なぜLaravelを構造化するのか?
はじめに
Laravelはとても親しみやすく、PHPフレームワークの中でも初心者にやさしい設計がされています。実際、学習を始めたばかりの方でもスムーズに開発を始められるのは、Laravelの大きな魅力のひとつです。
でも、業務アプリケーションとして使い込んでいくと、次第に下記のような悩みにぶつかるようになります。
- 「Controllerがどんどん肥大化してしまう」
- 「どこに何を置くのが正解かわからない」
- 「ちょっとした修正のはずが影響範囲が広すぎる」
私自身、さまざまな業務システムをLaravelで開発してきた中で、「自由に書ける
」ことが時に構造の崩壊を招いてしまう場面を何度も経験してきました。
そんなときに必要になるのが、構造化という考え方です。
Laravelは“シンプルすぎる”がゆえに構造化が必要
Laravelは「routesに書いて、Controllerで受けて、Modelで保存して、Viewで表示する
(MVC構造)」という流れがとてもわかりやすく、小規模な開発にはぴったりです。
ただ、現場で求められるのは「変更に強いこと
」「チームで開発しやすいこと
」「数ヶ月後に見返しても分かること
」。そういう続けて使うための設計です。
特にこんなプロジェクトでは、Laravelをそのまま使うだけではなかなか難しくなります:
- 医療・物流など、ドメインが複雑な業務アプリ
- ステータス管理や条件分岐が多い仕組み
- 数年単位で運用される中規模以上のプロジェクト
Laravelは本当に便利ですが、「どこに何を書いても動く
」だけに、責任の置き場所を決めないと混乱のもとになります。
そこで、Service層やDataTransferObject(DTO)、Enumといった仕組みを使って、役割をきれいに分ける「構造化」がとても大切になってきます。
よくある構造的失敗パターン
Fat Controller 問題
1つのControllerの中に、バリデーション(エラーチェック)もDB処理もビジネスロジックも詰め込みすぎてしまうと、メソッドがどんどん長くなり、後から見返すのがとても大変になります。
無秩序なModelロジック
Modelに「それ、本当にModelの責任?
」という処理がどんどん追加され、テストが難しくなったり、再利用できなかったりするケースもあります。
FacadeやHelperの使いすぎ
便利な機能に頼りすぎると、裏で何が起きているのか分かりづらくなり、修正や拡張のハードルが高くなってしまいます。
構造化で得られる実利
役割がわかりやすくなる
Controller → Service → DTO という流れがはっきりすることで、「どこで何をしているのか
」が明確になります。初めて触れる人にもやさしいコードになります。
テストしやすくなる
1つ1つの部品が分かれていれば、テストもしやすくなります。バグの発見も早く、安心して開発を進められます。
チーム開発や引き継ぎが楽になる
誰が見ても「どこに何があるか
」が分かる構造は、チーム開発でも大きな武器になります。引き継ぎもスムーズで、属人化も防げます。
設計の型が資産になる
構造化された設計は、別の案件でも再利用できます。DTOやEnum、ログ処理の仕組みなど、1度作っておけば何度も使える資産になります。
テンプレートで“構造のスタート地点”を手に入れる
構造化を自分だけでやろうとすると、調査や設計にとても時間がかかります。
そこで、本記事と連動して作成したLaravel構造化テンプレートでは、すでに次のような構造を整えています:
- DTO・Service・Enumによる責任の分離(Laravel 12でも同様の構造でご利用いただけます)
- Laravel 11対応のプロジェクト構成
- Blade × Alpine.jsでのフォーム設計例
- 医療ドメインを想定した実践的な業務構造
このテンプレートを使えば、設計に悩むことなく、すぐに整った状態から開発を始められます。
次回予告:DTOで責務を明確にする
次回は、「DTO分離による責務の明確化と型安全性
」についてご紹介します。
LaravelのControllerやRequestで、どのようにDTOを取り入れていくのか、具体例を交えてお届けする予定です。
🔧 関連テンプレート
本記事に対応した Laravel 構造化テンプレートは、GitHub にて開発中です:
👉 evisu-dev/laravel-structured-support-app
※現在は開発途中のバージョンですが、Controller構造やステータス遷移ロジックなどは順次反映されています。
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