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いまどきの独自ドメインメール運用

に公開

はじめに

昔々、独自ドメインメールを運用するのは本当に大変でした。サーバーを立てて、メールソフトを設定して、セキュリティ対策をして...。クラウドサービスのおかげで、簡単に独自ドメインメールが使えるようになりました。Google WorkspaceやMicrosoft 365などのサービスにも無料版があり、手軽に独自ドメインメールが運用できました。しかしそれらの無料版サービスも廃止されて久しく、ドメイン費用のみで独自ドメインメールを運用するのは難しくなってきました。

TL;DR

CloudflareのEmail Routingを使おう!

Cloudflare Email Routingとは

Cloudflare Email Routingは、Cloudflareが提供する無料のメール転送サービスです。独自ドメインを持っていれば、CloudflareのEmail Routingを使って、メールを転送することができます。これにより、独自ドメインメールアドレスを持ちながら、実際のメール受信はGmailやOutlookなどの既存のメールサービスに転送することができます。

また、個人で利用する独自ドメインメールなど、規模が小さい場合には無料プランで十分に運用可能です。詳細はCloudflareの公式ページを参照してください。

メリット

通常のメール転送サービスと比べて、何が良いのでしょうか?

それはズバリ、Gmailに転送するときの利便性にあります!

Gmailでの転送問題

なぜかGmailでは、gmail.comドメインのメールアドレスにメール転送をすると、転送元のSMTPサーバーのアドレスでSPFレコードの評価を行います。これは当然、本来のメール送信者が使ったSMTPサーバーのアドレスではないため、SPFレコードの評価に失敗します。

その結果、メールが迷惑メールとして扱われ、迷惑メールフォルダに振り分けられるほか、最悪の場合はメールの受信自体が拒否されてしまいます。

従来の回避方法とその問題点

このため、Gmailで独自ドメインメールを運用する場合にはPOP受信などを利用する必要がありました。しかし、POP受信するタイミングはGmail任せのため、メール受信には時間がかかってしまいます。

最近よくあるメールでの二段階認証などでは、メールがすぐに届かずに認証できないといった問題がありました。

Cloudflare Email Routingの解決策

この問題にCloudflare Email Routingは、2つのステップで対応しています。これはCloudflareがDNSサービスも同時に提供しているからこそ可能なことです。

  1. SPFレコードの設定: Cloudflare Email Routingを設定すると、独自ドメインDNSにCloudflareが提供するSMTPサーバーアドレスを含むSPFレコードが追加されます

  2. 独自ドメインの「From:」アドレス: Cloudflare Email RoutingのSMTPサーバはメールを転送する際に、エンベロープFrom:アドレスを独自ドメインのメールアドレスに書き換えます

これにより、GmailはエンベロープFrom:の独自ドメインメールアドレスを使ってSPFレコードの評価を行います。独自ドメインのSPFレコードにはCloudflareが提供するSMTPサーバアドレスが含まれているため、SPFレコードの評価に成功する、というわけです。

Cloudflare Email Routingの使い方

Cloudflare Email Routingの設定はとても簡単です。以下の手順で独自ドメインメールの転送を始めることができます。

  1. Cloudflareにドメインを追加します
    まずCloudflareのアカウントを作成し、独自ドメインをCloudflareに追加します。DNSのネームサーバーをCloudflare指定のものに変更する必要があるため、ドメイン管理会社の管理画面で設定してください。

  2. Email Routingを有効化します
    Cloudflareのダッシュボードで対象ドメインを選択し、左メニューから「Email」→「Email Routing」を開きます。「有効化」ボタンをクリックするだけでOKです。

  3. 転送ルールを作成します
    「ルールを追加」から、転送元(独自ドメインのメールアドレス)と転送先(GmailやOutlookなど普段お使いのメールアドレス)を設定します。
    例:info@example.comyourname@gmail.com

  4. DNSレコードの自動追加を確認します
    Cloudflareが必要なMXレコードやSPFレコードを自動で追加してくれます。もし警告が表示された場合は、指示通りにDNSレコードを追加・修正してください。

  5. 転送テストを行います
    設定が完了したら、独自ドメインのメールアドレス宛にテストメールを送信してみてください。無事に転送先に届けば設定完了です🙆‍♀️

これで、独自ドメインのメールアドレス宛のメールが、普段お使いのGmailやOutlookに届くようになります。しかも無料で利用できるので、Cloudflareは本当にありがたい存在ですね…✨

注意点・トラブルシューティング

Cloudflare Email Routingは便利ですが、いくつか注意点もあります。

  • 送信はできません
    Email Routingは「受信専用」です。独自ドメインのアドレスからメールを送信したい場合は、別途SMTPサービス(Gmailのエイリアス送信やSendGridなど)を利用してください。オススメはAWS SESです。AWS SESは十分な無料枠もあり、独自ドメインのメール送信に適しています。

  • 迷惑メール判定される場合
    Gmailには問題なく転送できるのですが、転送先のメールサービスによっては迷惑メールフォルダに入ることがあります。今後またGmailの仕様変更が入らないとも限りませんので、SPFやDKIM、DMARCの設定を見直す必要があるかもしれません。

  • 転送ルールの上限
    無料プランでは転送ルール数に上限があります(最大100ルールまで)。大量のメールアドレスを運用したい場合は注意してください。

トラブルシューティング

  • メールが届かない場合

    • DNSの設定が正しいか確認してください。特にwhoisに登録されているネームサーバーがCloudflareのものになっているか、余計なNSレコードが無いかを確認します。
    • 転送ルールが正しいか、転送先アドレスに間違いがないか見直してください。
    • 転送先の迷惑メールフォルダもチェックしてみてください。
  • 設定変更が反映されない場合

    • whoisやDNSの反映には数分〜数時間かかることがあります。少し時間をおいて再度テストしてみてください。

まとめ

Cloudflare Email Routingを使えば、手軽に独自ドメインメールを運用できます。特にGmailとの相性が良く、SPFレコードの問題も解決できるのが大きなメリットです。無料で利用できるので、個人や小規模なプロジェクトでも安心して使えます!

使うシーンがすっかり減ったメールではありますが、これから独自ドメインメールを運用したい方は、ぜひCloudflare Email Routingを試してみてください!

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