  • 情報収集・比較検討:良さそうなサービスがいろいろあるな。しかしどれがいいか分からない。
  • 体験・導入意思決定:試してみたところこのツールが良さそうだ。よし、上長に相談し導入を進めてもらおう。
  • 導入後:複雑だった業務が効率化して、ストレスフリーだ。残業も減ったし、本来やりたい業務の時間を確保できる。

感情のレベルまで深く掘り下げ、顧客に寄り添った考察を深めます。

ここではポジティブとネガティブで分けたり、絵文字を利用した感情曲線で感情の変遷を分かりやすくすると、課題と改善方法がより提案しやすくなります。

6.タッチポイントを設定する

タッチポイントとは、自社が顧客と接する機会です。商談や契約のタイミングだけでなく、購買前に触れる自社のホームページや広告、SNSやメルマガなど顧客が自社に関する情報に触れる機会全てがタッチポイントにあたります。

以下が例となります。

  • 認知:テレビCM、サイネージ、ホームページ・LP
  • 情報収集・比較検討:ホームページ・LP、商談、営業
  • 体験・導入意思決定:自社の業務効率化ツール、電話、メール
  • 導入後:アンケート

重要なのはペルソナを想定して、より具体的なタッチポイントを想定することです。

7.課題や解決策を検討する

ここまでの洗い出し作業が完了したら、それをもとに見えてくる現状の課題や問題点、打ち手となる施策を洗い出します。

ペルソナの行動や思考にマッチしていないポイントを明確にし、それに対して取るべき施策を考えましょう。実現可能かどうかを考えるより、「こうした解決策・施策ができれば理想」という形で考えていくのがポイントです。

8.マッピングする

ここまで項目を洗い出したら、フレームにマッピングしていきましょう。はじめから細かく作り込もうとせず、まずはシンプルなものを作ってからブラッシュアップしていく方が現実的です。

完璧を目指さない

お伝えしておきたいのは、完璧に刺さるものを作ることが目的ではないということです。

カスタマージャーニーマップを作る目的は、ユーザーに態度変容を起こさせるために、何がどうなれば次のフェーズに導けるか整理することです。

確かに、態度変容を起こさせ事業売上に繋げるために、そのプロセスを知っておくことは重要です。

しかし、絶対的なカスタマージャーニーマップが存在するのか?と問われれば、必ずしもそうとは言い切れません。

なぜなら、ユーザー行動・思考や、市場の変化、課題やプロセスの多様化がある現在、従来の行動モデルではなく戦略や施策に応じて個別の行動モデルを組み立てる必要があるからです。

あくまで仮説であり、モデルを組み立てることが目的です。完璧なジャーニーマップの作成を目指すよりも、顧客の思考や行動について想像を膨らませていくこと自体が大切です。

カスタマージャーニーマップの作成でプロセスを深掘りし、行動モデルを組み立てることは、課題解決のヒントを得るためには大いに役立つかと思います。

叩きを作成した後、顧客調査や社内でのディスカッションを重ね、ブラッシュアップしていく前提で作成していきましょう。

テンプレートがDLできるサイト

下記のサイトでは、テンプレートを配布しております。(商用利用可)

  • 【DL可】カスタマージャーニーってどうやって書くの?簡単に書けるテンプレート配布します!(© 2021 ラクプレ)

https://raku-pre.com/cjm/#google_vignette

  • 【テンプレート付き】カスタマージャーニーマップとは?即実践できる作り方(ミチタリ byオリコン顧客満足度)

https://cs.oricon.co.jp/michitari/article/304/

  • カスタマージャーニーマップとは!?無料テンプレート付き(ferret マーケターのよりどころ)

https://ferret-plus.com/4064

  • 【テンプレート付き】カスタマージャーニーマップの正しい作り方&活用事例(DESIGN α)

https://designalpha.jp/knowledge/ux/cjm/

  • カスタマージャーニーマップテンプレート(Miro)

https://miro.com/ja/templates/customer-journey-map/

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客が製品やサービスを導入(購入)するまでの行動や感情の流れをフェーズごとに洗い出し、可視化したものです。

BtoB企業におけるカスタマージャーニーマップの作成は、BtoCの手法をそのまま活用するだけでは網羅できない部分が多く、広い視野が必要となります。個人の意思決定に基づくものでなく、複数の関係者や意思決定者が絡んだり、意思決定までに長い時間やプロセスがかかったりします。さらには、企業文化への影響なども考慮することも必要です。

その分、カスタマージャーニーマップは製品やサービスの開発や改善には貴重な材料となるでしょう。

課題やユーザーニーズの抽出に繋げられるよう具体的に項目を落としていき、適切なカスタマージャーニーマップの作成を目指しましょう!

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